URAとは何か?詳しく解説します。

近年では、研究に伴う周辺業務として、研究費の申請や、獲得した研究費の管理、知財管理、共同研究の立案・交渉などを行うことがあります。また、法令を遵守することも求められています。さらに、これらの研究は、複数のグループで中長期的な計画に基づいて行われることもあるため、マネジメントも必要となります。

このように研究者が研究を行うためには、実験や論文発表以外にも多くのことを行う必要があります

そこで大学や研究機関では、研究者のサポートやマネジメントを行うための人材として、これらの周辺業務について専門知識を有する人材、すなわちURAを導入しています。

URAとは何か?

URA(University research administrator)とは、研究を行う職とは別の位置づけの人材を意味しています。一言で表すなら「研究に伴う周辺業務を支える存在」です。

すなわち、大学等において、研究者とともに研究活動の企画・マネジメント、研究成果活用促進を行うことにより、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化等を支える人材を意味しています。

そのためURAには、研究活動を理解するための専門技術の知識や、研究費を申請するにあたっての情報収集、研究計画におけるマネジメント能力などが要求されます。

URAの主な役割

URAの主な役割は、研究活動に伴って生じる多様な業務を行うことです。URAの担当範囲は各大学や研究機関で異なりますが、主な役割としては次の業務があります。

  • 研究プロジェクトの創成
  • 研究資金の獲得支援
  • 研究計画の管理
  • 知財管理
  • 国際連携

研究プロジェクト創成 

研究プロジェクト創成とは、有望な研究シーズを発掘し、研究の拠点形成や、研究プロジェクトの形成につなげる業務です。

一例としては、有望な研究シーズを発掘し、複数の学部をまたぐようなプロジェクトにする場合があります。

実際にあった事例としては、神戸大学において、経済経営研究所、経済学研究科、理学研究科数学専攻、システム情報学研究科による文理融合プロジェクトが立ち上げられています。

研究資金の獲得支援

研究資金の安定的な確保は、研究活動における重要な事項の一つです。研究資金を確保するためのルートとしては、①文部科学省が管轄する科学研究費(科研費)の確保と、②企業や民間財団等からの委託による研究費の確保があります。

科研費は、人文社会科学・自然科学を問わず、基礎から応用までの学術研究を対象とした研究費です。税金が財源であるため、研究者から提出される研究計画は、複数の研究者によって厳しく高い透明性をもって審査されるという特徴があります。

そこでURAは、科研費を申請する研究者に対して模擬ヒアリングを実施したり、科研費申請書のノウハウ提供をするなどのサポートを行っています。

また企業や民間財団等からの委託研究は、特定の課題について企業等(委託者)からの委託を受けて、委託者の研究費用を使用して研究者が研究を行い、その成果を委託者に報告します。

ここでもURAは、研究提案書類のチェックや、研究者に対する模擬ヒアリングを実施するなどのサポートを行っています。

研究計画の管理

研究計画においては、計画全体におけるスケジュール管理や資金面での管理も必要となります。また、中長期的な研究において中間報告などを行うこともあるため、中間報告に向けたスケジュール管理なども必要となります。実験データの改ざん・盗用などの不正行為について厳しくチェックすることも必要です。

URAは、こういった研究計画に関わるサポートも行っています。

知財管理

研究においては、成果物や、研究の段階で作成した試料などが特許等の知的財産となる場合があります。

これらの知的財産は、研究機関における成果となり、ライセンス料による収益につながることもあります。その一方で、共同研究の場合には、知的財産に関する契約などの業務も生じます。

そのためURAでは、特許権等の知的財産権の取得、ライセンス契約、共同開発の契約などのサポートも行っています。

国際提携

最先端の研究では、海外の研究機関と提携して、研究を行うことも多いです。また、これらの海外の研究機関との間で人材交流を行われています。

海外の研究機関との共同研究のサポートや、人材交流促進のための業務もURAの仕事のひとつです。

大学で行われているURAの紹介

URAについては各大学で特徴のある研究サポートが行われています。次に、大阪大学、筑波大学、関西大学のURAについて紹介します。

大阪大学

大阪大学では経営企画オフィスの部門の一つとして、URA部門が設けられています。大阪大学では、経営企画オフィスに、研究者に伴走し研究者の肌感覚に合った支援を行うURA部門と、大学の強みや弱みを各種データを用いたエビデンスベースで分析するIR部門とを設けており、URA活動とIR活動を有機的に結合させることで、研究力強化を中心とする経営力強化を推進しています。

経営企画オフィスについて|大阪大学 経営企画オフィス

URA部門では、以下の取り組みが行われています。

  • 研究推進施策の企画:国際的に優れた研究をより創出しやすくなる施策、研究費獲得を推進する施策などを企画します。
  • 横断型研究プロジェクト創成:異なる分野の研究者を結集し、大型プロジェクトの企画・推進を行います。
  • 研究動向の調査分析:有識者との情報交換や、各種公開情報の積極的収集と分析をします。
  • 研究力分析:学術的な分野での競争力を高めるための戦略を展開します。
  • 部局マネジメント力強化:各部局の研究力や経営力の分析などを通じて、部局マネジメント強化に資する取り組みを行います。
  • 企画支援体制の基盤強化:URA等の企画支援人材の育成、部局間・機関間URAネットワークの構築などを行います。
  • 外部資金情報等の提供・獲得に向けた取り組み:外部資金等の情報収集を行います。

筑波大学

筑波大学ではURA研究戦力推進室が設けられています。

URAとは | 筑波大学URA研究戦略推進室

URA研究戦力推進室では、大学事務職員や研究者が組織的に取り組むことが難しかった次の業務について取り組んでいます。

  • 学術・科学技術の動向や社会要請の分析、本学の研究成果・研究潜在力の把握、それらに基づく研究戦略・戦術の立案
  • 当該部局の研究環境向上のための立案・実施や、研究資金の獲得支援を通じた研究者のパフォーマンス最大化への貢献

関西大学

関西大学では研究推進部の中にURAが設けられています。

URA|研究推進体制|関西大学 研究推進部

関大大学のURAでは、次の取り組みが行われています。

  • 外部資金申請支援:外部資金の申請を効果的に支援します。
  • プロジェクト運営支援:外部資金、および大学の研究戦略に基づく各プロジェクトの特性に応じた運営を支援します。
  • 学術研究支援:学術研究、調査研究等の推進を支援します。
  • 産学官・知財マネージャ-:研究環境の整備と安全性を確保します。
  • 研究環境マネージャ-:研究環境の整備と安全性を確保します。
  • 成果公開促進担当者:研究成果の迅速かつ効果的な公開を支援します。

リサーチ・アドミニストレータになるには?

リサーチ・アドミニストレータは珍しい職種であるため、求人を探すのも難しいです。しかし、JREC-IN Portalというサイトには、リサーチ・アドミニストレータの求人が掲載されていることがあります。

募集要項を見る限りでは、採用に際して、研究または研究支援に係る業務経験を求められる傾向があります。また、リサーチ・アドミニストレータの研修受講や資格については必須ではないものの、採用に際しては有利に働くと思われます。

リサーチ・アドミニストレータについては、研修が科学技術振興機構(JST)によって行われています。この研修を受けることで、リサーチ・アドミニストレータになるための知識を習得することができます。

URA研修|研究開発マネジメント人材育成プログラム|JST

主な研修内容は、いずれも、研究力分析、研究開発評価、外部資金、研究プロジェクト、知的財産、コンプライアンス、研究広報、国際化推進となっており、研修時間は15~17時間程度となっています。

また一般社団法人リサーチ・アドミニストレータースキル認定機構では、URAの質保証に資する認定制度としてを実施しています。

認定URAの審査では、URA業務に携わっている年数や、行ってきたURA業務の内容等に基づいて行われます。

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