弁理士はオワコン?やめとけと言われる5つの理由とは
特許や知的財産を扱う士業といえば、弁理士です。合格率は10%以下という、超難関資格のひとつ。
そんな弁理士をネットで検索すると、検索上位に「弁理士 やめとけ」というキーワードが出てきます。
弁理士を目指している方にとっては、見過ごせないキーワードではないでしょうか?
なぜ「弁理士 やめとけ」といわれるのか。この記事ではその理由を解説します。
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弁理士はやめとけと言われる5つの理由
弁理士はやめとけと言われる理由は以下の5つです。
- 弁理士の仕事が減ってきた
- ブラック特許事務所が存在している
- プレッシャーがきつい
- 稼げるようになるまで年月がかかる
- 弁理士だから高年収とは限らない
ひとつずつ詳しく解説します。
1.弁理士の仕事が減ってきた
弁理士のおもな仕事は、特許出願手続きです。
しかし現在、日本国内における特許出願件数は減り続けています。
減少していく特許出願を大勢の弁理士で取り合うような構図が、「弁理士はやめとけ」と言われる事態につながっていると考えられています。
しかも出願件数が減っている一方で、弁理士の登録人数は過去10年間で増加していて、仕事確保の争いは激化しているのです。
出願件数が減少している主な理由
- 先行技術調査の精度が高まり、特許出願が厳選されるようになった
- 国内出願よりも、国際出願が重要視されるようになった
- 技術のノウハウを秘匿化するようになった
2.ブラック特許事務所が存在している
ブラック企業があるように、残念ながらブラック特許事務所も存在しています。
特許事務所は少人数の組織が多く、所長や上司の声がダイレクトに反映されます。所長の人柄だけで事務所の空気が決まってしまうことも少なくありません。
このような状況でパワハラ・セクハラが起きた場合、環境が改善されるのは難しいでしょう。
もちろんブラックに該当するのは一部の特許事務所ですが、特許事務所は仕事自体がブラックというイメージもあるようです。
特許事務所の仕事は「成果主義」で、基本的には「単独業務」です。これらのマイナスイメージの部分が、ブラックを連想させるのでしょう。
- 「成果主義」と聞くと・・・報酬の見返りは大きいけど、ノルマがきつい
- 「単独業務」と聞くと・・・自分のペースでできるけど、孤独な職場
3.プレッシャーがきつい
ひとりで業務をこなす弁理士は、つねに精神的なプレッシャーを抱えながら仕事をしています。
プレッシャーのおもな要因は「ノルマ」と「責任」。
特許事務所の中には厳しいノルマを課す事務所もあり、それらすべてをひとりで捌かなくてはいけません。
ひとりで多くの案件を抱えることになるため、常に納期に追われながら仕事をしている人も多くいます。
クライアントへの対応もすべてひとりで行うので、責任も重大です。判断を間違えれば、クライアントに損害を与えてしまうことに…。
それを「やりがい」と感じられる人なら問題ありませんが、なかには精神的な負担に耐えられなくなり、辞めてしまう人もいるのが実情です。
4.稼げるようになるまで年月がかかる
弁理士の資格を取得しただけでは稼ぐことはできません。
一般的に、一人前の弁理士になるまでに5年は必要だといわれています。未経験者の場合は、弁理士業務に慣れるまでにさらに1年は必要でしょう。
そして、特許事務所の多くは歩合制を採用しています。売り上げで報酬が決まるため、高年収を得るには経験を積んで専門性や処理速度を高めなければいけません。
また1,000万円以上を稼ごうとすると、基本的には独立開業がマスト。
独立するためには経験と実績ももちろん必要ですが、クライアントからの信頼を得られないと、独立後の仕事は確保できないでしょう。
信頼を得るにも時間はかかるので、やはり、資格取得後すぐに高給取りになるのは難しいはずです。
5.弁理士だから高年収とは限らない
弁理士の平均年収は約700万円といわれています。しかしこれはあくまで平均値で、こちらの調査によるとなかには年収300万円未満の人もいます。
一般のサラリーマンの平均年収が400〜500万円ということを考えると、弁理士の年収は高い水準にあります。ですが、1割近くの人は稼げていないという現実は見逃せません。
このように年収の取得幅が広くなるのは、弁理士の専門性の有無や、なにより営業力の有無が関係しているから。また特許事務所の規模なども、年収を大きく左右する要素です。
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弁理士を目指すメリットはある?
これまで「弁理士はやめとけ」といわれる理由を紹介してきましたので、「弁理士はやめたほうがいい?」と感じる方がいるかもしれません。
結論から言いますと、弁理士を目指すメリットはあります。
- 世界的に見れば仕事は増えている
- 自由度が高く、子育てなどとも両立しやすい
- 一般的なサラリーマンよりは高年収
- 60代以上でも活躍できる
【コラム】弁理士資格がなくても特許事務所で働ける?
実は弁理士資格を持っていなくても特許事務所で働ける、特許技術者という職業があります!出願書類の作成がメイン業務で、もちろん未経験もOK。
まずは特許技術者として転職するのも、ひとつの方法です。くわしくはこちらの記事で解説中!
世界的に見れば仕事は増えている
企業のグローバル化が進む中、複数の国で特許権を取得するPCT国際出願は年々増加しています。つまり世界規模で見れば特許出願の件数は増えているのです。
PCT国際出願は複雑なので、出願自体を避けるクライアントもいます。PCT国際出願に精通していればそんなクライアントを説得したりと、仕事の幅を広げることが可能です。
以下は、2016年から5年間のPCT国際出願件数の推移です。
PCT国際出願をした場合、まずは日本語で出願。その後、移行する国の言語へ明細書を翻訳します。逆に海外で出願された案件を日本国内へ移行する場合も、翻訳などの作業が発生します。
英語のできる弁理士がいれば、自ら翻訳をしたり、外注してあがってきた翻訳のチェックをしたりできます。
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自由度が高く、子育てなどとも両立しやすい
クライアントの要望に合わせて、自由な働き方ができるのが弁理士です。
育児や家事などと両立しやすいのもメリットのひとつですね。
特許事務所は、フレックスタイム制が多く採用されています。勤務時間をずらすことで朝の満員電車を回避したり、子供の送り迎えに合わせることも可能です。
一部ですが、在宅制度を採用している特許事務所もあります。
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一般的なサラリーマンよりは高年収
前述しましたが、人によって幅があるとはいえ、弁理士は一般的なサラリーマンよりも高年収です。
企業勤めの方は年収の上限も抑えられてしまいますが、弁理士には独立開業の道があります。
独立開業した弁理士のなかには、年収1,000万円を超える人もいます。
また年齢別にみると40〜50代が一番年収が高い傾向です。これは経験や実績によるところが大きいでしょう。
60代以上でも活躍できる
一般的には、定年は60〜65歳が主流です。
ですが弁理士は年々合格者数が減少しており、人材不足が深刻な問題になっています。その影響もあって、60代以上の弁理士を嘱託雇用や再雇用するケースが増えています。
また、自身が独立開業すれば定年は関係ありません。
弁理士の仕事は、60代以上でも長く働けることがメリットのひとつです。
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弁理士の資格取得以外で年収を上げる方法
弁理士の資格を取得しただけでは年収は上がりません。では、ほかに年収を上げるにはどうすればいいのでしょうか。
ここでは、弁理士の資格以外で年収を上げる方法について解説します。
語学スキル、特に英語と中国語を伸ばす
国際出願が増えてきているということは、海外の出願に強くなれば仕事が増えるということ。
特に英語と中国語に強い弁理士は、これからも高い需要を見込めます。
世界における2016年から5年間のPTC国際出願件数は以下のとおりです。中国とアメリカがずば抜けていることが分かりますね。なお、参照している国は2020年のPTC国際出願トップ10をピックアップしています。
2016年では日本よりPTC出願件数の少なかった中国。この5年間の伸び率は見逃せません。
経営に関する提案ができるようになる
弁理士の仕事は、特許出願手続きだけではありません。
クライアントの知財戦略など、経営に踏み込んだ知財コンサルを請け負う弁理士もいます。
特許出願の助言だけに終始するのではなく、クライアントに寄り添った助言をしていくことで信頼関係が構築されます。
企業経営と知財の関係なども考えた提案ができると良いでしょう。
調査や翻訳など、業務の幅を広げる
特許に関わる業務には出願手続き以外にも「特許調査」や「特許翻訳」などがあります。
調査や翻訳までやってる時間がない!という場合、外注に出すこともあります。
その調査や翻訳ができるようになれば、外注に出すはずの業務を自身で請け負うことも可能です。
自身の評価にもつながりますので、業務の幅を広げておくことをおすすめします。
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弁理士に向いている人、向いていない人の特徴とは
弁理士は超難関の国家資格。取るまでに必要な勉強時間の目安は3,000時間といわれています。
せっかく取ったのに弁理士に向いていなかった…と、後悔するのはイヤですよね。
ここでは弁理士に向いている人、向いていない人の特徴を紹介します。
弁理士に向いている人の特徴
弁理士に向いている人のおもな特徴は4つあります。
- 好奇心旺盛で新しいことに興味がある人
- 情報収集能力が高く聞き上手な人
- 論理的に物事を説明できる
- 勉強意欲がある
好奇心旺盛で新しいことに興味がある人
特許権取得には新規性、進歩性の要件を満たす必要があります。
その特許に触れることが仕事でもある弁理士。
好奇心旺盛で新しいことに興味がある人にとって、新しいアイデアやデザインにいち早く触れられるのは、楽しみのひとつになるでしょう。
情報収集能力が高く聞き上手な人
特許出願書類や明細書の作成には、情報収集能力が不可欠です。
特許に関わる技術情報以外にも、市場の動向や法改正などの最新情報を常に仕入れておかなければいけません。
また、発明者から発明のポイントを引き出すのも重要です。
聞き上手な人ほど、相手の言いたいことを引き出すのが得意です。
発明者からの情報を多く引き出し、それをまとめることができる人は弁理士に向いています。
論理的に物事を説明できる人
特許を得るためには、論理的な説明が欠かせないもの。
たとえば特許申請をした後に届く可能性のある、拒絶理由通知への対応時に、論理力が求められます。
拒絶理由通知は、特許審査官が「特許権付与が妥当ではない」と判断したときに返されるものです。
この通知に負けず審査を通過するためには、審査官に特許権付与の理由を説明・説得しなくてはいけません。
もし説得に失敗して審査に落ちてしまった場合、クライアントにあたえる損害は大きなものになるでしょう。
逆に、特許の内容を論理的に説明できる人は審査をスムーズに進められるので、クライアントからの信頼を得られやすくなります。
勉強意欲がある人
弁理士は専門家として、法律と技術の両面の知識を十分に備えておかなくてはいけません。
知財に関わる法律面はもちろんですが、新しいアイデアや開発技術を常に勉強していく必要があります。
目まぐるしく変わる市場の動向や、クライアントの経営戦略を議論する場面も少なくありません。
また、法改正や最高裁判所の判例など、特許庁の審査基準に影響があるものは日頃から気を配る必要があります。
弁理士に向いていない人の特徴
下記の内容に当てはまる人は、弁理士の資格取得を再考してもいいかもしれません。
- 文章が苦手な人
- 英語、中国語が苦手な人
- デスクワークが苦手な人
- 論理的な考えが苦手な人
文章が苦手な人
弁理士の仕事は書類作成がメインです。数多くの参考文献も読み続けることもあります。
文章が苦手な人にとっては厳しい職場環境といえるでしょう。
英語、中国語が苦手な人
国際出願が増加している影響で、これからますます英語や中国語の語学スキルが求められます。
近年では翻訳サイトも充実してきましたが、英語、中国語が苦手…という方には仕事が回ってこない可能性があります。
デスクワークが苦手な人
弁理士の仕事は事務所でコツコツ作業が中心のため、デスクワークが苦手な人には向いていません。
弁理士のおもな仕事は、特許庁に提出する意見書や明細書の作成です。
クライアントとの面談などもありますが、一日のほとんどを事務所内で過ごすことも少なくないです。
デスクワークが苦手な人にはストレスに感じてしまうかも。
論理的な考えが苦手な人
特許審査官などに特許の説明を求められたとき、論理的に説明できるかどうかは重要です。
「なぜ?」「なぜ?」と考えを深掘りする習慣を身につけておきましょう。
このような考え方が苦手な人は弁理士に向いていません。
見極める!失敗しない特許事務所の選び方
「あれ?もしかして、ここってブラック特許事務所……?」
せっかく努力して憧れの特許事務所に入ったのに、そこがブラック特許事務所だったら後悔してもしきれないですよね。最悪の場合、すぐに辞めてしまう可能性も。
できれば、特許事務所に入る前にそこの実情を知っておきたいと思いませんか?
ここでは、失敗しない特許事務所の選び方を紹介します。
特許事務所を見極めるポイント
一般の企業でもいえることですが、求人情報や口コミサイトを利用するのがおすすめです。
ブラック特許事務所の特徴は人が定着しないこと。常に求人情報を掲載している特許事務所は要注意です。
また特許事務所の内情を知る1番の方法は、そこで働いている人の意見を直接聞いてみることです。
いまはネット上でさまざまな情報を得ることが可能です。
口コミサイトも充実しているので、その特許事務所で実際に働いている人の書き込みを見ることができるサイトもあります。ただし、ネット上の情報は、真偽が不明確なので参考までに留めておきましょう。
ほかにも、転職エージェントやSNSから内部の情報を入手できる場合もあります。
これに当てはまったらブラック特許事務所
もしも就職先がブラック特許事務所かもと感じたら、下記の項目をチェックしてみましょう。
- パワハラ、セクハラがある
- 報酬が不当に低い
- 離職率が高い
- 辞めさせてくれない
- 休暇が取れない
- 達成困難なノルマがある
- サービス残業が当たり前
ブラックと感じるかどうかは個人差があるので判断が難しいですが、チェックをすることで客観的に判断ができます。内定辞退する、職場を変えるといった今後の行動の指針にもなるでしょう。
まとめ
弁理士はオワコンなのか?について解説しました。
「弁理士やめとけ」と言われるのには、以下の5つの理由があります。
- 弁理士の仕事が減ってきた
- ブラック特許事務所が存在している
- プレッシャーがきつい
- 稼げるようになるまで年月がかかる
- 弁理士だから高年収とは限らない
弁理士の仕事が減ってきたといわれていますが、まだまだ需要があります。とくに国際出願が増加傾向にあるので、これからは英語や中国語のような語学スキルを持っていると強みになるでしょう。
弁理士は、新しい技術やアイデアに触れることができ、クライアントからも頼られる存在です。
この記事を読んで、弁理士の仕事に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
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自動車、航空機業界で設計エンジニアとして15年以上勤務。
業務で特許出願に関わったことから「知的財産」に興味を持つ。
じつは前職場で1件特許出願した経験あり。
今はWebライターとしても活動中です。