知的財産に関する業務とは?知財部の仕事内容
知的財産に関する仕事とは?
みなさんは、特許・意匠・商標をはじめとした知的財産に関する仕事と聞いて、どのようなイメージをされるでしょうか。
具体的にどんな仕事をするのか?やりがい・魅力は何か?どのような人に向いているのか?など気になることが少なくないと思います。
本記事では、知的財産・知財管理に関する仕事の種類・内容、企業の知財部の役割、知的財産に関する仕事のやりがい・キャリアプラン・年収などを説明させていただきます。
これから知財業界で働くことを検討されている方も、すでに知的財産に関する仕事をされている方も、ぜひ読んでいただき、今後におけるキャリアの参考となればうれしいです。
特許出願
知的財産に関する仕事の代表的な業務として挙げられるのが、産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)の出願です。
今回は、特許を例に出願業務の詳細についてご説明します。
そもそも特許出願をする目的として
- 第三者による特許発明の実施を排除
- 第三者による類似特許の権利化の防止
- 自社技術(研究結果)の保護
- マーケティング(技術のPR、製品の宣伝)
- 自社技術のライセンスによる収益の確保
などがあげられます。
特許出願を行うまでの大まかな流れは以下のとおりです。
- 研究開発部門から研究結果を共有してもらう
- 研究結果から発明の特徴を見極める
- 必要に応じて、先行技術を調査する
- 特徴をもとに、得られる権利範囲を検討する
- 特許出願書類を作成する
- 出願の手続きを行う
出願業務において、書類作成の時間は意外と少ないのです。
特許出願と聞くと、複雑な文書を作成する仕事がほとんどであるとイメージをされる方もいらっしゃるのではないかと思います。
とはいえ知的財産に関する仕事は、文章力が求められる専門的な業務であることは間違いないでしょう。
さらに、法律の知識から研究開発にかかわる科学知識まで、あらゆる分野の知識と経験が必要となる仕事であります。
権利化
特許出願の次は、出願した特許の権利化を行います。
出願から権利化までの仕事としては
- 審査請求
- 拒絶理由通知書の対応
- 拒絶査定不服審判
などがあげられます。
出願を行っただけでは、特許を独占的に使う権利は与えられません。
権利化ができなかったとしても、特許出願の内容は第三者に無償で公開されます。
そのため権利化を行って、出願した特許を第三者に使用されないようにすることは重要な仕事と言えるでしょう。
なお、出願から権利化までの期間は、短ければ半年以内、長ければ5年以上と様々です。
上記仕事の中では、特許庁のような外部の方との折衝力が求められます。
第三者の特許出願の調査
自社製品が第三者の特許の権利範囲に含まれていないかを調査することも、知的財産に関する仕事の一つです。
第三者の特許出願状況を監視し続け、必要に応じて
- 特許庁への情報提供
- 特許無効審判
- 自社製品の仕様変更点の検討
などを行います。
特許法第1条に、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」と書かれています。
あくまでも特許権は、独占排他権であることを忘れてはなりません。
自社の特許権に係る製品が、同時に第三者の特許権を侵害していることもあるのです。
知的財産に関する仕事において、自社の発明に関する特許出願を行い権利化することと同様に、第三者の特許出願を調査することは重要です。
企業と特許事務所の仕事の違いとは?
ここからは、所属する組織ごとの、知的財産に関する仕事の特徴を説明いたします。
知財業界の方が働く場所として、「企業の知財部」「特許事務所」「特許庁」などといった場所があげられます。
なお知財HRでは各求人票にインタビューを掲載しているので、各職場レベルでの仕事も把握できます(一部除く)。特に知財部は会社ごとに担当業務がまったく違うので、読み物としても面白いと思いますよ!
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企業知財部の仕事
企業の知財部ならではの、知的財産に関する仕事は
- 研究開発職の実験結果から発明を発掘すること
- 自社製品が第三者の特許権を侵害していないか調査すること
- 権利化した特許をどのように経営に活かせるかを検討すること
などがあげられます。
特に社内の研究開発部門と密接に関わり、発明のタネを見落とさないようにすることが重要です。
ときには実験現場に行って、実は発明と呼べるデータを見つけ出すこともあります。
また、自社製品の開発状況が分かるからこそ、経営方針や第三者の特許出願との関係性を把握できます。
企業の知財部は、一件の特許出願の権利化に力を入れるだけでなく、会社全体を見渡して経営に貢献することが必要です。
特許事務所の仕事
特許事務所の、主な知的財産に関する仕事は
- 企業が発掘した発明により得られる権利範囲の検討
- 出願書類の作成
- 特許庁のような外部機関との折衝
などがあげられます。
企業の知財部員のように日々実験結果に触れることは難しいでしょう。
しかし特許事務所の方は、複数の企業の発明に触れることができます。
企業の知財部よりも広い視野でデータを見つめ、企業側が考えていた権利範囲を拡大できないか提案することが特許事務所の重要な仕事です。
たとえばABCの実験結果があり、企業がAの結果について権利化を検討しているとします。
ここで、Bの実験結果が第三者にとって発明である(Aのデータと同等の価値がある)ことがあります。
このBのデータも権利範囲に含められないか提案することが、特許事務所の重要な役割の一つと言えるでしょう。
特許庁
企業や特許事務所だけでなく、特許庁で知的財産に関わる仕事に就くこともできます。
特許庁は企業や特許事務所とは立場が異なり
- 特許出願の内容について権利を与えるか審査すること
- 日本が保有する技術の活用方法を検討すること
などを主な仕事としています。
特許権の存続期間は、出願の日から20年間です。
特許権は独占排他権であるため、誰もが思いつくような基本技術に権利を与えてしまっては、日本の技術の進歩を妨げてしまいます。
審査基準に基づき、一つの企業だけでなく、産業全体の発展を促すことが特許庁の重要な役目と言えるでしょう。
また、日本が保有する技術の普及にも貢献しています。
たとえば2020年に、特許庁は環境技術の活用を促進するためのプラットフォームであるWIPO GREENに、パートナーとして参加しています。
知的財産に関わる4つのやりがい・魅力
ここからは、その仕事を通してどのようなやりがいや魅力を感じられるのか、4つの例をご紹介します。
1:常に新しい物事に触れられる
知的財産権は、これまで知られていなかった新しい物や方法などに与えられます。
そのため、知的財産に関する仕事をし続ける限り、新しい物事に触れ続けることができます。
知的財産に関する仕事は一見、法律の制限が多く自由度が低いように感じる方も少なくないと思います。
しかし個性を発揮し、豊かな発想で自らが技術思想の範囲を定義できる、そんな知的財産に関する仕事は、自由度が高い仕事でもあると言えるのではないでしょうか。
複数の事業を行っている企業のなかには、新鮮な知見を取り入れて新しいアイデアを産むために、知財部員の担当を数年に一回ローテーションしているケースもあります。
2:企業全体・業界全体と関われる
知的財産に関する仕事では、一件の特許出願の権利化に力を入れるだけでなく、会社全体を見渡すことが必要です。
そのため企業の発展への貢献を身近に感じられることは、魅力の一つであると言えるでしょう。
また、企業の経営方針を検討する際、自然と業界における自社の立ち位置を確認することができます。
部内だけでなく、企業・業界・社会における自身の役割を体感できることは、仕事のやりがいの一つとなるのではないでしょうか。
3:キャリアの幅が広い
キャリアの幅が広いことも、大きな魅力です。
専門性の高い仕事は一つのことを極める必要があるため、関われる領域が狭いイメージをされるかもしれません。
ですが企業の経営において、知的財産に関する仕事は不可欠です。
すなわち、どの業界・企業においても知的財産に関する仕事を行う人が必要です。
しかも知財関連の仕事には、特許法をはじめとした産業財産権に関する法律、という共通ルールが存在します。
なので競合他社や異なる事業を行う企業に転職しても、即戦力になりやすい仕事であると言えます。
4:年収という形で自分の能力を実感しやすい
キャリアを積んでいけば、年収も上がっていきます。
企業の規模や業務の種類にもよりますが、知的財産に関する仕事を5〜10年経験した方の場合、年収の目安は500万〜1,000万円程度です。
幅広い業務経験を積むことで、年収が上がり、自身の成長を数値としても実感できるでしょう。
また、弁理士資格の取得や、語学の習得なども年収に影響します。
弁理士は、産業財産権に関する事務を業として代理することができる国家資格です。
特に企業の知財部から特許事務所に転職される際は、弁理士資格を保有していることが望ましいです。
まとめ
ここまで記事を読んでいただき、いかがでしたでしょうか。
知的財産に関する仕事について、みなさまにとって新しい情報がありましたらうれしいです。
企業の経営判断と、企業が保有する産業財産権は切っても切れない関係です。
知的財産に関わる仕事は、専門性と自由度という、一見相反するような両方の要素に恵まれた仕事であると言えるでしょう。
仕事の内容を魅力に感じてくださった方がいらっしゃれば、ぜひ今後におけるキャリアプランの選択肢の一つとしてみてはいかがでしょうか。
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企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。