どう出世する?企業知財部からのキャリアの歩み方とは
企業知財部からのキャリアの歩み方とは?
管理職になるのが出世なのか、年収が1,000万円を超えれば出世をしたと言えるのか、出世をするために必要なスキルは何かなど、企業知財部からのキャリアの歩み方について疑問に思う点は少なくないでしょう。
本日は、企業知財部員が社内でどのように昇進できるのか、年収はどのように上がるのか、企業知財部以外でキャリアアップする方法はあるのかなどをまとめました。
現在企業知財部で働きながら、自身のキャリアプランを悩んでいる方に、少しでも参考になればうれしいです。
どのようなキャリアプラン(出世の道)がある?
企業知財部における、昇進の例として
- 部長・課長といった中間管理職
- 執行役員
- 役員
などがあげられます。
中間管理職である部長や課長の働き方は企業により異なります。
- マネジメントを中心に行いたい
- プレイングマネージャーとして働きたい
など自身の望む管理職の姿と、実際の上司の働き方の違いを理解しておくとよいでしょう。
また知財部員からどの役職まで出世できるか、も企業により異なります。
たとえば企業の役員がキャリアのゴールと考えられている方は、自社の役員に知財部出身者が含まれているかが、一つの指標とできます。
年収はどのように上がる?
企業知財部員の役職・年次ごとの一般的な年収は以下になります。
役職・年次 | 年収 |
---|---|
新卒~5年目 | ~500万円 |
5~10年目 | 500~1,000万円 |
課長職 | 1,000~1,200万円 |
部長職 | 1,200万円~ |
企業規模や転職有無により金額は変動しますが、現在の年収が自身の能力に相当するかの目安にはなるでしょう。
年収の目安を確認するために、他社知財部の求人を見ることもひとつの方法です。
転職の予定がなくても、どのような経験や資格が各役職に求められているかを確認しておくと、今後のキャリアにおける目標を設定しやすくなります。
管理職に向いている人とは?
管理職は実務担当者よりも社内の人と関わりますので
- 部内・部外において円滑にコミュニケーションを取れる力
- 部・課の考えを上に伝える提案力
などを備えていると管理職に向いていると言えます。
管理職と実務担当者は、立場・役目が大きく異なります。
実務担当者に必要な、出願業務や中間処理業務を効率的かつ有効的に行えるスキルだけでは、中間管理職を十分に担えないことが少なくありません。
ここで、管理職にならず実務担当者としてスキルを伸ばし続けたいという方もいるでしょう。
その場合、実務の能力を最大限に活かせる専門職という働き方を選択するキャリアプランがあります。
企業の知財部においても、管理職もしくは専門職を自ら選択できる場合が多いです。
自身のスキルを考慮し、どちらの道に進むかを検討しながら実務経験を積むとよいでしょう。
出世に必要な知識やスキルは?
企業知財部で出世をしやすくするための知識やスキルとして
- 資格(弁理士・語学)
- 経営・M&Aに関する知識
- マネジメント力
などがあげられます。
実務経験だけで周りと差をつけることは難しく、また、空いたポストが転職者で埋まる場合も少なくないでしょう。
資格(弁理士・語学)
第三者が評価しやすい
- 弁理士
- 語学
などの資格は、出世の際の一つの指標となります。
実務と並行して合格率1桁の弁理士試験の勉強をすることは、決して容易ではありません。
だからこそ、取得すれば他者との差をアピールできます。
英語力の指標として主に扱われるのがTOEICです。
転職時に内資系企業であれば730点以上、グローバル企業であれば800点以上を求められる傾向があります。
知財業界の転職市場は比較的活発であり、転職者が少なくありません。
転職予定がなくても一定のTOEICの点数を取得しておくと、知財部内における自身の評価を保持しやすいでしょう。
経営に関する知識
管理職は実務担当者に比べ、経営に関わる機会が増えます。
その際、経営・M&Aに関する知識が必要です。
近年知財部が担う仕事の幅が広がっており、知的財産権の出願業務と管理業務を行えるだけでは物足りなくなってきています。
管理職を目指す場合「知財部員たる自分だからこそ管理職の立場で活躍できる」と主張するために、スキマ時間に経営について、自己学習をするのが好ましいでしょう。
マネジメント力
管理職となると
- 複数の案件を並行して進めるといったマネジメント力
- 出願の方針や取得した権利の行使方法などを提案する力
なども必要となります。
事業や経営の判断に関与できることは、管理職の魅力の一つでしょう。
管理職を目指すなら、実務担当者の頃から他部署や上司と円滑に業務を進めるための自分なりのコツを見つけておくとよいでしょう。
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企業知財部で出世をする以外のキャリアプランは?
企業知財部以外の場所でキャリアアップする例として、こちらのプランが挙げられます。
- 企業内の他部署への異動
- 特許事務所への転職
- 独立
他部署への異動
知財部から他部署への異動先として
- 研究開発
- 経営企画
- 法務
などがあげられます。
研究開発職が取得したデータを見慣れている知財部員は、試作品の作製のような実務が行えなくても、マネジメントには向いていると言えます。
上述したように、近年は知財戦略と経営戦略が切っても切れない関係になりつつありますので、知財部員が経営企画部門の管理職に就く可能性があります。
ただし、知財部から他部署への異動は決して多くないキャリアの例です。
知財部での実務経験を通し、興味を引く部署がありましたら、自ら異動希望を出すといった意思表示が必要でしょう。
特許事務所への転職
企業知財部を経験後に、特許事務所へ転職される方も少なくありません。
マネージャーよりもプレーヤーとして働き続けたい方は、特許事務所への転職を検討してもよいでしょう。
このキャリアの歩み方は、知財部にて実務経験を積みながら、弁理士資格を取得した方に多く見られます。
特許事務所は、企業知財部に比べて以下のような特徴があります。
- 複数の企業の発明に触れられる
- 中間処理業務や、明細書作成業務が多い
独立
知財に関わる仕事をする上で、企業知財部からスタートし、最終的に独立するというキャリアも選択可能です。
独立のキャリアは、たとえばふたつ。
- 特許事務所の設立
- 知財コンサルタント
どちらも長年経験を積み上げた後に選択される傾向のあるキャリアです。
知財に関する専門性が高い業務に限らず、幅広い業務に携わりたい方は検討してみてはいかがでしょうか。
特許事務所の設立
知財部から特許事務所に転職し、転職先の事務所で経験を積んだ後、ご自身で事務所を設立するといったキャリアがあります。
事務所の設立後は実務の能力にプラスして、顧客を呼び込むための
- 営業力
- マーケティング力
なども必要です。
特許事務所に所属している間に、事業所を運営する観点から仕事に触れておくことが好ましいでしょう。
知財コンサルタント
企業や特許事務所での経験を活かした、知財コンサルタントとしての独立もキャリアにおける選択肢の一つです。
知財コンサルタントは
- 企業の研究開発のデータに基づく発明の発掘
- 取得した特許権の評価
- 市場や企業の動向調査
- 知財戦略の策定
などの幅広い業務を担います。
近年では、企業・特許事務所内のコンサルティング業務を行う部署が増えてきています。
個人事業主として働く前に、これらの部署での経験を積むと、独立後に円滑に業務を進められるかもしれません。
まとめ
今回は、企業知財部からのキャリアの歩み方を、キャリアプランやそれぞれの役職で求められるスキルなどの観点からまとめました。
みなさんにとって、出世の定義は異なるでしょう。
本記事が自身のキャリアプランを明確にするための助けになればうれしいです。
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企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。