実務解説 職務発明――平成27年特許法改正対応【書評】

青色発光ダイオードに関する裁判で、職務発明をすることにより発明者の得られる対価約8億円を発明者に支払うという和解がなされたこともあり、今では職務発明制度は、企業も注目している制度の一つになりました。

その一方で従来は、職務発明に対して支払う対価を予見することが難しい、あるいは、企業の研究開発や雇用のあり方の多様化に対応しきれていない、という指摘がなされていました。

このような問題点に対応するため、平成27年(2015年)に、職務発明規定が改正されました。この改正された職務発明制度は令和5年(2023年)現在でも適用されています。

本書籍は、企業の知的財産部、弁理士、弁護士向けに平成27年職務発明改正の解説をしている書籍です。そして、本作は、平成27年職務発明改正の立案に携わった方々が著作者である点に特徴があります。そのため、法改正の経緯について詳細に書かれています。

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平成27年職務発明改正で変わった主な点は、

  • 特許を受ける権利を原始的に使用者に帰属させることができること
  • 職務発明をした際の発明者への支払いをより多様な形でできるようにしたこと
  • この支払いを決めるに当たっては、手続きを重視すること

ですが、これらの変化に伴い、社内規定の整備や共同発明契約の修正など、様々な対応が要求されます。

この社内規定の整備や、共同発明契約の修正に際しては、本書籍に書かれている職務発明のガイドラインの解説や、Q & Aが参考になります。特にQ & Aについては、58個の質問と回答が用意されており、職務発明の法改正によって実務上変わる点について詳細な説明がなされているため、このような変更に対して効率よく対応することができると思われます。また、この法改正を踏まえた職務発明規定のサンプルも記載されているため、これらの修正の参考になると思われます。

また、本書籍は、平成27年の職務発明規定について深く勉強するのに適した書籍であるため、弁理士試験の際に、職務発明の勉強用として使うのにもよいと思われます。

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