iPEACE223株式会社 代表取締役CTOインタビュー
今回はグリーンLPガスなどへの利用が期待されている”バイオプロピレン”を、高効率・低コストで生産できる技術の開発・実用化を目指すiPEACE223株式会社の代表取締役CTO・瀬戸山氏にお話を伺いました。
カーボンニュートラルを目指す最先端の技術について、今後の展望、今回採用される人の仕事内容などをお届けします。
化石資源を使わない世の中を目指す。iPEACE223株式会社の事業について
最初に、事業についてお伺いしたいと思います。御社の事業概要について教えていただけますか?
私たちは、化石資源由来からバイオマス由来への原料転換によりエネルギー(燃料)/化学品のカーボンニュートラルの実現を目指している、東工大発スタートアップです。
具体的には、バイオエタノールからグリーンな液化石油ガス(LPG)代替物や化学品原料となるバイオプロピレンを、高効率・低コストで生産できるETP触媒プロセス(ゼオライト触媒反応と触媒再生で構成)を開発しています。
一般的にプロピレンは石油由来のナフサから製造されていますが、カーボンニュートラル実現に向けて、石油を使わない製造方法が望まれています。しかしプロピレンの代替製造方法はいまだ確立・実用化はされていないのが現状です。
そこで設立されたのがiPEACE223株式会社です。
技術は基本的に三菱ケミカルで開発され特許化されたものをベースにしており、その実施許諾を受け、事業化に向けて動いているところになります。
経営陣には、三菱ケミカルで当該技術の開発に携わった私、瀬戸山のほか、東京工業大学にてゼオライトの合成と触媒応用研究をされている横井教授もCSOとして参画しています。
今まさに生まれ成長している、最先端技術を扱っているんですね!
詳しい技術内容を教えてもらえませんか?
私たちが扱っている触媒プロセス技術には大きく2つの特徴があります。
ひとつは、バイオエチレンからバイオプロピレンを製造するETP反応(Ethylene To Propylene)用のゼオライト触媒です。
小細孔ゼオライトに分類されるCHA型ゼオライトにいくつかの処理を加え、90%以上の高い選択率でプロピレンを製造することが可能です。プロピレンを通過できるぎりぎりの細孔の大きさに調整することでこの性能が発現します。
もうひとつは触媒の再生技術です。一般的に触媒というものは、使うとどんどん劣化していくので、定期的な交換や再生が必要になります。ゼオライト触媒の場合は、有機物や炭素質(コーク)の堆積が劣化要因のひとつです。
iPEACEの触媒の特徴は、その堆積物を水素化除去するという技術を保有していることです。一般的な燃焼法による蓄積物除去では、発生する水蒸気により触媒の基本性能が低下しますが、我々の再生法では何度でも触媒の再利用ができるのが大きな強みとなっています。
バイオプロピレンを製造する技術は他社も研究開発中のようですが、貴社の技術が工業化された時に、どういう特徴があるのでしょう。
簡単に言うと、バイオプロピレンの製造コストは、他の技術に比べてかなり安くなると考えています。
当社の技術には
●350℃~500℃と比較的反応温度が低く、大気圧程度の反応圧力での反応。高圧設備を使用してい無いため、建設費が安い
●エチレンから直接プロピレンを作れ、エチレン転化率やプロピレン選択率が他社よりも高く、プロピレンの製造コストの大半を占めるバイオエタノールの使用量が圧倒的に少ない
といった特徴があります。
なおかつ当社のETP反応で得られるプロピレンと少量副生するプロパンやブテン類はそのまま水素化すればLPGの構成成分となるため、極めて簡単な分離工程でLPG代替物を作ることが出来ます。
他社技術ではこうはいかず、A社技術では反応温度が高く収率も低めだとか、B社技術ではエチレン→2ブテン→プロピレン→LPGと工程が増えてプラントも大きくせざるを得ないとかいったことが起こります。
この技術によるCO2排出率は6割減を見込んでいますが、排出の大半は原料のバイオエタノール製造工程に由来するものであり、バイオエタノールの製造技術の開発が進むと、より大きな削減効果が期待できます。
お話を伺うだけでも、技術的な強みの大きさを感じます!
そうですね!特にゼオライト触媒は簡単に再現できるものではありません。
逆に言えば、再現が難しく技術力・研究開発力を集めて作り上げた成果だからこそ、知的財産で発明を保護することが大切になってくるという側面もあり、今回の募集に繋がっています。
会社の今後について
今後の展望について、教えてください
2025年の早い段階で小型プラントを作って技術を実証し、2028年には市場参入することを目指しています。
最初の市場としては先にもお伝えした燃料(LPG)を狙っています。これは日本政府が2050年までに100%グリーンLPGにするように、と既に決めていて、積極的にグリーンLPGを使っていく世の中の流れがあるからです。
国内の市場は縮小傾向にあるとも言われていますが、一方海外のマーケットは拡大傾向にあるため、国内で実証したあとは海外にも展開したいと考えています。
知財担当者の仕事について
企業知財の仕事は様々ありますが、今回採用される人はどんな仕事を担当しますか?
大きく3つの仕事をお任せする予定です。
ひとつめは知財マップの作成・ブラッシュアップです。
知財マップは、当社が保有する特許や出願中の特許を一目で確認できるツールです。これをブラッシュアップしたり、知財マップに基づいて今後の出願戦略・研究開発の方向性の提案したりしていただきたいと考えています。
それに伴う、出願スケジュールの管理がふたつめの仕事となります。
研究職のみなさんは忙しいので、知財関係のことは後回しになりがちですから、きちんと計画通りのスケジュールで出願・権利化できるよう、管理する人が必要です。
また特許事務所とのやり取り全般もお任せしたいと考えています。
特にお願いしたいのが、当社サイドの意見・考えを特許事務所へしっかり伝えることです。
きちんと役に立つ特許を取っていくためには、事務所サイドの提案を唯々諾々と飲むのでは不十分でしょう。きちんと担当弁理士さんと相談や意見交換をすることも含めて、やりとり全般をお願いしたいと思っています。
ちなみに、社内には他の知財担当者さんもいらっしゃいますか?
現在、社内に知財担当者はいません。ただ弊社が出資を受けているベンチャーキャピタル(VC)に弁理士が所属しているため、その方や当社の技術スタッフなどと連携しながら業務を進めることになります。
特に最初は、VCの弁理士と当社スタッフと採用された方の3人でのミーティングから仕事が始まるかなと考えています。
全部を一人でやってください、と丸投げされるわけではありませんよ。
ズバリ、この会社で働く、あるいは知財の仕事をする面白さは何ですか?
まずは研究開発型の会社で、最新かつ高度な技術に日々携われるのが面白い部分だと思います。
特に私たちの扱っているゼオライト触媒は簡単に再現ができず、他の触媒を扱っているメーカーさんでも製造が難しいものです。
そんな難しくも奥深い技術の社会実装に向け、自分の力を活かせるのは研究開発型の会社だからやれることでしょう。
また、スタートアップ企業ならではの自由度の高さも大きな特徴です。
特に知財担当は社内に先任者がいないため、自分でなんでもやれる環境があります。
ときには大変さを感じることもありますが、やはり会社の「化石資源由来からバイオマス由来への原料転換によりエネルギー/化学品のカーボンニュートラルを実現」というビジョンの実現にむけて自分の力が役に立つというのを、楽しく感じて頂けたらと思います。
当社はまだまだ小さな規模ですから、どのメンバーも文字通りに必要不可欠です。その中で、自分が必要とされていると感じながら働けるのは、とても充実しています!
職場の環境について
職場の環境について教えてください。雰囲気はどのような感じですか?
現在、メンバーは少ないですが、研究開発部門と管理部門があり、それぞれが協力して業務を進めています。
今は事業を前に進めるために色んなことをやらないと!という状況なので、業務時間中は黙々と仕事をしていることが多いのですが、お昼休みには一緒にランチへ行ったりと、ある種のアットホームさやお互いを尊重しあう空気があります。
ただ全員が毎日オフィス(編集部注:神奈川県横浜市にある東京工業大学すずかけ台キャンパス)に出社しているわけではなく、今回採用される人も在宅勤務歓迎です。
研究を実際に見たり、対面で打ち合わせたりといったことも必要ですから、フルリモートは難しいのですが、勤務時間は柔軟に相談できますから気軽にご連絡くださればと思います。
今回の求人について
求人を募集した理由を教えてください。また、どのような人物を求めていますか?
当社はライセンスビジネスも視野に入れているため、知財は重要な資産と考えております。やっと研究開発が進められる体制が整ってきたため、知財業務を強化するために、新たに知財担当者を募集することにしました。
求める人物としては、自分で考え積極的に行動できる方、積極的にコミュニケーションを取れる方です。
先ほどお話したように、出願管理的なお仕事をお願いしたいと考えているのですが、技術スタッフのほうも忙しく、出願用のデータ取得・データ整理といった知財関係の仕事は後回しになりがちです。
ですから知財担当者のほうから声をかける必要があるので、コミュニケーションがお得意な方に来ていただけたらと考えています。
あと当社はスタートアップ企業ですから、新しくゼロから作っていくことに興味があって、自分からやっていくことが好きという方と相性がいいと思っています!
最後にひとこと、転職者へ向けてメッセージをお願いします!
私たちの技術は、私の研究者人生の中で一番思い入れがあり、何とか事業化したいと考えているものです。
我々のビジョンに共感頂き、これから会社を作っていくというゼロからの立ち上げを経験できると思いますので、興味のある方は是非ご応募頂ければと思います。