特許事務所の勤怠事情は?残業は多い?

特許事務所は一般企業などとは異なり特殊な職場、業界という印象をお持ちの方も多いかもしれません。今回は、あまり馴染みがないかも?な特許事務所の勤怠事情(残業事情)について、実際のところを紹介します。

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【確認】特許事務所の仕事内容

特許事務所の主な業務は、特許、実用新案、意匠、商標などの知的財産権の権利化手続きです。

最終的に権利を認める、認めない、といった判断は特許庁が行います。特許事務所は、権利を取得したいクライアントからの依頼を受け、特許庁への申請手続きを代行し、また特許庁によって権利が認められるように必要な手続きを行います。

具体的には出願書類の作成や、特許庁からの拒絶理由通知に対する応答書(手続補正書・意見書など)の作成が、特許事務所における基幹業務となります。

ですので特許事務所での仕事は、書類作成などのデスクワークがほとんどです。

デスクワーク以外には、特許庁に出向いたり、客先に面談に出向いたり、といった出張の発生することがあります。

平均残業時間はどれくらい?

特許事務所でもやはり例外ではなく残業が必要になる場合があります。

平均的な残業時間について、正確な統計データがあるわけではありませんが、著者が実際に見聞きする範囲では、月に平均10~40時間ほどです。著者が勤務する特許事務所では、平均10~20時間です。

ただし、これはあくまで平均です。基本的には事務所の規模や時期等によって大きく異なり、極端に多い月には60~100時間ほど残業になるという実態も、著者は実際に見聞きしたり経験したりしています。

残業が生じやすい理由

残業時間は、仕事量、すなわちクライアントからの依頼量により変動します。残業が生じやすい時期や理由がいくつかありますので紹介します。

かけこみ依頼

かけこみの理由としてはいくつかあります。

1つは、発明を公開する予定がありそれまでに出願をしなければならない、という事情です。

特許は不特定多数に公開されると新規性を失い、権利(特許)を取得できなくなります。

そのため、原則、公開前に出願手続きを完了する必要があります。

ですからプレスリリースや展示会への出展、客先へのプレゼンなどが控えている、という事情で、出願を急がないといけないケースがあるのです。

このような場合は、出願の期限を厳守する必要性から残業が発生しやすくなります。

他に企業においてかけこみ出願の生じる理由は、計画達成、予算消化、などです。

会社によっては、その年度の目標出願件数や、知的財産分野に関する予算が設定されています。企業としての基盤の強化、体力の強化を図る観点でも、一定数の出願を確保することはとても重要です。

計画や予算を達成するために、例えば企業の決算期前に出願依頼が集中する傾向があります。出願依頼が集中すると、特許事務所としてもかなり忙しくなります。

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法定期限がある

権利化の手続きには、それぞれに所定の法定期限があります。法定期限を徒過すると、原則、権利化が叶わなくなります。

そのため期限は絶対であり、厳守する必要があります。

期限前はどうしても忙しくなり、残業が強いられることも多くなります。

外国案件の増加

最近では、日本から外国への出願も増加傾向にあります。

外国案件の取り扱いが増加すると、全体的な業務量の増加につながりますし、突発的な業務を強いられる頻度が多くなったりして、残業が生じやすい一因となります。

国内同様、外国へ出願する場合も法定期限などの期限があります。

また外国に出願をする場合には、現地の代理人(有資格者)に手続きを依頼する必要があります。そのため、ある程度の余裕をもって依頼を出さなければいけません。

当然、時差もあります。これらを考慮しながら現地と密にコミュニケーションをとる必要があり、そのため、外国案件については、何かと手間が多くなるのです。

外国から日本への出願もあります。これは外国からの依頼に特有な点かもしれませんが、依頼が期限直前、ということも少なくありません。

部門(職種)ごとの残業実態

では次に、部門ごとの残業の実態について触れます。

弁理士

特許事務所において、最も残業が多くなりやすい部門、職種です。弁理士は特許事務所の運営における中心人物ですので、当然といえば当然です。

弁理士資格を有さない従業員などと比較して、弁理士の担当できる業務の幅は広いです。そのため、業務量も必然的に増加します。

特に小・中規模事務所や個人事務所などは、弁理士が実務に加えて、経理や人事などの間接業務を行うケースも少なくありません。そのような場合、弁理士は多忙を極めます。

一方、大規模事務所の場合は、分業制が進んでいるケースも多く、個々の弁理士の業務も専門分野に特化していたりします。大規模事務所は弁理士が雑多な業務をなんでもかんでもやらなくてもいい、という分、残業時間は多くならない傾向にあるようです。

特許技術者

弁理士に次いで残業が多くなる傾向にあります。これは出願書類の作成など、特許事務所の基幹業務を担うためです。

また歩合制の場合も多いですし、目標のノルマが課される特許事務所もあります。いずれにしても、ある程度の処理量は要求され、十分な給与を確保するためには、残業や休日出勤がどうしても必要になるのです。

事務、管理部門

事務作業についてはある程度ルーティン作業なので、マニュアル化、システム化がしっかり進んでいれば、効率良く業務を進められます。その分、残業は抑えられます。

そうは言っても依頼が殺到して、出願手続きも集中することになってしまうと、事務部門も非常に忙しくなります。

たとえば企業の決算期の月末などは、残業が多くなる傾向にあります。

残業代は支給される?

ほとんどの特許事務所において、残業代についてはしっかりと支給されます

労働基準監督署なども、例外なく、特許事務所の勤怠実績について監視していますし、弁理士業界(日本弁理士会)としても、残業代の適切な支給がなされるよう、啓蒙活動をしっかりと行っています。

そういったこともあり、残業代の支給などの労働環境面は、ここ数年でさらに良好になっており、実際、残業代の未払いなどの問題はほとんど聞きません

もちろん、特許事務所に就職・転職する際などは、各自でしっかりと確認しておくことは大事ですが。

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まとめ

以上、特許事務所の勤怠の実情について紹介しました。

概して、特許事務所だから何か特殊なことがあるか、というとそういうことはなく、一般的な企業と大きな大差はないというのが著者の印象です。

また、いわゆるブラックという傾向もなく、一般的には働きやすい環境であると思います。

就職・転職の際などに参考にしてください。

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