特許出願や中間処理をする際の、特許事務所の弁理士と企業エンジニアの役割

特許出願における弁理士とエンジニアの役割

特許出願をする際は、特許事務所の弁理士と企業エンジニア、両方が互いの専門分野で適切な役割を果たすことで開発した技術をより効果的に保護できます。

ここでポイントとなるのが、特許出願における申請書類です。

これは企業の開発した技術を特許権で保護するための書類であり、法律面・技術面の両方において、専門性が要求されます。

そこで法律面については特許事務所の弁理士が、技術面については企業エンジニアが専門性を発揮することで、相乗効果を見込めるのです。

出願依頼のタイミングで共有すること

特許出願を依頼するタイミングで共有することは、既に公知となっている技術(従来技術)と権利化する技術の相違点、そしてこの相違点に基づいてどのような権利取得を目指すか、です。

一般的には、打ち合わせなどにおいて、以下の点を共有することが多いです。

  • 開発した技術
  • 権利化のポイント
  • ノウハウとして開示しない事項があれば、そのノウハウ

権利化のポイントに関する事項

まずは新規に開発した技術を把握した上で、従来技術との相違点を抽出・共有しなくてはいけません。

特許権を取得するためには、この相違点を主張し、開発した技術が新規性・進歩性を有していることを出願書類を通じて説明する必要があります。

相違点を抽出する作業は、弁理士が

  • 開発時における改良点をエンジニアからヒアリングする
  • 特許公報などの文献を確認する

ことで行われます。そしてこの、抽出された相違点に基づいて、特許事務所の弁理士は以下の内容を決めます。

  • 出願書類における特許請求の範囲
  • 発明が解決しようとする課題
  • 発明の効果

これらは、特許権の権利範囲を決める場合においても、新規性・進歩性を主張する場合においても、非常に重要な項目になります。

さらに新規に開発した技術の動作や、変形例がある場合には、これらについても共有しておきましょう。

技術の動作も、その技術を実施できる程度に書類へ書くよう、法律上決まっています。この技術動作を書類に書くことで、従来技術との相違点をより明確にできる、というメリットもあります。

また変形例を記載すると、特許請求の範囲をより広げる際の根拠となります。将来仮に補正をするときも、より補正のバリエーションを増やせる効果があります。

ノウハウについて

出願公開制度というものにより、出願から一定期間の経過した書類は、その内容が公開されます。

そのため、公開されたくない技術は出願書類に記載せず、ノウハウとして秘匿する選択も

この場合はノウハウとして秘密にする事項を、弁理士とエンジニアとの間で共有する必要があります。

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化学・材料分野特有の事項

開発した技術が化学、材料の分野である場合には特に、以下の点をどこまで出願書類に記載するか、共有してください。

  • 材料の成分とその割合
  • 材料の製造工程

材料の成分と割合は、その組み合わせによって、材料の特性が急激に変化する場合があります。この特性の変化は、新規性・進歩性を主張するための有力な根拠となります。

またさきほど解説したように、出願書類には技術を実施できる程度に記載する、という法律の規定があるので、材料の製造工程も書かなくてはいけません。しかし一方では、上述したノウハウの問題や、実験データがそろっている範囲での出願をしたい、といった要望もあります。

これらの点に記載ミスが起きないよう、どこまで出願書類に書くか、細かく共有したほうが良いのです。

【弁理士】出願書類の作成時における役割

弁理士の最も重要な役割は、出願人であるエンジニアの希望に沿った出願書類を作成することです。

具体的には、弁理士とエンジニアとの間で共有した内容や、エンジニアからヒアリングした技術内容に沿って出願書類を作成します。

このとき技術内容を出願書類に盛り込みすぎると、出願のポイントがぼやけてしまうため、何を、どこまで出願書類に記載するか、を明確にしたうえで書類作成をする必要があります。

ここが弁理士の腕の見せどころです。

【エンジニア】出願書類のチェック時に気を付けること

エンジニアが出願書類のチェック時に特に気を付けることは、以下の通りです。

  • 記載されているは技術内容が正確か
  • 共有した事項がもれなく記載されているか

なかでも「特許請求の範囲」は、開発した技術を上位概念化(より抽象化)して書いていることが多いです。特許請求の範囲として書かれている内容がわかりにくいと感じた場合には、弁理士に確認をすることが好ましいです。

また「特許請求の範囲」に不要な構成が記載されていないか、確認する必要があります。「特許請求の範囲」に余計なことが書かれていると、その記載のせいで特許権の権利範囲が狭くなるからです。

中間処理における弁理士とエンジニアの役割

中間処理において、特許庁から指摘される主な事項は、以下の2つです。

  • 新規性・進歩性
  • 出願書類の記載に関する事項

新規性・進歩性については、出願書類に記載されている事項と、拒絶理由通知で引用されている文献に記載されている事項との技術的な相違点を、抽出することが重要になります。

一方で、出願書類の記載に関する事項については、弁理士が対応し、エンジニアが必要に応じて確認する、という形式をとっていることが多いです。

新規性・進歩性における弁理士とエンジニアの役割

上述した新規性・進歩性における相違点の抽出については、弁理士でも専門分野に近い分野であれば対応することが可能ですが、専門分野から離れた分野の場合には、対応が困難なこともあります。

そのような場合には、エンジニアのアドバイス等をもらいながら、相違点を共有することが重要になります。

例として、機械分野を主に扱う弁理士が、材料分野の中間処理を担当する場合には、弁理士がこの相違点を抽出することが困難であるため、エンジニアにアドバイス等をもらいながら対応することになります。

また、実際に特許庁に提出する書類(手続補正書・意見書)については、この相違点に基づいて、草案を弁理士が作成し、エンジニアが確認する形式をとることが多いです。

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