SNS別 最新 著作権入門: 「これって違法!?」の心配が消える ITリテラシーを高める基礎知識【書評】
「うっかり誰かの権利を侵害してしまわないよう注意したいですね。」
これは本書にとっておいて重要なメッセージです。
SNSが普及したことで、誰もが文章や画像、動画などを投稿できる時代になりました。
みなさんは著作権について基礎的な知識をもってからSNSを始めましたか?おそらく、ほとんどの方が知識をもたないままSNSを始めたのではないでしょうか。
著作権の知識をもたないままSNSを始めると、思いもよらないトラブルに巻き込まれることがあります。
例えば、他人の著作権を侵害してアカウントが凍結されてしまったり、最悪の場合は権利者から訴訟を起こされて損害賠償を請求されるおそれもあります。
「それなら著作権法を学べば良いじゃないか」と思いますよね。ですが今まで法律を学んでいない人にとって著作権法はとても難解ですし、何に気を付ければいいのかイマイチ分からないというのが本音ではないでしょうか。
そんな悩みに応えるべく、本書はイラストをたくさん用いながら「中学生にもわかる」レベルで著作権などの法律を説明しています。そのため初心者でも理解しやすい内容です。
例えば著作権法の基本書において、著作権の発生時期の説明は「著作物を創作した時点で発生します。」といった堅苦しい表現が多いです。
一方、本書では「絵を描いた瞬間に、楽曲を作った瞬間にシュパッと自動的に発生します。」のように、初心者でもイメージがつかみやすい表現が各所で使われています。
また副題が『「これって違法!?」の心配が消えるITリテラシーを高める基礎知識』とされているとおり、著作権に関する基礎知識からSNSにおける著作権の問題点について詳しく学ぶことができます。
本書は以下の3章構成です。
・第1章 著作権って何?
・第2章 SNS投稿の気になる事例を解説!これってアウト?セーフ?
・第3章 SNSで正しく著作物を扱うために知っておきたいこと
メインとなる第2章ではSNSにおける著作権侵害の問題点や、SNSの利用における注意点がQ&A形式で解説されています。
例えば、Q2「『元気が出る歌詞』『心に刺さる名言・セリフ』の投稿ってしてもいいの?」は、「著作権者の許諾が必要になるフレーズの長さはどれくらいか?」という読者の悩みを想定した事例です。
アンサーは「短いものであればOK。何十文字もする場合はNGの可能性が高いので要注意!」と著者の判断が示されています。
また「名言・セリフ」や「キャッチコピー」、「人の名前」、「ニュースのタイトル」、「一発ギャグ」は著作物にあたらないという分かりやすい例も添えられているので、SNSの初心者が投稿するときの安心材料が用意されています。
著者である井上拓弁護士は、京都大学と東京大学法科大学院を卒業し、知的財産法やエンターテイメント関連、訴訟を得意とする専門家です。またYouTuberとしても活躍しています。
本書は初心者でもわかりやすく、具体的な対策についても詳しく解説されているため、SNSを利用する上での著作権問題について学びたいと考える方にとっては読み応えのある良書です。
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知財業界歴10年。 都内大手特許事務所勤務を経て、現在は一部上場企業の知財職に従事。 知財がより身近に感じる社会の実現に貢献すべく、知財系Webライターとしても活動中。