京都大学 産官学連携本部 担当者インタビュー
大学の産官学連携本部について
そもそも、大学の産官学連携本部はどんなお仕事をしている場所ですか?
産官学連携本部は、大学の研究から生まれた研究成果を、世の中で活用してもらうお手伝いをする大学側の組織になります。
そのなかでも今回募集している知的財産部門では、先生方の研究成果の権利化、権利を活用した実用化といった部分を担っています。
具体的な業務内容を伺ってもいいですか?
京都大学では、大学として研究成果(発明)を特許出願するかどうかを毎週学内審議して決定しています。
そうした会議に出すために、届出のあった先生方の研究成果の内容をヒアリングし、その特許性や市場性を調査したりして、大学として特許出願すべきかどうかという調査資料を作ります。
出願することになれば、実際の出願業務は外部の特許事務所へと依頼します。その事務所や発明者とやり取りをして明細書作成や、権利化のための拒絶対応を行っていきます。
その一方で、出願した特許を使っていただくために産業界の方に紹介してライセンス契約を結んだり、さらに開発をしていきましょうということで共同研究を持ちかけたりして、研究の実用化を進めてもいます。
知財部・特許事務所との違い
学術研究がベースにあるのは、産官学連携本部ならではの部分だと思います。なので、企業知財部や特許事務所といった職場との違いも教えていただけませんか?
そうですね、まずは企業の知財部門との違いからお話ししていきましょう。
企業ですと、事業計画なり特許戦略なりというのがまずあって、それに基づいて職務命令として研究者に「この分野を研究せよ」とか「この足りない部分のデータを取れ」という風に研究をしてもらいます。そしてそこから出た成果を戦略的に権利化していきます。
そのような形で、特許の戦略的活用がダイナミックにできると思いますが、一方大学は「この研究をしなさい」という職務命令はできません。
研究者は基本的に、アカデミックな興味に基づいて自由に研究活動をしています。大学では「特許出願して売れる/売れない」をあまり意識していないんですね。「役に立つ」だけでない、アカデミックな物差しをもって研究が行われています。
ですので、各先生から出てきた多種多様な研究成果のなかから「これは産業界で使えば役立つだろう」とか「これをもう少し進めていけば世の中の役に立つだろうな」などと考えて、目利きをしていく。世の中に役に立つものを選んでいって、それをさらに実用化に向けて進めていく。それが大学の知財部門の仕事になります。
では、特許事務所との違いはどこにあると考えていますか?
特許事務所は、依頼がきたものを権利化するために、明細書を作るのがメイン業務です。
しかし産官学連携本部ではその前の、研究成果のなかから目利きをしていく、自分で見出して作っていく部分から仕事が始まります。
産官学連携本部で働く面白さ
知財部や特許事務所とはかなり性格が違うことが分かりましたが、そんな産官学連携本部で働く面白さは、どこにありますか?
大学で行われている研究は世界最先端のものです。そうした最先端の研究を自ら勉強して理解しつつ、世の中の役に立つのかを見極めて世の中に出すお手伝いをするというのは、面白い部分じゃないかと思います。
大学の先生は個人商店みたいなもので、みなさん多種多様な研究をされています。
その研究成果が本当に芽になるのかどうか、といった部分から育てられる。大きなプロジェクトであれば共同研究にも育てられ、最終的には世の中の役に立つこともある。という、ダイナミックなプロセスに関われるのは面白いと思います!
産官学連携本部の仕事で大変な部分
逆に、この職場ならではの仕事の大変さ、といった部分はありますか?
まずは先ほどもお話しした、最先端の研究を理解するという部分でしょうか。自分たちも世界最先端の研究を理解して、それを企業の方や弁理士の方に説明しないといけません。
また大学の先生は、企業に比べると個人色が強く、何に価値を置いているかが人によって違います。
ですから通り一遍のアドバイスといったものは難しく、一人ひとりに合った対応が大事だと思っています。
そのためには先生の思考・思考の方向性というものを踏まえないといけませんので、色々考えたり経験したりする必要があります。企業の知財部ならやることも方向性もある程度決まっているので、こういった部分は大変で、けれども面白い部分でもあります。
京都大学 産官学連携本部の日々の業務について
どの大学にも産官学連携本部はあると思いますが、「京都大学の」連携本部ならではの点はありますか?
成功体験、というものが京都大学にはあるかと思います。
文部科学省が大学の知財収入ランキングを出しているのですが、京都大学は毎年1位~2位をキープしています。
これはノーベル賞を受賞された山中伸弥先生のiPS細胞の特許群が収入に寄与していて、学術的な成果はもちろん、戦略的に知財を確保したことも功を奏してiPS細胞研究のための研究所もでき資金も人も集められた、実用化に向けた体制も整えることができた。
こういった知財での成功経験があるので、学内にも「知財を使ってどんなことができるか、どれくらい研究進展の助けとなるか」について理解があります。
そんな京都大学で働くことになる今回の採用者の、担当予定業務について教えてください
発明発掘の部分から、権利化、技術移転、共同研究のリエゾン等も一緒にやってもらうことになると思います。
仕事自体は基本的に、今いるスタッフについてOJTで教わり、知財に関する知識といった部分は自己学習や学内外の研修で身に付けてもらう予定です。
職場の環境について
職場はどんな雰囲気ですか?
知財部門は10人くらいなのですが、他の連携部署とあわせて50人くらいで一つのフロアで一緒に働いています。ギスギスしたところのない、いい雰囲気の職場だと思います!
オフィスは時計台の近くにある新しい建物で、とても快適な空間です。この建物には大学発のベンチャーが入居していたり、イベントが開催されたりもします。外には学生や若い人がたくさんいるのも、大学ならではの職場環境です。
働きやすさという面から見た職場、も教えてください
会議や面談はありますが、基本的に自分のペースで仕事が進められる職場です。なのでシフト制の職場のような、休みにくい部分というものはないと思います。
育児や介護等の事情から希望があれば、勤務時間をずらすことも可能です。週5でリモート、というのはできないのですが、在宅勤務制度を利用することも可能な環境です。
それから「京都市内」「大学が職場」という場所も良いところだと思います。学食・学外の飲食店といったごはん面で困らなかったり、通勤がしやすい土地だったり、図書館のような大学設備が使えたりするのも企業にはない部分です。
求人を募集した理由
今回はなぜ求人募集を行っているのですか?
人員が不足していることと、若手の人材がほしいことから募集をかけています。
知財部や特許事務所での業務経験も大事だとは思いますが、大学の業務はやはり特殊な面があり、何年か業務をしていただかないと分からない部分もあります。
ですから若いうちに幅広い業務にふれていただいて、大学の立場と考え方を理解しつつオールラウンドで産学連携を進める方を育てていこうという考えが近年ありまして。様々な業務経験を積んで長期的に戦力として活躍していただけるような方を求めて、今回転職者を募っています。
では、具体的に求める人物像はありますか?
対外的なやり取りが苦にならない人が向いているとは思います。仕事柄、特許事務所のような1人でコツコツ働くスタイルより、学内をまわったり色々な立場の人と触れ合ったりする機会が多いです。
転職者に向けてひとこと、メッセージをお願いします!
大学というのは特異な業務ながら、色々なことができる場所でもあります。産官学連携本部は割と新しい部署なので、前例がないことでも取り組みやすいです。
また大学等での研究、企業知財部、特許事務所、それ以外の場所、どんなバックグラウンド・経験も産官学連携本部の業務に役立ちます。ぜひぜひ多様なバックグラウンドを持つ方からのご応募、お待ちしております!