特許管理システムを徹底解説!利用メリットから各システムの比較まで

特許管理システムを選ぶときの着目点

特許管理システムとは、知財権に関する情報をまとめ、企業・特許事務所のスケジュール・進捗・経費などの管理をし、業務効率化をサポートするシステムです。

多くの特許管理システムが各社から提供されており、どのシステムを導入すればよいか迷われる人も少なくないのではないでしょうか。

本記事では、特許管理システムの

  • 基本機能
  • サポート内容・範囲
  • 連携可能なサービス
  • 価格

についてご紹介します。

ぜひ、それぞれの特許管理システムを比較する際の参考にしてください。

【8社比較】特許管理システムの特徴まとめ

各社の特許管理システムにはそれぞれ特徴があり、利用目的により得られるメリットの大きいシステムが異なります。

本記事では、以下の8つの特許管理システムの特徴をご紹介します。

  1. CyberPatent Topam
  2. 知財管理サービス
  3. PatentManager
  4. KEMPOS
  5. root ipクラウド 事務所版
  6. PALNET/MC6
  7. 知的財産総合管理プラットフォーム
  8. PatentSQUARE

注:料金はすべて2022年4月時点の税別価格です。

1.CyberPatent Topam

機能の特徴

  • 自社・第三者特許・特許周辺情報の管理
  • 経費管理
  • 調査管理
  • タイムスタンプ機能

費用例

  • 基本セット 月額25,000円/1アカウント

CyberPatent Topamは、Questel Cyber Patentにより提供されているシステムです。

  • 出願公開件数上位100社のうち、約30社の利用実績がある
  • 鉄鋼・自動車・化学・食品・繊維・医薬など幅広い業界で利用実績がある

といった特徴があるため、業界・専門領域に関係なくあらゆる企業・大学におすすめのシステムです。

注目したいのが特許周辺情報を管理する際に、タイムスタンプ連携という機能を使えること。

タイムスタンプの使用目的は、取引や手続きが行われた時刻・日時の証明です。

特許権に関する中間処理・訴訟などにおいて、発明・事業がいつ行われていたか証明しなければいけない場面が多くあるのです。

なお、同じくQuestel Cyber Patentが提供している知財業務ワークフローシステムである、CyberPatent Topam/WPを導入すれば、定型的な業務の負荷を減らすことも可能です。

【CyberPatent Topam/WP サポート内容例】

  • 出願受付
  • 出願依頼
  • 中間手続き
  • 特許事務所連絡

2.知財管理サービス

機能の特徴

  • 知的財産に関わる管理情報・評価情報・契約・経費情報などをクラウド上で一元管理

知財管理サービスは東芝より提供されています。

東レ、アシックス、セイコーエプソンをはじめとした各業界の企業での利用実績があります。

本システムでは、知的財産にまつわる様々な情報をクラウド上で一括管理できるので、社内の関連部署や特許事務所と関わる企業の知財部におすすめです。

そしてこれらの情報を

  • 特許検索サービスや文書分類・分析サービスと連携して利用できる
  • 社内の関連部署や、特許事務所といった第三者とクラウド上で共有できる

点も利用時のメリットです。

特許に関する情報量は膨大です。すべての情報を一つのクラウドに集約し円滑に関係者と共有することで、業務効率化を期待できます。

3.PatentManager

機能の特徴

  • 業務ごとのフォルダー管理
  • フォルダごとの公開範囲の設定
  • 発明ごとのワークフローチャートの作成

PatentManagerは、日本パテントデータサービス株式会社(JPDS)より提供されています。

特に、関連部署とのやり取りが多い企業の知財部向けのシステムです。

公開対象を限定してセキュリティ対策しつつ、社内での情報共有を円滑に行えます。

特許の出願・中間処理などを行える期間は特許法で定められており、指定の期間を過ぎてしまうと手続きを行えません。

本システムを活用すれば、多くの関連部署と漏れなく情報を共有しながら、各案件のスケジュールを正確に管理できるでしょう。

IP Drive, IP Vision

機能の特徴

  • 管理したい特許の件数に合わせてサービスの種類を選択可能

費用例

  • 基本管理システム(IP Drive) 月額8,000円/1アカウント
  • 初期費用不要

JPDSは特許管理システムとして、Patent Managerの簡易版であるIP DriveIP Visionも取り扱っています。

これらのシステムは、何かしらの特許管理システムを試しに導入してみたいと考えている企業・特許事務所におすすめです。

IP Driveは国内・外国の特許管理を、初期費用なし・1アカウントあたり月額8,000円で利用し始められます。

まずはIP Driveを導入し特許管理システムの使用に慣れた後、PatentManagerを導入するといった方法も、同じ提供先のシステムであればスムーズにできるでしょう。

4.KEMPOS

機能の特徴

  • 購入するシステム・ソフトを細かく選択
  • データ変換による外部出願ソフトとの連携

費用例

  • 国内特許出願管理システム 初期費用80万円
  • 年間サポート基本料金 10万円 

KEMPOSは株式会社ネットワークスより提供されているシステムです。

管理したい情報が明確である企業・特許事務所におすすめです。

具体的には、パッケージとしての提供ではなく

  • 国内特許出願管理:80万円
  • 外国特許出願管理:80万円
  • PCT出願取り込み:10万円
  • PCT中間取り込み:10万円

といったように管理すべき情報ごとにシステム・ソフトを導入できます。現在使っているシステムからの移行もサポートしているのも嬉しいポイントです。

また、企業向けと特許事務所向けのシステムがそれぞれ提供されています。

必要以上に費用をかけず一部業務を簡略化したい場合に、本システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

ホームページ上でその他の項目の見積も確認できますので、参考にしてみてください。

5.root ipクラウド 事務所版

機能の特徴

  • 期限管理(法定期限の自動計算、リマインダや代理人管理の期限などの設定)
  • レター管理(各種書類を自動発行)
  • 請求書発行

費用例

  • 初期費用 44万円~
  • 月額 16,500円~/1アカウント
  • 最大2ヶ月の無料トライアルあり

root ipクラウド 事務所版は、システム名の通り、特許事務所向けに作られた知財管理システムです。

特許事務所は企業よりも、事務処理が多くなりがちです。

定型的な事務処理をシステムに任せることで、正確な情報管理ができるだけでなく、人件費の削減も行えるでしょう。

まずは最大2ヶ月間の無料トライアルを利用してみてもよいかもしれません。

6.PALNET/MC6

機能の特徴

  • 研究データの分析支援

費用例

  • コンパクトプラン 300万円〜

PALNET/MC6は日立が提供するサービスです。

本システムは一般的な情報管理に加え、特許出願前・特許権利化後の両方をサポートします。

特に、細かな実験データを扱うことが多い企業に向いているシステムです。

出願前に役立つサポートサービスが、研究職のデータ分析を支援する、材料開発ソリューションです。

材料ソリューションは、研究職が入手したデータの分析を、日立のデータ分析の専門家が代行して行います。ですから研究職はデータの取得に専念できるでしょう。

権利化後のサポートとしては、特許年金の支払いや期間管理代行サービスを提供しているNGB株式会社と事業提携しています。

約200の国・地域の法改正・費用情報を常にアップデートできるため、納付手続きに不備が生じるリスクを抑えられます。

導入プランは3パターンあり、概要・費用・導入期間は下表の通りです。

プラン名概要費用導入期間
コンパクトプランスタンダードモデルをセット提供300万円〜2週間〜
セミオーダープランスタンダードモデルを要望に合わせカスタマイズ800万円〜3ヶ月〜
オーダープランフルカスタマイズしたプラン。
導入検討支援・追加機能開発などの対応も可能
3,000万円〜6ヶ月〜

7.知的財産総合管理プラットフォーム

機能の特徴

  • 既存の発明の保護から今後の発明の発掘まで一元管理

知的財産総合管理プラットフォームはANAQUAが提供しているサービスで、Honda、LIXIL、Panasonicなどの企業における利用実績があります。

ANAQUAはアメリカにて、2004年にコカ・コーラ、フォード・モーター、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの知財リーダーにより創設されました。

本システムは、既存の発明の保護から今後の発明の発掘まで一元管理したい企業におすすめです。

一般的な情報管理に加え、発明のパイプラインの精度向上・促進・拡大をサポートしている点が特徴です。

本システムにより、管理情報に基づく

  • アイデア創出
  • 発明者間のコラボレーション
  • 評価と実施判断

などのサポートを利用可能です。

部署・組織を超えた共同ワークスペースをインターネット上で作り、各研究者の新規アイデア・発明の評価を促進します。

生まれた新規アイデアに対し、先行技術検索による発明の特許性の判断や、技術ランドスケープによる競合他社特許との関係の評価を行えます。

8.PatentSQUARE

機能の特徴

  • AIを使った、周辺技術調査や社内分類・評価付与の効率化

費用例

  • コーポレート型 初期費用350万円〜・月額50万円〜

PatentSQUAREは、パナソニックにより提供されているサービスです。

各業界の企業や調査会社などによる利用実績があり、特許登録件数上位100社での利用シェアが最も大きいサービスです。

既存のデータ管理ではなく、第三者の把握・監視すべき特許を管理するために使用するのをおすすめします。実際、調査会社が本サービスの利用者の約2割を占めています。

膨大な量から自社の発明・発明と関連性の高い情報を抽出するのは時間と労力がかかるもの。

本システムは、発明の技術範囲を認定する際に欠かせない周辺技術調査時にAI技術を用いてサポートしてくれます。

ただし、業界・分野によって、キーワードから知財部員や研究者が必要としている文献を抽出できる精度にばらつきがあるでしょう。

30日間の無料トライアルが可能であるため、本システムと自社の相性を確認してみてもよいかもしれません。なお、無料トライアル後のプランごとの費用は下表の通りです。

プラン名契約単位初期費用月額
コーポレート型法人350万円50万円
ID限定型1ユーザー2.5万円2.5万円

Excel(エクセル)では不十分なのか?

そもそも、特許管理システムではなくエクセルで管理するのは難しいのでしょうか。

一見Excelは、社会人にとってなじみのあるうえ、追加ソフトの購入が不要なので、特許管理に使用するのが向いていると感じるかもしれません。

出願・保有特許が数十件であるならばエクセルでも管理できるでしょう。

しかし、ほとんどの企業・特許事務所の場合

  • 更新すべき情報量が多すぎる
  • 関連情報との連携が難しい
  • 管理のための膨大な人件費がかかる

といった理由から特許管理システムを導入するのが望ましいと考えられます。

更新すべき情報量が多すぎる

一件の特許出願に対して管理すべき情報は多大です。

  • 出願までに取得したデータ
  • 国内・外国出願書類
  • 中間処理書類
  • 経費
  • 関連する第三者の技術情報

エクセルの場合、それぞれのデータ保管先のリンクを設けられますが、特許出願日から権利が消滅するまでの20年間、そのリンクを正確に保管し続けるのは難しいでしょう。

特許管理システムを利用すれば、特許の公開状況といった情報を自動的にアップデートできます。

リンクが切れてしまったり、古い情報のまま保管されてしまったりするリスクを抑えられます。

関連情報との連携が難しい

特許出願は企業の知財部だけでは行えません。企業の研究・開発部門や特許事務所との連携が不可欠です。

特許出願や中間処理は、企業のあらゆるデータを駆使して対応します。

その際に、エクセルでは部門同士もしくは企業と特許事務所での情報共有に手間がかかります

エクセルを更新するたびに、パスワードを付与しメールで送付をしていては、業務効率が低下せざるを得ません。

特許管理システムを利用し、クラウド上で関係者同士の情報をリンクさせることで業務を効率的に進められます。

管理のために膨大な人件費がかかる

特許管理システムの利用により、業務量の減少に加え、人件費の削減を期待できます。

特許管理システムは、導入時のコストが100万円を超える場合も少なくありません。

しかし、その後のシステム管理費用と人件費(企業・特許事務所の担当者の年収)を比較した場合、システムを導入した方がコストを抑えられるでしょう。

たとえば年収500万円の社員2人ですべての管理業務を担うとしたら、管理業務にかかるコストは1ヶ月あたり約80万円となります。

人件費を抑えられ、ヒューマンエラーを防げる特許管理システムの導入を検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。

まとめ

特許管理システムは、単にファイル保管・スケジュール管理をするだけでなく、その機能は多岐に渡ります。

各システムはカスタマイズできますので、具体的にどのくらいの費用でどのようなシステムを取り入れられるのか、詳細をシステム提供先に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

一度導入したシステムを切り替えるには費用・時間がかかりますので、選定の際はパイロット運用の実施をおすすめします。

日々の業務効率化のために、みなさまの企業・特許事務所に合った特許管理システムを探してみましょう。

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