弁理士に将来性はある?知財業界の今後

将来性はある?弁理士業界の実情

弁理士業務は知的財産を扱う専門性の高い仕事ですが、その将来性については、不安の声もあるようです。

数年前の某週刊誌において、AIにより仕事を奪われてなくなる職業ランキングが発表され、そのランキングにおいて、なんと弁理士が31位となっていました。

ここでは、本当に弁理士の仕事ってなくなるの?将来性は?という観点で予測、検証をしてみようと思います。

弁理士の仕事

弁理士の仕事は、特許出願など、知的財産権の取得のための特許庁への手続きがメインとなります。特許庁に対する申請代行業務は、弁理士の専権業務であり、弁理士以外がその申請代行業務を行うことは法律で禁止されています。

弁理士の人数

弁理士の人数は、日本弁理士会が公表している統計情報によれば、2013年に初めて1万人を超えて10,171人となり、2022年2月現在で11,678人となっています。微増傾向にはあります。

一方、実は弁理士試験の受験者数は年々減少傾向にあります。2006年~2009年頃の1万人超をピークに、2020年には約35,000人程度まで減少しています。合格者数も、2009年の800人超をピークに減少傾向にあり、ここ数年は300人前後で推移しています。

弁理士の平均年齢

弁理士試験の受験者数、合格者数は特段増加していないことからも分かるように、弁理士業界は高齢化が進みつつあると言えます。

2022年2月現在で、平均年齢は52.6歳となっています。なお、最少年齢は23歳、最高年齢は104歳です。

年齢層別の分布は次のとおりです。

参考:日本弁理士会会員の分布状況(2022年02月28日現在)

  • 20代 58人
  • 30代 1214人
  • 40代 4270人
  • 50代 3211人
  • 60代 1622人
  • 70代 975人
  • 80代 302人
  • 90代以上 44人

知財業界の実情

知財業界の実情について簡単に紹介します。

日本国内の出願件数

日本国内の出願件数に目を向けると、特許庁が公開している特許行政年次報告書2021年版等によれば、2005年に約43万件弱であり、2007年に40万件を割り込んで約39.6万件、その後さらに減少傾向をたどり、2020年には30万件も割り込みました

日本の経済成長が見込めず、日本のマーケットとしての魅力が低下しているように思われます。

そして、日本国内の出願件数が減少傾向にあることに伴い、弁理士業界の競争も厳しくなってきています。全体として弁理士1人あたりが担当(代理)できる案件数が減っているわけですから、当然厳しくなりますね。

日本から外国への出願件数

日本国内の出願件数は減少傾向にある一方で、日本から外国への出願件数は増加傾向にあります。

特許行政年次報告書2021年版によると、PCT国際出願件数の推移については、2011年の約3.8万件から2019年の約5.2万件へと増加傾向にあります。

なお、2020年はコロナ渦の影響もあり一時的に減少しているようですが、全体的な増加傾向については今後も続くように思われます。

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気になるAIの影響

先に紹介したように、弁理士業務は残念ながらAIに奪われるという予測もあるようです。この点について検証してみましょう。

AIでできること

弁理士が行う業務の中には、確かにAIでできることもあります。例えば先行文献調査などは、AIでできるとも言われています。

実際、商標検索の分野ですが、「ロゴ」の画像データをアップロードすると、それに類似した登録があるかどうかを調べることができるサイト、サービスもすでに存在しています。

例:Toreru商標検索

また近年の翻訳技術の進歩によって、特許翻訳などもAIに奪われるとの予想があります。確かに近年、自動翻訳・機械翻訳の精度は急激に向上しています。特許翻訳とAIとの相性は良いかもしれません。

AIでできないこと

AIは、発明者とコミュニケーションをとり、発明の本質を掘り下げていくことには向いていません。発明発掘には非常に複雑で高度な思考ロジックが必要です。AIで対応することは、まず不可能です。発明の本質を理解し、意味のある権利を取得すること、これは弁理士でなければできません。

弁理士として活躍し続けるために必要なこと

プロ、専門家であるという自負

AIにとって代わられずに、「やっぱり弁理士に相談しよう」、とクライアントに思って頂けるために、強い信念や高い志を持ちましょう

知的財産権は、事業者の事業展開において切っても切り離せない重要な財産です。

弁理士の主業務である特許等の出願の申請代行は、依頼者からの依頼に沿って行いますが、「依頼者の指示どおり」というだけでは、弁理士が関わる意味がありません。

知的財産権の専門家として、クライアントの期待に応え、期待以上のサービスを提供する!という情熱が、クライアントに選び続けてもらう秘訣です。

グローバル思考

日本国内だけに目を向けていては、ビジネスチャンスは限られます。一方、世界に目を向ければ、経済発展が著しい国も多数あり、無限の可能性、無限のチャンスが広がっています。

ぜひ、世界に目を向けましょう。

弁理士として、これから世界に進出しようとする日本企業をサポートする。また、世界を股にかける外国のグローバル企業と取引する。

そういったことで、弁理士業務も将来にわたって拡大する余地がまだまだ十二分にあります。

経営者目線の思考

経営者目線の思考を持つことは、これから弁理士として活躍し続けるための条件とも言えるでしょう。

弁理士の主業務は特許等の出願の申請代行であると述べましたが、もはや、出願の申請代行のみでは生き残りが厳しい時代となりました。

どういうことかと言いますと、依頼人の多くは知的財産権の取得と絡めて、どのように事業を展開していけばよいか、どうやって競合他社と差別化すればよいか、といったような課題を抱えています。

弁理士として、出願の申請代行のみならず、依頼者の持つ様々な経営課題に向き合い、経営者目線で依頼者と一緒に課題を解決していくこと、それが強く求められているのです。

当事者思考

依頼者の課題を自分ごとのように考える姿勢は、弁理士として長く活躍するためのポイントです。

弁理士業務は画一的なものではなく、単純ではありません。依頼者ごとに、最適な出願戦略というものが存在します。

最適な出願戦略とは何か?その答えは、表面的に対応していたのでは見つかりません。

依頼者の立場に立ち、依頼者に寄り添って考え、考え抜いた末にあるとき、ようやく見えてくるもの、とも言えるでしょう。

まとめ

AIが飛躍的に進歩しつつある現状において、弁理士に将来性は無い?と言えば、決してそんなことはありません。

では、弁理士の将来はバラ色か?と言えば、それも甘いでしょう。

弁理士業界にも、二極化の波があります。

弁理士に将来性があるかどうか、それは、あなた自身が決めること、ということで締めくくりたいと思います。

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