明細書の紹介(2)製品構造をかんたんに理解できる「特許請求の範囲」
特許請求の範囲の記載は、より広い権利を取得するために、ある程度抽象的に記載されていることが多いです。しかし抽象的な記載をした場合、特許で保護する対象物(製品)の構造が分かりにくくなる、という問題も生じます。
その一方で、形状に特徴のある製品について特許出願をする場合、発明のポイントを押さえつつ、具体的な形状をイメージできるように、特許請求の範囲を記載するケースがあります。
今回はその一例として、段ボール箱の分野の特許出願を紹介します。
この記事で紹介する明細書
今回紹介する明細書は、機密資料等の機密古紙を一定期間保管し、その後溶解処理等の廃棄処理をすることのできる機密古紙用段ボール箱の明細書(特許番号:特許第6110108号)です。この特許では、請求項1に以下の構成が記載されています。
【請求項1】
第一側壁(11)、底面板(12)、第二側壁(13)、天面板(14)及び糊代部(15)がこの順で連設される四角筒状部(10)と、
上記天面板(14)の各端縁から延出する一対の上側外フラップ(20)と、
上記底面板(12)の各端縁から延出する一対の下側外フラップ(30)と、
上記各側壁(11,13)の各端縁から延出する二対の内フラップ(40)と
を備える一枚のシートから構成される段ボール箱用シートであって、
上記糊代部(15)及び天面板(14)に、糊代部(15)の先端縁(15a)から上記第二側壁(13)に向けて四角筒状部(10)の周方向に沿って設けられた第一破断誘導線(2)と、
一方の上記上側外フラップ(20)に設けられ、破断されることで係合部(21)を形成する第二破断誘導線(3)と、
一方の上記内フラップ(40)に設けられ、破断されることで上記係合部(21)に係脱可能な被係合部(41)を形成する第三破断誘導線(4)と
を備えることを特徴とする段ボール箱用シート。
また、この発明を説明するために、以下の図1-図4が記載されています。
図1 段ボール箱の展開図
図2 機密古紙用段ボール箱の梱包形態を示す斜視図
図3 機密古紙用段ボール箱を開封し、内部の商品を取り出した状態を示す斜視図
図4 機密古紙用段ボール箱の天面板の一部を閉じ、係合部と被係合部とを係合させた状態を示す斜視図
さらに、本願発明の効果として、以下の事項が記載されています。
この段ボール箱用シートを組立てた段ボール箱は、第一破断誘導線に沿って糊代部及び天面板を破断することで天面部の一部を開封することができ、この開放部分から機密古紙等を内部に投入することが可能となります。そして、機密古紙等を内部に投入した後に天面板を閉め、さらに第二破断誘導線及び第三破断誘導線に沿って破断することで形成された係合部及び被係合部を係合させることで、閉めた天面板が不用意に開放することを的確かつ容易に防止することが可能となります。
発明品の形状がイメージしやすい!
本願の請求項1では、最初に段ボール箱用シートの展開図を大まかに記載し、次にフラップを説明し、最後に破断線と係合部・被係合部を説明しています。このように大まかな形状を説明した後、個々の形状を説明することで、文章から図面をイメージしやすくすることが可能となります。
そして、このように、請求項1の記載を図でイメージしやすくすることで、明細書に記載されている発明の効果を理解することが容易になります。
この明細書がスゴイ(明細書の紹介) シリーズ
- 図面なしで説明する構造系明細書
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特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。