特許事務所・弁理士の年収の相場は?

特許事務所に勤務する弁理士、従業員の年収、給料はどのくらいなのでしょうか。

誰にでも非常に興味があるところかと思います。

そこで、特許事務所で働く場合の平均年収や、職種ごとの年収の差など、紹介したいと思います。

特許事務所内の職種と年収

特許事務所内にも弁理士、特許技術者、翻訳者、事務員と様々な職種があります。職種ごとに見ていきましょう。

弁理士

弁理士は知的財産のエキスパートですが、特許事務所において、一口に弁理士といっても様々な立場があります。

  • 代表弁理士
  • パートナー弁理士
  • 勤務弁理士
  • 特許弁理士/意匠弁理士/商標弁理士
  • 外国弁理士

弁理士の平均年収は700万円程度と言われていますが、立場によって差は大きいようです。

代表弁理士

名前のとおり代表の弁理士です。会社で言えば「代表取締役社長」といったところで、特許事務所のトップであり、経営者にあたります。

代表弁理士であっても、小規模事務所か、大規模事務所か、で年収も大きく異なります。

いわゆる「1人事務所」の代表弁理士の場合ですが、著者自身が実際に聞いたところでは、開業して2~3年で売上規模で800万円~1,000万円超、という例があり、この例も踏まえると、1人事務所の場合の年収としては数百万~2,000万円の範囲でしょう。

事務所員が数十人程度の中規模事務所の場合は、比較的安定して1,000〜2,000万円程度の年収になるようです。

事務所員が100名を超えるような、いわゆる大手大規模事務所になると、代表弁理士の年収は2,000〜3,000万円程度とも言われています。

パートナー弁理士

共同経営者という立場の弁理士で、一般企業なら「専務取締役」「常務取締役」「事業部長」といった役職になります。

気になる年収ですが、おおむね700万円〜1,000万円超、1,000万円半ば、といった感じになります。立場、責任範囲、出資額の大小などに応じて差ができます。

弁理士の平均年収よりはやはり高いものの、代表弁理士には及ばない、というところですね。

勤務弁理士

出資等はしておらず、雇われの立場の弁理士です。弁理士のうち、大部分が勤務弁理士です。

勤務する特許事務所の方針等によっても変わるでしょうが、基本的には、自身の実績によって給与、年収が決まってきます

実態としては、業績を上げて年収1,000万円をゆうに超える勤務弁理士もいる一方、年収300〜400万円程度の勤務弁理士もいます。

特許事務所においても、給料の二極化の波はあるようです。

特許弁理士/意匠弁理士/商標弁理士

特許事務所によっては専門分野、担当範囲が細分化される場合があります。特許を専門とする特許弁理士、意匠専門の意匠弁理士、商標特化の商標弁理士、というかたちですね。

特許事務所においてはどの分野も非常に重要であり、専門分野によって年収に大きく差が生じることはさほどないようです。

外国弁理士

大規模特許事務所などでは、外国の弁理士資格を有する者を雇っている場合があります。優遇されているの?実際どうなの?とやや気になるところです。

傾向としては、欧米系の弁理士はやはり時間単価も高く、年収は高額になります。フルで活躍してもらおうとすると、日本弁理士2〜3人分くらいのコストがかかります。

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特許技術者

特許技術者は、弁理士資格は有しておらず、弁理士の指揮監督のもと出願書類の作成補助を行うことがメイン業務となります。

特許技術者の年収は、全くの未経験の場合は300~400万円程度が一般的です。実務経験や社会経験があると、もちろんそれよりも高くなります。

実務経験、実績を積み上げると、700万円〜1,000万円超も期待できます。場合によっては弁理士より稼ぐことも可能です。

出願書類の作成補助といっても、仕事をこなすにはやはり高度な専門知識や専門スキルが必要ですし、実際、特許技術者の大部分は理工学系の学位、修士、博士といった資格保持者です。

なかには歯科医、薬剤師、技術士などの難関国家資格を持っている者もいます。

●特許技術者とは?年収・弁理士との違い・仕事内容まとめ

翻訳者

特許事務所によっては外国案件を扱うことも多いです。外国から日本への出願、日本から外国への出願。どちらを行う場合でも翻訳作業は欠かせず、翻訳者が活躍します。

知財翻訳は、一般の翻訳とは異なり特殊です。翻訳者には知財分野に特化した高度な翻訳スキルが求められます。

では年収は高いのかな?と期待するのですが、実際はどうなのでしょう。

実は知財翻訳は競争が激しい分野でもあり、また近年は機械翻訳の精度が飛躍的に進化しているなどの事情もあったりします。翻訳者の年収としては、300万円〜600万円程度となることが多いです。

ちなみに海外の文学書を翻訳する文芸翻訳家の年収は、500万円~800万円ほどになります。

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事務員

事務員はクライアントとのやりとり、特許庁とのやりとりなどのサポート、電話対応、メール対応、経理、その他一般的な事務作業を行います。

外国出願を行う場合には、現地の代理人とのやりとりなど、外国語で対応することもあります。

気になる事務員の年収ですが、200万円〜500万円程度が一般的です。

事務員であっても、営業スキルが高かったり、外国語の能力が高かったり、能力を大いに発揮して高収入を得ている人もいます。事務職でも高年収を狙えるのは、実績主義の特許事務所ならではですね。

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【番外】独立した弁理士、企業所属の弁理士の年収

独立起業弁理士、企業所属の弁理士の年収の相場について紹介します。なお独立企業弁理士は、独立して2~3年程度のケースを想定してみます。

独立起業弁理士

1人事務所の場合

独立起業の経緯によって差があります。ある程度自分のクライアントがついていて、そのクライアントからの依頼を受任できる状況で独立したのであれば、まずまずの年収でしょう。

そうではなく、全くのゼロベースで独立起業した場合は異なります。この場合は、それこそ、数年は自身の給料分は出ない、というくらいになる可能性があります。

著者の知り合いで類似の状況で独立起業した弁理士ですが、独立して3~4年目くらい、久しぶりに会って話をしたときに、「ようやく自分の給料が出るようになった」と話をしていました。

共同経営の場合

共同経営で起業するなら、ある程度はクライアントの見込みがあることが想定されます。その点では、一定数の依頼はあるはずです。

しかし共同経営であるため、売上は複数人で分配することになります。また共同経営ならその規模上、事務員などの社員を雇うケースも多いと思います。社員の給与も必要です。さらに内部留保等もしっかりと確保していかなければいけません。

そのように考えると、独立起業初期の年収としては、夢見たような額、とはならないでしょう。

企業内弁理士

一般社員という扱いの場合

一般社員の場合には、その企業の賃金規定によります。資格手当て等のプラスはあるでしょうが、ずば抜けて高額になるようなことはないです。

ただしハイクラスの転職エージェントなどを通して、管理職、経営幹部、といったような待遇で転職したのなら、肩書き相応の年収になる場合もあります。

また一般企業はたいてい、特許事務所より福利厚生や退職金が充実しています。

企業内独立という形もあり得る

実際には独立しているけれども、あたかも社員のごとく一般社員と同様に勤務するような、いわゆる「企業内独立」という形態も実際にあります。

この場合は、契約によりますが、その企業の賃金規定に従う場合もあれば、完全に歩合制の場合もあり得ます。一定部分は企業からの賃金(報酬)が保証され、残りは歩合制、といったことも考えられます。

どのような形態になるかは、企業と本人との関係によります

年収を上げるには?具体的な方法3つ

年収の相場が大体分かった次は、年収って上がるの?上げられるの?というのが気になります。もちろん、年収は上げることができます。

ここでは、どうやったら年収を上げられるか、について触れたいと思います。

1.専門性を上げる

専門性を上げるのが一番てっとり早いでしょう。

例えば、クライアントの製品分野の技術について誰よりも詳しくなれば、クライアントから指名で選んでもらえるようになり、仕事に困ることはなくなるはずです。

筆者の昔の同僚の中には、ちょっと手が空きそうだなーと思ったらクライアントに連絡をとって、クライアントの製品について気の利いた提案をして、「じゃ、それで出願しておいて」とクライアントから依頼を受けてくる強者もいました。もはや発明者です。

専門性を上げることで、クライアントに選ばれ続けるようになり、また事務所内でも選んでもらえるような人材になれば、年収アップは大いに期待できます。

2.絶対的な得意分野を作る

得意業務、と言ってもいいかもしれませんが、得意分野を作りましょう。自分のブランディングとも言えます。この業務ならこの人に!という状況を作りたいですね。

筆者の同僚では、入社後数年はぱっとしなかったものの、ここ何年かで調査スキルを磨き、調査グループのリーダーとして飛躍しだした人もいます。

翻訳者の中にも、契約書の作成や難しい交渉のレターを得意として、皆が避けたがるような分野で輝いている人もいます。

他には、緊急案件や急ぎの案件が発生したときに嫌がらず引き受け続け、「困った時はこの人に!」という信頼を勝ち得た人材もいます。

どのような業界・職種でもそうですが、一つでも良いです。得意分野、活躍できる分野を持ちましょう。

3.外国出願を扱う

日本国内の出願件数は、年々微減の傾向にあります。日本国内に目を向けてみると、マーケットは縮小していっているのです。

一方、外国に目を向けると、諸外国では積極的に出願がなされています。また日本国内における出願件数は減少傾向にあるものの、日本から外国への出願は、実は増加傾向にあります。

外国出願を担当できるようになることで、業務の幅はぐっと広がり、結果として年収アップにつながります。

まとめ

特許事務所内の職種、職種ごとの平均年収について紹介しました。職種や立場によって大きく差がある面もありますが、特許事務所では、どのような職種であっても、社会での一般的な年収よりも高額な年収を得るチャンスもあります。

キーワードは、「高い専門性」です。

特許事務所で活躍したい!と考えている人は、是非自己研鑚を怠らないよう努力しましょう。きっと、明るい未来が待っていますよ。

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