特許事務所でテレワークは可能?
テレワークを採用する一般企業がずいぶんと増えた印象ですね。
では、特許事務所はどうなのでしょう。
今回の記事では、特許事務所におけるテレワーク事情について紹介します。
テレワークを採用する事務所が増加
テレワークを採用、または拡大する特許事務所は明らかに増加しています。いわゆる1人事務所以外では、ほぼ(9割以上)テレワーク可能となっている印象です。
実は特許事務所の業務は、職種によってはテレワークでも問題なく対応できるため、もともと、テレワークを採用する事務所は少なくありませんでした。
それが昨今のコロナ禍の状況をふまえ、テレワークを本格的に導入する特許事務所が一気に増えました。
テレワークの体制を整えたことをホームページでアピールしている特許事務所が多くなっています。
職種ごとに違う?
テレワークの導入のしやすさは職種によって異なります。
そのためテレワークの体制も、事務所ごとに変わるようです。
弁理士、特許技術者
弁理士、特許技術者は、非常にテレワークを導入しやすい職種です。メイン業務が特許庁に提出する出願書類の作成なので、基本的にテレワークの単独作業でも完結できます。
クライアントや同僚との打ち合わせが必要な場合でも、よほど込み入った難しいものでなければ、ウェブMTG、Eメール、電話等で済むことがほとんどです。
ですので弁理士、特許技術者について言えば、コロナ禍前からテレワークを認めている特許事務所も、実は多かったです。
リモートワークの盛んになった現在は、例えば完全テレワークを導入し、出勤は個々人の裁量に任せる、という事務所もあります。聞いたところでは、数週間〜数か月全く出勤していない、というケースもあるそうです。
裁量の余地が大きい弁理士、特許技術者ならではとも言えます。
翻訳者
翻訳者に関しても、在宅勤務しやすい職種です。翻訳業務は弁理士、特許技術者と同様、単独の作業で完結することができるためです。
また打ち合わせなども、ほとんどの場合、ウェブMTG等のみで支障ありません。
とはいえテレワークでは限界がある場面もあります。
例えば翻訳者が、弁理士の秘書的な業務も求められる場合です。仕事内容としては、外国代理人への連絡、外国代理人からの連絡の取次、などがあります。
このような場合は、案件の包袋情報を正確に確認・把握したり、タイムリーできめ細やかな対応が求められたりします。
包袋情報の全てが完全に電子化されていてリモートでもアクセスできるなど、システムが完璧に整備されていないかぎり、テレワークでは細部の把握が難しい面があったりします。
そうすると、タイムリーな対応にも支障が生じてくるでしょう。
著者の経験では、外国代理人とのやりとりにおいて、外国弁理士も、その外国弁理士を補佐するパラリーガルも在宅勤務、というケースがあり、そのような場合はレスポンスの遅さが気になりました。
特に外国とタイムリーにやりとりする場合においては、出勤したほうが良い面もありますね。
事務員
現在、特許事務所の事務員もテレワークは多くなっています。
実は、事務員に関しては、テレワークの導入が非常に難しい職種でした。
それは電話対応などが多かったり、特許庁への手続補助、期限管理、勤怠管理、経理処理、など、専用の端末やソフトを用いる仕事も多く出勤しないと作業できない、という面があったためです。
テレワークを導入するには、自宅でも作業できるように別途システムを整理する必要があり、どの特許事務所においても、事務員のテレワークの導入には二の足を踏んでいたと思います。
しかし最近では、状況が変わりました。事務員も完全テレワーク可能、という特許事務所も出てきていますね。
事務員には女性も多いですし、特に、子育て中の女性もいたりします。そのような方にとっては、テレワークが導入される昨今の状況は嬉しいですよね。
知財HRにも、事務もリモートワーク可能という求人が増えてきています。気になる方は求人情報をチェックしてみてもよいでしょう。
働きやすい環境の事務所は多い
もともと特許事務所は、一般企業ほど勤怠管理が厳格でなく、柔軟に働きやすい環境を取り入れている、という面がありました。
とはいえ事務所によって異なりますので、特許事務所への転職を検討されている方は、面接などの際にしっかり確認しておきましょう。
時短勤務制度
時短勤務制度を導入する一般企業が出てきたのは最近なのではないでしょうか。
特許事務所でも、以前より、時短勤務制度を導入しているところは多くあります。
子育て中の女性、一般に定年(60歳)を超える人、などの働きやすさを考慮したものですね。
フレックスタイム制度
ここでいうフレックスタイム制度というのは、勤務時間(出勤時間-退勤時間)をシフトできる、というものです。
このようなシフトも事務所によってはオッケーだったりします。
朝型の人は、早くに出勤して早くに退社する、ということも可能です。また、帰りは子どもの迎えがあるため早く出勤して早めに帰宅したい、という女性のニーズも叶えられます。
夕方のほうが集中力が増す、という方は、午前中は遅めに余裕をもって出勤、ということも可能ですね。
直行直帰
例えば客先に出向くとき、場所や時間によっては直接出向いたり、客先から直接帰宅したり、というほうが都合が良かったりしますよね。
特許事務所では、このような直行直帰、というのも以前から当たり前のように認めているところが多いと思います。
時間効率も良くなりますし、移動の負担も減ります。とても助かる制度です。
テレワークOKの特許事務所に就職・転職するときの注意点
テレワークOKの特許事務所を探す際、何か注意すべき点はある?ということで、ここでは、転職などで後悔しないための留意点について紹介します。
フルリモート可能かどうか、確認する
テレワークOKの場合、テレワークのための電子システムがしっかりと整っているのかどうか確認しましょう。
特許事務所ではもともと、紙資料で情報を管理する側面が強くありました。なので情報の電子化やアクセスシステムが不十分だと、データをメモリに格納して持ち帰ったり、大量の紙資料を持ち帰ったり、という不便さを強いられます。
自身で情報を持ち歩くことになると、自身の責任での情報漏洩のリスクも生じ、テレワークに不安を感じることと思います。
システム、セキュリティがしっかりと整っているかどうかは意外と落とし穴になりますので、よくよく確認しましょう。
「テレワーク可」以外の条件も確認する
テレワーク以外の条件、例えば時短勤務制度やフレックスタイム制度があるかどうかや、その他、従業員目線で働きやすさにつながる制度があるかどうか、確認しましょう。働きやすさは長く勤められるかどうか、に直結します。
またテレワークのためのPCや電子機器等の貸与があるかどうか、も意外と落とし穴になりますので、しっかりと確認しておきたいところです。
セキュリティポリシーを確認する
特許は機密性の高い情報を扱います。具体的には出願前、公開前の技術情報などです。このような情報を漏らしてしまうと、それこそ法的責任に発展するような問題となり得ます。
特許事務所ごとにセキュリティポリシーや、情報漏洩があった場合の責任範囲も異なりますので、確認しておくのがおすすめです。
そしてもちろん、テレワークに際して情報漏洩を発生させないよう、危機感と自覚をしっかりと持つことが重要です。
\在宅勤務可の求人多数/
在宅勤務でも実績を上げるためのポイント
テレワークでもしっかりと実績を出し年収アップを図るためのポイントについても紹介します。
自己管理をしっかりする
いかに自己管理できるかどうか、が実績に直結します。特にスケジュール管理は重要です。
職場に出勤していれば、クライアントや同僚とのコミュニケーションを通じて、タスクの優先度や重要度が比較的把握しやすい面があると思います。
しかし在宅勤務になると、コミュニケーションの機会がどうしても減ってしまいます。その点では、自身でタスク管理、納期管理等をしっかりと行うことが求められます。
また職場では、当然同僚の目があるので、緊張感があって集中力を維持することも難しくないですが、テレワークの場合は勝手が違います。リモートワークでも、いかに緊張感、集中力を持って取り組めるか、が重要です。
自己管理が苦手な人は、テレワークを行うよりも、出勤して業務を行ったほうが断然良いです。
得意スタイルを確立する
テレワークは良くも悪くも自身のスタイルで業務を行うことができますね。ですので、自身に合ったスタイル、得意なスタイル、というものをしっかりと確立しましょう。
例えば午前、午後、といった時間ごとにどんな業務を行うか、といったことを決めてしまうのも1つです。他には集中できる環境、気分転換の仕方、特に煮詰まった時の対処法、なども自分なりのものをしっかり持っておくと、スムーズに仕事ができるはずです。
設備投資を惜しまない
テレワーク可の場合、リモートワークのためのPCや電子機器を貸与してくれるのが通常ですが、特許事務所によっては貸与がない場合もあるかもしれません。
また貸与があるとしても、ノートPC程度にとどまるのが一般的なようです。
仕事に使うツールの性能や仕様が不十分であると、業務効率が上がりません。業務効率を上げるための投資は惜しまず行うべきです。
地方在住も可能
最近では、地方に住みながら都市部の企業に勤務するというようなライフスタイルがTVなどで紹介されることも多くなっていますね。特許事務所ではどうなのでしょう。
地方からアクセス
特許事務所においても、地方に在住しながら、というスタイルは見受けられます。
実際、筆者の事務所でも、家族の関係上遠く地方に住みながら完全在宅で、という方もいます。非常に遠距離なので出勤することはほぼありません。連絡はほぼEメールのみです。ですが、問題なく業務ができています。
特許事務所でも、例えば好きな場所に住みながら、というスタイルを確立することは可能と言えます。
外注として活躍
必要なときに、特許事務所から業務の委託を受ける、つまり特許事務所の外注先として活躍する、というケースもあります。
時間や場所に縛られず、無理の無い範囲で仕事をする、というのもいいですね。
著者の事務所でも、円満退社ののち、外注として活躍している方も少なくありません。
海外に住みながら働ける?
もちろん、海外に住みながら働く、というスタイルも可能ですね。
知財業界の業務も、ますますグローバル化していますし、外国のリアルな情報も貴重です。むしろ、重宝されるかもしれません。
外国弁理士と提携
特許事務所によっては、例えば外国に在住している外国弁理士と提携し、必要なときに、その外国弁理士と連携して業務を行う、外国弁理士に業務を発注する、ということを行っている事務所もあります。
このような例をみると、海外に住みながら働く環境、というのも可能でしょう。
関連記事
まとめ
特許事務所の業務は、基本的には、テレワークを導入しやすい面があり、テレワークを導入・拡大する特許事務所は増加傾向です。
また、テレワークが可能であることを売り文句にしている特許事務所も多くなりました。
このご時世ですから、テレワークが可能であることは嬉しいですね。
特許事務所でもテレワークが当たり前になってきていますので、特許事務所への転職を考えている方なども、安心でしょう。
知財専門の求人サイト「知財HR」
知財業界はいわゆるニッチ業界。そこで転職時に重要になってくるのが「どれだけリアルな情報を集められるか」です。特許事務所で働くなら「事務所の色」「所長の色」に合うかどうかも大切になってきます。
そこで知財HRでは、転職前の不安・お悩みにこたえるべく、求人票にインタビューを掲載中!(※求人によります)
より具体的な仕事内容、事務所の色。職場の雰囲気、求人募集の背景など…。たくさんのリアルな情報を知ったうえで求人へ応募することができます!求人検索は下のボタンから↓↓↓
エンジニア出身です。某一部上場企業にて半導体製造装置の設計開発業務に数年携わり、その後、特許業界に転職しました。
知財の実務経験は15年以上です。特許、実用新案、意匠、商標、に加えて、不正競争防止法、著作権法、など幅広く携わっています。
諸外国の実務、外国法にも長けています。