知財訴訟に備える!知財保険についてご紹介!

ビジネスをしていると、思わぬ所で知財訴訟に巻き込まれてしまうことがあります。

訴訟に巻き込まれると、損害賠償請求や差止請求を受けることになり、企業としては大きな負担となってしまいます。

特に今はグローバル化も進んでおり、訴訟されるリスクは国内だけではありません。

訴訟大国と言われるアメリカでは、知財訴訟の賠償金は非常に高額ですし、中国においては訴訟件数が大幅に増加しています。

国内の中小企業でも、突然海外の企業から訴えられる!なんてこともあるので、知財訴訟は他人事ではありません。

今回は、企業が知財訴訟に巻き込まれた時に、賠償責任や争訟費用を補償してくれる保険について解説いたします!

知財訴訟保険とは?

​​知財訴訟保険は

  • 他者から知的財産を侵害されたと訴えられたとき
  • 他者が自社の権利を侵害していると訴えるとき

に発生する費用を補償してくれる保険です。

訴えられた場合だけでなく、自社が訴える際の費用も補償されるというのがポイントです。

訴訟費用や損害賠償にかかる手続きの費用が対象ですが、くわしくは補償内容の所で解説をしています。

知財に関するトラブルを完全に防ぐことは困難ですので、不測の訴訟費用等のリスクに対して、保険により備えることをおすすめします。

対象となる権利は?

知的財産には様々な種類がありますが、以下の4つが主な対象となっています。

  • 特許権
  • 実用新案権
  • 意匠権
  • 商標権

補償内容は?

上記の権利を侵害してしまった場合、または侵害されそうになったとき、保険に加入していればそれに対応するための費用を補償してくれます。

具体的には以下のようなものがあげられます。

  • 損害賠償金
  • 訴訟または仲裁に関する手数料
  • 弁護士、弁理士費用
  • 鑑定費用

ここで注意が必要なのが、差止請求を受けた場合に発生する損失に関しては補償外ということです。

販売停止による顧客や納品先とのトラブルへの対応は知財訴訟保険ではカバーできません。

弁護士・弁理士費用の相場は・・・?

日本国内で1億円の損害賠償請求に対して発生する費用の平均は約1,000万円です。

弁護士費用(顧問契約なし)

  • 着手金の平均: 270万3,518円
  • 報酬金の平均: 730万5,000円

参考:特許侵害で1億円の損害賠償請求をした場合の着手金と報酬金はいくらか?|弁護士報酬について|ひまわりほっとダイヤル

訴える場合・訴えられる場合のどちらにも弁護士費用は発生しますので、保険で備えておくのが良いでしょう。

知財訴訟保険を販売している会社は?

複数の保険会社が独自の補償やサービスで商品を販売しています。

商品によって細かい内容は異なっていますので、企業にあった保険を選ぶことが大切です。

以下に、代表的な保険会社をご紹介いたしますので、検討の際に参考にしてくださいね。

損保ジャパン

損保ジャパンでは「知的財産権賠償責任保険」という商品を販売しています。

こちらの保険は、第三者の知的財産権を侵害した場合に生じる賠償金を補償するもので、損害賠償金の補償は業界初です。

損害賠償金の他、弁護士相談費用などの訴訟費用も補償対象となっています。

◆公式サイト(損保ジャパン)

あいおいニッセイ同和損害保険

(株)発明ラボックス会員の法人、個人事業主の方が加入できる知財訴訟保険です。

こちらの保険では、訴訟等に関する必要かつ有益な費用(訴訟の提起等に要する手数料、弁護士報酬、鑑定費用またはその他の費用)等が補償されます。

損保ジャパンとは異なり、損害賠償金については補償対象外となっています。

補償内容は会社や商品によって異なりますので、詳細をご確認ください!

◆法人向け公式サイト(あいおいニッセイ同和損害保険)

◆個人向け公式サイト(あいおいニッセイ同和損害保険)

三井住友海上

三井住友海上では「ビジネスプロテクター」という商品を販売しています。

知財訴訟に特化したものではなく、訴訟対応費用に加え、様々なリスクに対して幅広く補償してくれる保険となっています。

オプションで弁護士費用補償をつけることも可能です。

業種によって異なる商品となっていますので、詳しくはホームページをご確認ください。

◆公式サイト(三井住友海上)

知財保険には海外対応もある!

近年、海外への事業展開が増加しています。

ニュースなどでも話題になることがあると思いますが、中国を中心に海外で知的財産侵害事件が起こるリスクも同時に増加しています。

特に、中小企業においては、訴訟対応にかかる莫大な費用は、事業撤退や事業存続の危機に追い込まれてしまうなどのリスクがあります。

このようなリスクを回避するため、海外に対応した知財訴訟費用保険もあります!

海外対応の知財保険を販売している会社

日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会が運営を行い、以下の3社が海外対応の知財保険を販売しています。

  • 損保ジャパン
  • 東京海上日動
  • 三井住友海上

詳細な補償内容は、各保険のパンフレットにてご確認ください。

【販売会社】損保ジャパン

日本商工会議所 運営 >全国商工会連合会 運営 >全国中小企業団体中央会 運営

【販売会社】東京海上日動

日本商工会議所 運営 >全国商工会連合会 運営 >全国中小企業団体中央会 運営

【販売会社】三井住友海上

日本商工会議所 運営 >全国商工会連合会 運営 >全国中小企業団体中央会 運営

海外知財訴訟費用保険は補助金が出る!

特許庁は海外知財保険に入りたい中小企業に対して、保険費用の一部を補助する補助金を用意しています。

海外進出に際して、訴訟不安を抱えたまま事業展開するよりも、特許庁からの補助を受けて保険に入り、安心して事業を行うことができるようにしましょう!

補助金の要件

中小企業が本保険に加入する場合、保険料の1/2(2年目以降の場合は、保険料の1/3)が特許庁から補助されます。

また、以下の2つの要件を両方満たさないと対象になりません。

  • 商工会議所、商工会、全国中央会の会員企業
  • 中小企業基本法に定められている中小企業者かつ、みなし大企業でない場合

なお「みなし大企業」とは、以下のような企業を指すと定義されています。

・発行済株式の総数又は出資金額の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業
・発行済株式の総数又は出資金額の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業
・大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業
・資本金または出資の総額が5億円以上の法人に100%の株式を保有される中小企業
・確定している(申告済みの)直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業

特許庁公式パンフレット

海外では知財訴訟に巻き込まれるリスクが非常に高い!

海外市場では知財訴訟のリスクが非常に高い状態です。

日本企業の進出先としてよく選ばれる、中国・アメリカに関しては、日本とは比較にならないほど頻繁に知財訴訟が起こっています。

日本アメリカ中国
特許訴訟件数
(2017年)
1504,31916,100

(出典:中国法院知的財産司法保護状況(2014-2019)および日本特許庁による海外における知財訴訟の実態調査報告書より)

上記のデータからわかるように、アメリカの特許訴訟件数は日本の約30倍。

中国に関しては日本の100倍以上の件数となっています。

日本でビジネスするのと同じ感覚で、アメリカや中国に進出してしまうと非常に危険です!

海外へ事業展開される場合は、海外知財保険の加入をおすすめします!

保険以外にも、クリアランス調査が重要!

クリアランス調査とは、自社の製品やサービスなどが他社の権利や出願内容に含まれていないか、つまり他社権利に抵触していないかを調べる調査です。

国内外に関わらず、製品やサービスを販売する際には、クリアランス調査をすることが重要です。

保険加入以外にも、クリアランス調査を行い、安心して事業展開されることをおすすめします。

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まとめ

国内外問わず、年々増加する知財訴訟。

いつ知財訴訟に巻き込まれてもおかしくはありません。

権利侵害により損害賠償請求や差止請求を受ければ、企業イメージ悪化や業務負担の増加だけではなく、莫大な訴訟費用を負担しなければいけません。

特に中小企業であれば、そのダメージはより大きいものになるでしょう。

知財訴訟が増加する昨今の状況を考えると、これらの負担に対応する知財訴訟保険に加入することをお勧めいたします!

損害賠償金も補償対象となる保険もありますので、各企業にあった補償内容・保険金額などを検討し、訴訟リスクに備えてくださいね。

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