特許事務所の面接対策、どうやればいい?
特許事務所の面接
特許事務所の面接では、様々なことを聞かれます。面接で聞かれる内容は、採用する職種(弁理士・特許技術者か、事務か)によって異なるものもあれば、職種によらず共通するものもあります。
また面接で聞かれる内容は、未経験者を採用する場合と、経験者を採用する場合とでも異なります。
そのほか面接以外にも筆記試験、逆質問等の対策が必要です。
未経験者を採用する場合の面接
未経験者を採用する場合、職種に関わらず以下のことを聞かれます。
- 特許業界への転職動機
- 以前の業務内容
特許業界への転職動機について聞く理由としては、志望動機の弱い方が特許業界に入ってきた場合、仕事が続かず、数年で別の業界に移ってしまう、というケースがしばしばあるからです。
また知財業界の仕事は、常に法定期限に追われるという特徴があるため、この期限に追われるということに対応できるか否かについても、志望動機と合わせて聞くことが多いです。
過去の業務内容については、特許事務所の業務内容とこの点で共通している、というアピールをできれば十分だと思います。
例1:企業の開発から転職する
企業の開発から特許事務所に転職する場合であれば、仮に企業での業務と特許事務所の技術分野が異なっていても、「企業時代に装置の検査や納入先での対応などを行っているため、発明者の立場を理解しながら、特許出願の打合せをすることできる。」というアピールができるでしょう。
例2:企業の事務から転職する
事務職から特許事務所に転職する場合には、「企業で様々な業務を並行して行っていたため、多数の案件を抱えても、法定期限を確実に守ることができる。」というアピールが可能です。
未経験者を採用する場合、事務所側も一から仕事を教える前提で採用することが多いため、業務内容の共通性については参考程度で、そこまで重要視していないことが多いです。
弁理士・技術者を採用する場合
未経験者の弁理士・技術者を採用する場合、特許業界への転職動機を特に重視する傾向があります。
なぜなら採用された弁理士・技術者は、せっかく採用したにも関わらず、長期間仕事が続かず、短期で離職することがしばしばあるからです。
このようなことが生じる主な原因としては、先ほど述べた法定期限に追われることへのプレッシャーのほかに、出願書類の作成や中間処理といった実務と試験勉強の内容とのギャップについて行けない、というものが挙げられます。
事務を採用する場合
未経験者の事務を採用する場合、採用の基準はそれぞれの特許事務所で異なります。
国内事務の場合には、前職の業種による有利不利はそれほどありません。
ただし弁理士・技術者と同様に、特許業界への転職動機は重視される傾向があります。また国内事務は、仕事の正確性や、法定期限を厳守することが求められます。
これらの業務の特徴と、自分の経験や長所をつなげて説明できると、採用担当者に良い印象を与えられると思います。
外国事務の場合には英語のスキルが重要視されるため、面接では、語学スキルに関する質問が多くなります。なお特許事務所で要求される英語のスキルはこちらの通り。
- 外国の特許事務所とのやり取りに関するもの
- 特許出願書類などの技術系の翻訳に関するもの
したがって面接では、英語のスキルを聞かれたときに、コミュニケーションと翻訳のどちらが得意であるか、という点についても踏み込んでアピールすることも有効です。
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経験者を採用する場合の面接
実務の経験者を採用するとき、面接では、対応可能な実務とその処理量に関することがよく聞かれます。
また転職理由についてもよく聞かれます。主な転職理由としては、以下のものがあると思います。
- 自分のスキルアップ
- 前の特許事務所の業績が悪化した
転職理由は面接で細かく聞かれることが多いため、回答を事前に準備をしておくことが好ましいです。
自分のスキルアップについては、弁理士・技術者と事務で異なるため、後ほど説明します。
なお業績不振という転職理由は、業績の悪化に伴う転職自体が割とよくある業種であるため、面接で正直に言っても採用担当者にそれほど悪い印象は与えないでしょう。
弁理士・技術者を採用する場合
経験者として弁理士・技術者を採用する場合、そのほとんどが即戦力としての採用となります。
特許の弁理士・技術者を採用する場合は、面接において、以下のことがよく聞かれます。ちなみに商標担当の場合も、似たようなことを質問されます。
- 対応できる技術分野と、その処理量(売上額)
- 過去に出願した案件の公開公報
- 外国案件への対応可否
- 転職理由
特許事務所でどのような技術分野を扱っているか、日本以外のどの国を扱っているか、については、特許情報プラットフォームを検索することで、容易に調べられます。
そのため面接の際には、これらの情報を知っていることを前提として話が進むこともあります。
なお転職理由としてスキルアップを挙げるなら、今までの業務とこれから行いたい業務とをつなげて説明してください。
事務を採用する場合
事務の場合は、どの特許事務所もおおむね同じ業務となります。ですから実務に関して細かく聞かれることは、あまりないと思われます。
ただし外国事務で、特許出願書類などの技術系の翻訳をする場合には、技術系の知識の有無について面接で問われることもあります。
筆記試験
弁理士・技術者が採用されるときは、面接と共に、筆記試験をすることがあります。筆記試験の内容は特許事務所によって異なりますが、その多くは、実務能力を見るために行われています。私の転職活動においては、以下の筆記試験がありました。
- 法律用語の説明
- 出願書類(明細書)の作成
- 出願書類(要約書)の作成
- 出願書類(特許請求の範囲)の作成
法律用語の説明
法律用語の説明に関する筆記試験は、私が、実務未経験で面接にいった特許事務所で行われた試験です。
試験に出された用語は、特許法の条文に出てくる用語や、特許審査基準に出てくる用語であり、弁理士の試験勉強をきちんとしていれば解くことのできる問題でした。
出願書類(明細書)の作成
明細書の作成に関する筆記試験は、日用品に関する明細書を2週間で作成する、というものでした。試験内容としては、弁理士登録前の実務修習で提出する明細書の起案とほぼ同じです。
出願書類(要約書)の作成
要約書の作成に関する筆記試験は、面接先で行われました。特許請求の範囲と明細書を渡され、15分以内に要約書を作成するという試験でした。
出願書類(特許請求の範囲)の作成
特許請求の範囲に関する筆記試験は、面接先で行われました。日用品に関する説明を採用担当者が行い、その後30分で特許請求の範囲を作成するという試験でした。
【参考】弁理士解説!受験生必見の弁理士試験を攻略するコツ シリーズ一覧
逆質問で聞いておきたいこと
面接では、採用担当者に質問をする機会を与えられることが多いです。
弁理士・技術者の場合、採用担当者への質問としては、業務で取り扱う技術分野について面接時に出た話を掘り下げたり、外国への出願の有無などを聞いておくとよいでしょう。
また事務の場合は、弁理士・技術者に対する事務の人数の割合について、質問してみることも一策です。
なぜかというと、一般的に事務の合計人数と弁理士・技術者の人数は、ほぼ等しくなることが多いのですが、両者の間で人数差が大きい場合には、何らかの事情があると考えられるからです。
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特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。