未経験者でもいけた!特許事務所へ転職するまでの道のり【転職成功談】

今回は特許事務所の勤務歴17年という、ベテラン弁理士に転職体験談をインタビューしました。

応募する求人の探し方・選び方はもちろん、特許事務所の筆記試験事情についても取材!

これから特許事務所を目指す人にはとてもタメになるお話が盛りだくさんです!

ちなみに今回インタビューしたIさんは、弁理士試験に1年弱の勉強で一発合格したというすごい経歴の持ち主でもあります。詳しくはこちらの記事で触れているので、ぜひ合わせて読んでくださいね。

経歴

名前:M.I

転職したときの年齢:26歳

前職:製造メーカー、プラント機器メーカー、勤務歴3年5か月

現職:弁理士 事務所勤務 勤務歴17年

応募した求人数:5~10

転職しようと思ったきっかけ

転職しようと思ったきっかけを教えてください!

大学の学部卒業後に一般企業に就職して3年ほどたったころです。就職した企業は業績も安定していて非常によい会社ではあったものの、漠然と、将来のために何か手に職をつけたい、食べていくのに困らなさそうな資格が欲しい、と思うようになりました。

前職に大きな不満があったわけではなく、むしろ良い会社だと思っていましたが、さらに上を目指してチャレンジしたい、というような、前向きな転職の決意だったと思います。

知財業界で働こうと思ったきっかけ・理由

現在弁理士として勤務されているとのことですが、どういった経緯で知財業界で働こうと思ったのでしょう

少し長くなりますが…。

最初は、数か月くらいの勉強で受かりそうかなー、程度の軽い気持ちで、行政書士の勉強をしました。3か月ほど、休みの日はずっと図書館に通って勉強しましたが、試験は見事に落ちて不合格でした。

でもその時に、「法律ってよくできてるなー、面白いなー」と法律(特に民法)の興味深さに目覚めたことを覚えています。

弁理士を目指すまでの道のり

さらに、ちょうど当時、弁護士の新試験制度、「法科大学院」の設立が話題となっていました。制度を調整している段階でしたね。

行政書士の試験に落ちていましたが、これは!と思いました。

法科大学院で勉強して、新試験制度にチャレンジして、「自分も弁護士になれるチャンスがある!」と感じて、法科大学院の入試対策講座を受けたりしました。

ただ、弁護士の新試験制度の内容がいざ固まると、5年のうちに3回受験できるが、合格できなければ再度単位を取り直さないといけない(再度法科大学院で履修しなければいけない)、ということでした。

仕事を辞めて法科大学院に入学しても、5年で合格できなければまた0からか、と思うと、リスクがとても高い、と感じ、また闇に入ってしまいました。

確かに、その内容だとハードルが高いですね。ここから、どうやって弁理士という職業にたどりついたのですか?

このとき、まだ、弁理士という資格はあまりよく知りませんでした。目にはしていたものの、スルーしていたような感じだと思います。そんなあるとき、ある資格情報誌の記載で、「弁理士」という資格を強く意識するようになりました。

確か、法律の知識、理系の知識、コミュニケーション能力が高いレベルで求められる資格、理系の弁護士、というような書きぶりがされていたと記憶しています。その書きぶりに強く惹かれました。

これまでの理系の知識も活かせるし、法律も扱う資格、ということで、紆余曲折はあったものの、ここで、弁理士を目指そう、と固く決意するに至りました。

弁理士を目指すのであれば、実務をしながら勉強したほうが絶対に早い!ということで、転職も決意しました。

求人が見つからない?転職情報の見つけ方

知財業界の求人の探し方を教えてください!

転職当時は当然弁理士の資格は有していませんでした。弁理士の求人はあったように思いますが、無資格者の求人を探すのにはとても苦労しました。

インターネットで調べると、特許事務所で勤務する人たちが「特許技術者」と言われたりすることがなんとなく分かりましたが、ネット上の転職サイトでは、「特許技術者」で検索しても求人は皆無だったように記憶しています。

ハローワークに行ったりもしましたが、「特許技術者って何ですか?」と言われる始末でした。説明してもよく理解してもらえず、ハローワークでも求人は探せませんでした。

い、一体どうやって転職情報を探しだしたのですか…?

特許事務所のHPの求人ページから直接応募する、特許事務所に直接問い合わせる、ということを行いました。

本当は地元の北陸で転職先を探したかったのですが、北陸の特許事務所では求人を探せませんでした。HPで求人を出しているところはありませんでしたし、そもそもHPも無かったり。直接電話して問い合わせたりもしていましたが、「今、求人はしていません」と全て断わられました。

求人を探せたのは、東京、大阪、名古屋の首都圏に限られました。

応募先の決め方について

応募する求人はどうやって決めましたか?

立地で大まかに絞って、応募先を決めました。

当時はまだ独り身でしたので、正直勤務先はどこでも良かったといえば良かったです。そうはいっても、やっぱり地元北陸とのアクセスが良いところがいいかなー、と考え、名古屋大阪に絞って、特許事務所を探しました。

まずHPがあるところ、そしてHPで求人があるところ、をピックアップしました。その中で、事務所の規模や、専門分野のマッチング性などを考慮して、応募しました。

一般企業(大企業)からの転職で、逆に大規模事務所にはあまり興味が持てず、小規模~中規模の事務所を探しました。

具体的な転職活動について

実際の転職活動について教えてください

転職活動期間は1か月ほどでした。実はすでに前職の会社は辞めていて、実家に戻って派遣で働きながら転職活動を行ってました。半導体工場の機械オペレーターの仕事で、2交代制でした。

特許事務所の面接を受けるために、夜8時から朝8時まで半導体工業で働いて、そのまま寝ずに名古屋、大阪まで車を飛ばして面接を受ける。面接を受けた足でそのまま帰り、また夜勤、とか、そういった生活が1か月ほど続きました。正直、さすがにきつかったですね(笑)。

面接を通して分かる、事務所の「持ち味」

面接の際に、事務所の中を案内してくれたり、業務の内容を紹介してくれるところもあって、これはとても参考になりました。また所長自らが面接を行うところがほとんどでしたので、事務所の雰囲気、所長の人柄、経営方針、などを感じ取ることができました

ただ、悠長に選べる身でもないと思い、「内定を頂いたところに行こう」という感じではありました。

そして、名古屋の今の勤務先から内定を早くに出して頂けて、就職(転職)を決めました。

転職に伴う「準備」

転職するにあたってしたことは?

転職が決まってからは、基礎的な勉強はするようにしました。具体的には、知的財産法に関する基本書などは読むようにしました。

また、実家を出て再度一人暮らしになるため、家電など必要な生活品を調達しました。幸い、住むところについては社宅を用意頂けたので、住まいを探す手間は省けました。

後は移動手段ですね。

移動手段というと、車やバイクのことでしょうか?

はい。北陸では、車の生活が当たり前なのですが、名古屋では当面車はいらないだろうと思い、乗っていた車を友人に譲って処分しました。

ただ、なんらか移動手段も無いと困るかなー、ということで、自動車学校に通って自動二輪の免許を一応とりました。自動二輪の免許の取得は楽しかったですね。結局、ペーパードライバーになっていますが。

未経験者は気になる!筆記試験について

特許事務所への転職となると、筆記試験が課されることもあると思いますが…

事務所によっては、筆記試験が課されるところもありました。自分の場合は、英語の特許公報の文章を和訳する、という試験がありました。辞書は貸与されました。

ただ、筆記試験らしい筆記試験はこれだけです。

特許事務所への入所試験として、どのような試験が課されるかについては、当時調べても全くといっていいほど情報はなく、本当に未知数でした。ですので対策のしようがなく、自分の場合は、試験対策としての勉強などは行いませんでした(行えませんでした)。

情報がないと、どうしようもないですものね。
未経験者に優しい筆記試験のようで、なによりです…!

自分が経験した試験についてさらに紹介しておきますと、他には、日本語の特許公報を読んで説明する、という試験もありました。

この試験は、特許公報を読んで理解し説明できる状態になったら、試験担当者(事務所の所長弁理士でした)に声をかけて、特許公報に記載された発明の内容を口頭で説明をする、というものでした。

どのくらい時間をかけて良いか時間が決められているわけではなく、自分のタイミングで試験が進みますので、戸惑ったことを覚えています。

試験後に所長弁理士から聞いたところでは、この試験は、正確な理解力を問うことに加えて、文書を読む速さ、理解の速さ、を見ている、ということでした。やっぱり、特許事務所だと大量の文献を正確に読まないといけない、ということだと強く意識させられた試験でした。

こういった試験を通して、未経験者に求められているスキルが見えるのは、貴重な機会ですね。

別の事務所では、少し変わった試験がありました。数字の列が並んでいて、ひたすら隣合う数字同士を足し算して下に答えを記入していく、という試験でした。規定の時間が過ぎると次の列に移動します。10分間ほどひたすら計算しました。

新卒採用の試験でよく見る、クレペリン検査に似ていますね!

そうです、そんな感じの試験でした。

集中力や正確性(スピード)を見る試験かなー、とは思ったのですが、本当のところは分かりません。

ただ、実際、10分間高い集中力を保ってスピードを緩めることなく計算していくのは、思った以上に相当にきつかったです。途中、やっぱり集中力が落ちて、計算を進められる量が減って、列ごとに、計算量にムラが生じていました。

やはり多少の計算ミスも生じていたかもしれません。終わった後はとてもぐったりしました。複数の事務所の試験を受けましたが、一番疲れた試験項目でした。

複数の試験を受けた身として、ぜひ後進にアドバイスをください!

これから特許事務所への就職や転職を目指される方の試験対策としては、SPI試験対策や、特許公報に慣れておく(特許公報を数件でもいいので読み込む)、といったような対策はしておくと良いでしょう。

他には、余裕があれば、高校の理科(物理、化学、生物)、英語を簡単に復習しておきましょう。また、大学等での研究テーマ、研究内容について、説明できるようにしておくとさらに良いです。

前職(メーカー)と知財業界の違い

前職と知財業界の違いについて教えてください

現職では、入ってまず強く感じたのは、「コミュニケーションの機会が少ない」、です。メインの業務は出願書類の作成になります。依頼者と発明の内容について詰めたあとは、ただひたすら書類作成をもくもくと進める、といった感じです。その書類も、簡単にできるわけではなく、一語一句検討吟味して、発明をどう表現すべきか大いに苦悩しながら作成を進めていくわけです。

1日の勤務が終わって、「あれっ、そういえば今日誰とも話してないや」ということも多々ありました。

ただ人間関係はとても良く、飲み会の場とかでも、ありがちな「会社の悪口、上司の悪口」みたいなものが一切無くて、「なんていい環境なんだ」と感動したのを覚えています。

職場の雰囲気、空気感はいかがですか?

前職では、雑談なんかも交わしながら仕事をする、という感じでした。コミュニケーションをとる機会も多く、和気あいあいとした雰囲気もあったと思います。北陸という地方柄もあるのか、のんびりした雰囲気というか。

メーカーと特許事務所では、業務環境自体もかなり違うイメージです。

そうですね。私自身は設計部門でしたが、製造メーカーでしたので当然、製造部門(工場)もあります。ですので、勤務時間・休憩時間などはきっちりしていました。従業員はチャイムで動く感じですね。

チャイムにしたがって休憩をとったり、というスタイルは、自分はあまり好きではなく馴染めませんでした。

特許事務所のリアル事情

今の職場の印象や感想を教えてください

まず、何より、人間関係は良く、働きやすいと思います。良い意味で、みな「大人」だと感じます。サバサバした感じといいますか。

いずれにしても、人間関係で悩んだり疲弊したりすることはあまりなく、業務に集中できる感じです。

人間関係で疲れないのは、とても良い職場ですね!

特許事務所って、やっぱり、事務所によって雰囲気が全然違ったりすると思います。良くも悪くも、所長の人柄や雰囲気に影響を受けやすいというか。そういう意味では、実際に入るまで、どんな雰囲気なんだろう、と本当にビクビクでした。

でも入ってみると、みな優しくよくしてくれましたし、陰口、悪口、不平不満、みたいなものを(あまり)聞くことがありませんでした。今でもさほどはありません。

もちろん皆人間なので、感情を持っていて、感情が表に出ることもそりゃありますが、全体的にはとても良い雰囲気だと思います。

自分と同じように一般企業を経験して転職で入った、という人も大多数で、そういった点でもなんとなく空気感が合うというか、そんな感じもあります。

今後のキャリアプランについて

今後のキャリアプランを教えてください

長く実務を行ってきました。まだバリバリ実務を行う年齢ではありますが、だんだんと、後進の指導、育成にも軸足を置いていきたいと思っています。

後進の指導・育成を行いながら、自身もさらに勉強して、知識・スキルを高めていきたいです。国際的な資格が欲しいと考えています。

最後に、これから転職する人にアドバイスをお願いします!

転職というのはある意味チャレンジだと思います。チャレンジしたいという気持ちがあれば、ぜひチャレンジして欲しいと思います。

チャレンジせずに終える後悔は大きな後悔になります。それよりも、チャレンジしたほうが100倍マシです。

積極的なチャレンジ精神を大事にして欲しいと思います。

本日はありがとうございました!

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