世界知的所有権機関 日本事務所 インタビュー

世界知的所有権機関とは?どんな仕事をしている?

まずは世界知的所有権機関(略称・WIPO)がどんな機関か教えてください!

WIPOは、国際的な知的財産権制度の発展を所管する国際連合の専門機関です。

加盟国数は日本を含めて193ヶ国となり、知的財産権に関する26の国際条約を管理しています(2023年4月現在)。

知的財産制度はまず、特許、意匠、著作権等を通じて、イノベーションや創造性の促進・普及に寄与しています。そして商標と不正競争防止法等を通じて、不確実性や混乱、詐欺への対策に取り組み、市場秩序を確立するための手段を提供しています。

具体的には設立以来、

  • 国際的な知的財産権関連条約や基準について、国際的な議論を行う場の提供
  • 各国政府による開発戦略の一環としての知的財産の活用支援
  • 様々な団体や企業を対象に知的財産権関連の研修

をしてきました。

また一般ユーザー向けには、複数の国で知的財産権を確保するための国際特許出願制度、国際商標登録出願制度、国際意匠登録出願制度や、紛争を解決するためのサービスを提供しています。

さらに、知的財産の情報を集めた各種データベースも無料で提供しています。

世界知的所有権機関 日本事務所の活動

WIPO日本事務所ではどんなことをしているのですか?

大きく4つの活動をしています。少し長くなるかもしれませんが、順番にお話ししていきますね。

なお今回採用する方の担当業務は、主に最初の2つ、プロモーション活動と制度・施策の普及活動になります!

1.プロモーション活動

2021年6月、土浦市の常総学院中学校にて。全校生徒に向けて知財の重要性を伝えるハイブリッド授業を行った澤井所長

まずは知的財産制度のプロモーション活動をご紹介します。

資源の乏しい日本において、無形資産の重要性は日に日に高まっています。世界を代表する技術やブランド、デザインに加え、文学や芸術、文化、農産物といった無形資産は日本の強みです。

これらの無形資産、つまり知的財産を有効に活用し、イノベーションや文化、そして人類の繁栄に寄与していくことが求められます。

しかし現在、日本の企業や研究・教育機関において、知的財産戦略を強みと認識する上層部の方はほとんどいないとの報告があります。

そこでWIPO日本事務所は、知的財産制度の意義や役割を国内外のシンポジウムや講演会、オンラインでのセミナー等を通じ、中高生から経営層に至るまで幅広い層に向けて積極的に発信しています!またX(旧Twitter)運営も行っており、こちらではWIPOのイベント情報や誰かに伝えたくなる知財ネタなど、多様かつ役立つ知財情報を発信しています。

ちなみにウェビナーは、活動開始をした2020年5月から2023年3月末の約3年間で、開催回数が86回、参加者数は同時開催のみで計20,938名となります。

2.制度や施策の普及活動

それから、国際出願制度やWIPO施策の普及活動を行っています。

まず前提として、知的財産制度、とりわけ特許、商標、意匠等の産業財産権を有効活用するには、事業を行う国や地域で権利を確保する必要がありますよね。

しかし国や地域によって異なる制度の中で、国際的な権利を円滑に確保することは容易ではありません。

ですから各種説明会、日本語による問い合わせへの対応、個別企業訪問によるヒアリングなどを通じて、WIPOが所管する国際出願制度の普及を図っています。

コロナ禍以降はオンラインシステムも活用し、100以上の企業や特許事務所と意見交換などの積極的なプロモーション活動を行ってきました。

またWIPO日本事務所では各国際出願制度についての問い合わせも受け付けており、WIPO本部ではできない日本語による実務的な質問に対応するとともに、日本の皆様の声をWIPOの各サービスの向上に反映させるように努めています。

【国際出願制度の例】

【WIPOが行っている施策の例】

  • SDGs達成に向けて環境技術のオープンイノベーションを促す「WIPO GREEN
  • 中小企業によるイノベーション促進のための、各種支援(診断ツールガイドラインの公開、他)
  • 知財制度が世界全体の発展に資することを示すための、各種調査

もっと知りたい方はこちら

3.日本政府や裁判所、大学、産業界との橋渡し

2023年2月、科学技術振興機構(JST)の「次世代育成支援事業」に採択された優れた研究テーマと成果を持つ学生たちがWIPO日本事務所を訪問

当事務所は、東京都千代田区霞が関に住所を置く、数少ない国際機関の駐日事務所です。

地の利を活かし、国際連合の専門機関であるWIPOと、内閣府、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省、文化庁、特許庁、公正取引委員会などの知的財産制度を所管する日本国政府や、知的財産高等裁判所をはじめとした裁判所との橋渡し役を担っています。 

また私たちは日本の大学・産業界とも密に連携し、日本の産官学との協調に努めています。

例えば大学においては、知的財産保護・活用の重要性やWIPO施策の意義を役員の方々に直接お伝えしたり、知的財産・イノベーションをテーマとした講演を学生向けに開催させていただいたりしています。

産業界に対しては、日本商工会議所の知的財産戦略委員会に学識委員として参加し、国際機関の視点から内外の知的財産政策に対する情報提供を行ったりしています。

4.日本の経験の発信

2021年12月、WIPO本部との共催で開催したオンラインシンポジウム。主に途上国の参加者に向けて日本の経験を共有。

4つ目に行っているのは、「日本の経験の発信」です。

日本での特許制度の歴史は既に130年を超えています。特許制度等は、19世紀の開国以来、日本の発展に大きく貢献しました。

こうした日本の経験は、発展途上国にも有益なものとなります。当事務所は日本国政府によるWIPOへの任意拠出金を用いて、IP Advantageデータベース(知財活用事例のデータベース)等による途上国への情報提供やワークショップ等を通じて、知的財産分野における途上国人材の育成等を行っています。

WIPO日本事務所で働く魅力とは

WIPOで働く面白さをぜひ知りたいです!

WIPOは国際機関ですから、WIPO本部の会議に参加したり、本部とやりとりしながら仕事ができるのは、やはり面白さを感じる部分です。

国連の専門機関であるWIPOではSDGs関連の業務などが、なによりの、魅力かと思います!

それから仕事を通じて所外の色々な方と交流できる、知り合える、というのも特徴的でしょうか。

WIPO日本事務所では、例えば講演会登壇者の方と知り合える機会があります。その分、視野も広がっていくのは楽しい経験です。

今回の求人募集について

今回はどのような人物を求めていますか?

先ほどご紹介した業務内容からも感じられるかと思いますが、私たちは業務を通じ、様々な人と関わっていくことになります。ですから優れたコミュニケーション能力を持っている方を求めています。

またWIPO本部とのやりとりなどもありますから、日本語だけでなく英語も、読み書きともに、英会話が流暢にできる方を求めています!英語力が活きる環境ですから、興味のある方にぜひご応募いただけたらと思います。

またメインとなる仕事は「知財制度のプロモーション活動」「知財制度やWIPO施策の普及活動」なのですが、講演会やオンラインセミナーなどを行うことになりますので、プロジェクトコーディネーションおよび実施能力も求めています。

最後にひとこと、メッセージをお願いします!

国際機関の職員として、知的財産制度やイノベーションの普及啓発をしたい!英語力を活かして、知的財産やイノベーションの普及啓発の活動に携わりたい!

そんな想いを持っていたら、国連の専門機関の世界知的所有権機関で活躍してみませんか?

皆様のご応募お待ちしております!

 

※本募集は2023年11月11日の15時59分(日本時間)応募締切となっています。ご注意ください。