企業の知財部員に求められるスキルとは?レベル別に解説します!
「知財部に異動したい!」「未経験だけど、企業の知財部に転職(就職)できるのか知りたい」
企業の知的財産を扱う知的財産部に興味を抱く方は多いです。
「でも、どうやってアピールすればいいの?」
「配属した後はどんなことをするの?」
同時に、このような悩みを持つ方も多いのが実情です。
この記事では、企業の知財部員に求められるスキルを業務経験レベルごとに解説していきます。
知財部員に必要なスキル
知財部員に求められるスキルとはなんでしょうか?
当然、知財部員の経験レベルで企業が求めるスキルは変わります。
ここでは、レベルごとに必要とされるスキルを紹介します。
一番重要なのはコミュニケーション能力
コミュニケーションとはいわば、「信頼関係を構築する」能力です。
知財部の仕事は、社内外の関係者とチームワークを取っていく必要があります。
自社の開発者・経営陣、特許事務所の弁理士だけに留まらず、提携企業や競合他社の知財部と連携や折衝が必要になる場合もあります。
さまざまな立場の人たちとコミュニケーションを取りながら、自社の知的財産を発掘し守ることが必要です。
また情報や知識だけの共有だけでは、成果にはつながりません。
相手の言いたいこと、伝えたいことを的確に理解し、肯定的なフォロー、冷静な分析結果をもとにお互いが同じ方向を向いて業務を進めていくことが大事です。
それには、コミュニケーション能力(信頼関係)が欠かせないでしょう。
新人レベル
入社して配属されたばかりの新入社員や、他の部署から転属してきた社員。
このような方は知的財産の知識がまったく無い状態からスタートすることになります。
まずは「知的財産」に興味を持ち、業務に誠実に取り組むことから始めましょう。
先輩社員の指導を受けながら、知的財産の業務を少しずつ覚えていくことでスキルアップにつながります。
日々の業務をこなしながら、知財関係の資格の中でも易しい、下記の資格にチャレンジするのをおすすめします。
知的財産の基礎を体系的に学ぶには最適といえるでしょう。
主任レベル
特許調査に出願手続き、自社の知財戦略など、扱う業務は専門性の高いものばかり。自社製品やサービスも把握していかなければいけません。
ですから専門性の高い知財部は5年くらいやって、やっと1人前といえるでしょう。
求められるのは「自律的な人材」です。
このレベルの方は、単独で業務を遂行できる能力を求められます。
主任レベルの方に是非、取得していただきたい資格は下記の2つです。
業務への理解度が上がり、会社からの評価にもつながりやすい資格です。
管理者レベル
知財部のリーダークラスに求められるのは「主導的な人材」です。
知財部を取りまとめ、また知財部員の指導を行いながら業務を遂行できる能力が必要です。
知財部の管理者が取得を目指したい資格を3つ紹介します。
いずれも難易度は高いものばかりなので、挑戦してみるだけでも自身のスキルアップになるでしょう。
ちなみに弁理士は、「独占業務」があるので独立も選択肢に入れられる、という特徴があります。
持っていると仕事の幅が広がる資格・スキル
知財にまつわる資格をいくつか紹介しましたが、知的財産の業務に関わる資格はまだあります。ここでは、その一部を解説します。
知的財産アナリスト
知的財産アナリストとは、「経営と知的財産の連動を促進する」ための資格です。
知的財産教育協会(AIPE)が開催する知的財産アナリスト講座を受講し、認定試験に合格する必要があります。
講座は下記の2種類です。
- 特許講座
- コンテンツ・ビジネスプロフェッショナル講座
受講資格は、基礎となりうる専門性をすでに保有する所定の国家資格者、公的資格者に限定されます。
(知的財産管理技能士1級、2級、弁理士、証券アナリスト、税理士など)
経営活動と知的財産活動を結びつける人材として、今後注目されていくことが予想されます。
英語力、中国語力
知財業界は、国際的な業務を行う機会も多くあります。
なかでも英語力や中国語力を有していることは強みになるでしょう。
たとえば海外進出時には、進出国での知的財産権の調査が必要です。自社の権利を守るために海外特許を検索しても、書いてあるのは進出国の言語(英語・中国語など)です。
解釈の間違いがトラブルに発展するケースもあります。トラブルを回避するには、翻訳ソフト任せにするのではなく、自身の言語スキルを活かせるようにしましょう。
海外ビジネスは訴訟に発展した際、費用や賠償額が高額になるリスクがあります。クライアントに損害を与えないためにも、語学力を高めておくことをすすめます。
「知的財産部の役目」を意識してスキルアップを
企業知財部の大事なミッションは、「自社の知的財産を発掘し、その知的財産を守ること」です。
それ以外にも、権利化の手続きや他社特許の調査など、自社の運営にとって非常に重要な役目を担っている部署といえます。
知財部員の方がスキルアップのために資格取得やセミナーへ参加をするときは、自分の業務内容や知財部の役割を意識してみましょう。
知財部の業務
知財部のおもな業務には、下記のようなものがあげられます。
- 特許、商標、意匠といった知的財産の出願
- 競合他社の特許発明、出願中の発明を監視
- 特許事務所が作成した特許明細書の最終チェック
- 先行技術調査に取り掛かり、その調査結果に基づく特許戦略の立案
- 社内の研究開発部門との連携・折衝
- 特許事務所の弁理士との連携・折衝
- 各種の権利関係の管理業務
- 自社の知的財産権を侵害する他者に対しての警告、訴訟提起
企業によっては、業務の一部を特許事務所に依頼することもあります。
どれも、企業の知的財産を管理する部署ならではの業務内容です。
自社の事情や企業戦略などを考慮し、場合によっては秘匿する知的財産などもでてきます。それらを詳細に把握し、最終的な出願可否を判断するのも知財部の重要なミッションのひとつです。
法務部との違いは?
知財部の業務は一部、法務部とも重なります。
それぞれの違いをひとことでいうと、
- 法務部は「社内外の契約を統括管理する部署」
- 知財部は「知的財産権の取得、管理業務をする部署」
となります。
法務部のおもな業務内容には下記のようなものがあります。
- 法的紛争への対応
- 弁護士との連携・折衝
- 契約書の作成・確認
法律にもとづいて企業を守る大事な部署のひとつです。
中小企業のなかには、法務部が知財の業務を兼任している場合もあります。就職・転職活動をする際には、しっかりチェックしておきましょう。
特許事務所との違いは?
クライアント(企業、個人)からの依頼をもとに、特許出願、訴訟対応をするのが特許事務所です。
特許事務所のおもな業務内容には下記のようなものがあります。
- 特許明細書の作成
- 特許調査
- 特許出願
- 訴訟
- 鑑定
両者の大きな違いは、連携・折衝を進めていく相手にあります。
特許事務所は、クライアントから持ち込まれた発明をもとに特許出願を進めていくのが一般的です。
一方の企業の知財部は、自社の開発者から発明を吸い上げ、関係部署と連携して特許出願の手続きを進めていきます。
特許事務所はさまざまな分野からの依頼があるので、幅広い技術分野を担当することになります。得意な分野の依頼に特化することで、自身のスキルや経験を伸ばしていくことが可能です。
まとめ
企業の知財部員に求められるスキルにはさまざまなものがあります。
日々の業務を遂行しながら、経験レベルに応じた資格の取得を目指していきましょう。
そうすることで、企業の求める人物像に近づくことができます。
ですが、一番重要なスキルはコミュニケーション能力です。
開発部や営業、現場の人たちと密なコミュニケーションを取ることで、知的財産が発掘され、良い特許出願につながるケースもあります。
いろいろな立場の人たちとの交流は自身の成長とやりがいを感じることができるでしょう。
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自動車、航空機業界で設計エンジニアとして15年以上勤務。
業務で特許出願に関わったことから「知的財産」に興味を持つ。
じつは前職場で1件特許出願した経験あり。
今はWebライターとしても活動中です。