特許出願のクレーム作成マニュアル【書評】
特許出願におけるクレーム(特許請求の範囲)のルールや書き方について説明する書籍は、数多くあります。
しかし特許の出願書類(明細書)作成に携わっている実務者は、
実際の製品や発明提案書から、特許を取得するポイントを抽出し、抽出したポイントに基づいてクレームを作成すること
に日々悩まされており、このポイント抽出やクレーム作成について書籍で確認したいという思いを持つこともあると思います。
本作は、特許を取得するポイントの抽出や、抽出したポイントに基づくクレーム作成について、事案に基づいて実践形式で解説している点に特徴があります。そのため、実務に携わっていない方でも、これらの訓練をすることが可能となっています。
本作では機械系の事例を中心として、10件ほどの事例が掲載されています。
特許を取得するポイントの抽出では、特許を取得したい技術と従来技術との相違点の抽出や、この相違点の本質理解が、重要であることが述べられています。
作中の事例をひとつご紹介しましょう。
「転がりにくい鉛筆」について、ポイントを抽出し、クレームを作成するという事例が書かれています。実際に実施している鉛筆は断面が六角形の鉛筆ですが、この六角形をそのままクレームに記載すると、断面が四角形や三角形の鉛筆は権利範囲から外れるため、代替品による実施が容易となります。
そこで、この発明のポイントはどのようなものなのか、そのポイントの抽出が重要になります。
また本書では、作成したクレームのチェックについても解説されています。
クレームのチェックでは、明細書に記載した発明の作用・効果が、クレームの記載内容だけで生じるか、検討することが述べられています。このチェックにより、クレームの記載で不足している事項や、余分な事項を把握することが可能となります。
本作は、事例からクレームを作成する問題集、という位置づけで、特許明細書作成に携わっている実務者が使用するのに適している書籍です。
特にポイントの抽出については、実務以外の場面で訓練する機会がほとんどないため、非常に有意義な訓練を積むことができると思います!
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特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。