定年後も働ける?特許調査員になるためのステップと仕事内容

「特許調査員ってどんな仕事?」
「特許調査員になるにはどうすればいいの?」

「特許調査員」という仕事は、聞き馴染みがない人の方が多いかもしれません。「サーチャー」とも呼ばれるこの仕事は、特許を出願するうえではなくてはならない仕事のひとつなんです。

この記事では、特許調査員になるためのステップおもな仕事内容について詳しく解説していきます。

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特許調査員(サーチャー)とは

特許調査員とは、文字通り「特許調査をする人」を指します。

おもな仕事内容は、特許庁からの依頼で「出願された特許に対して、過去に同一または類似の技術がなかったかを調べること」です。

では、なぜ同じような特許の有無を調べる必要があるのでしょうか?

その答えは特許の取得要件にあります。

特許を出願するときに求められるものは「新規性」と「進歩性」。この2つが満たされていないと特許権を取得することはできません。

つまり、同じような特許がすでに存在していると特許として認められないのです。

特許出願等統計速報」によると、特許庁に出願される件数は毎月2万件ほどといわれています。その膨大な数の特許出願について、1つ1つ調査するのが特許調査員の仕事です。

また特許庁とは別に、民間企業からの依頼で特許を調査する仕事もあります。こちらの仕事内容については、後ほど詳しく解説していきますね。

特許調査員の年収

あまり求人情報で見かけることのない特許調査員。やはり、いくらくらい稼げるのかは気になりますよね。

求人サイトの調査記録によると、特許調査員の年収の相場は、およそ450万円ほどです。(参考:indeed給与調査「特許調査員」)

実際のところは、知財業界の経験の有無や調査の件数次第で相場よりも多く稼ぐことが可能です。

求人情報のなかには「報酬基本給+歩合給+賞与」で年収800〜1,000万円という募集もあります。歩合給というところがポイントになりますね。

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特許調査の種類 4つ

ひとくちに特許調査と言っても、調査が必要となる場面は複数あり、目的に応じてリサーチ内容が変わってきます。

民間企業からの依頼で行う特許調査の種類は、以下の4つに分けられます。

  1. 技術動向調査
  2. 先行技術調査
  3. 侵害防止調査
  4. 無効資料調査

ひとつずつ解説します。

1.技術動向調査

技術動向調査のおもな目的は「技術開発を始める前の事前調査」です。

技術開発を進めるうえでは、最新の技術動向を把握しておくことが重要になってきます。

競合他社がどんな特許を申請しているのかを知ることで、市場のニーズや流行りも掴めます。

2.先行技術調査

先行技術調査は出願前調査ともいわれており、「これから出願しようと計画している技術が、すでに他者(他社)から出願されていないかを調査する」のが目的です。

せっかく時間と費用をかけて出願しても「新規性」が損なわれていれば、特許出願は拒絶されてしまいます。出願リスクを回避するうえでも先行技術調査は欠かせないでしょう。

3.侵害防止調査

侵害防止という言葉どおり、「自分たちの開発する製品や商品が、他者(他社)の特許を侵害していないかどうかを調査する」のが侵害防止調査です。

自社開発中の製品の一部が、「じつは競合他社の特許技術だった…」ということを未然に防ぐのが目的です。

4.無効資料調査

「他者(他社)の特許権を無効化するための調査」が無効資料調査です。

たとえば、競合他社から「特許権を侵害している」と警告されたケースがあるとします。このケースでは、相手の特許が有効かどうかを判断しなくてはいけません。

じつは、特許権の及ぶ効果範囲は制限を受ける場合があり、これを「特許請求の範囲」といいます。

簡単な例をあげると、「着脱可能な飲料水の蓋」に特許権が付与されていた場合、「固定式の蓋」や「ペンケースの蓋」などには特許権の効果が及ばない可能性があるのです。

その判断をするための材料を調査するのが、無効資料調査の目的になります。

特許調査員になるためのステップ

では、実際に特許調査員として仕事をするためにはどうすればよいのかを解説します。

特許調査員になるためのステップは次の4つです。

  1. 特許調査会社への入社or登録
  2. INPIT研修受講
  3. INPIT試験
  4. 特許調査員(サーチャー)登録

流れにそって順番に解説していきます。

ステップ1.特許調査会社への入社or登録

まずは特許調査会社に「入社」もしくは「登録」をするところから始まります。

いきなり入社?と思われるかもしれませんが、もちろん特許調査員の仕事がすぐにできるわけではありません。

特許調査員として働くためには、以下の条件が必要になります。

「独立行政法人の『工業所有権情報・研修館』が実施する調査業務実施者研修を終了すること」

ちなみにこの工業所有情報・研修館は「National Center for Industrial Property Information and Training」の頭文字をとって「INPIT」ともいいます。

通常は特許調査会社からの斡旋を受けて、この研修に参加します。

特許調査会社の求人情報には、研修へのサポート体制を記載している会社もあるので、入社する前に必ず確認をしておきましょう。ここでは、その一例を紹介します。

A社求人情報より抜粋

【業務従事に必要な条件】
独立行政法人の『工業所有権情報・研修館』が実施する調査業務実施者研修を終了することが入社の必須条件となります。

  1. 研修は年4回(4~5月、7~8月、10~11月、1~2月)
  2. 研修は東京(虎ノ門)で行われます
  3. 研修期間は約2ヶ月、平日10時~18時(遅刻、欠席厳禁)
  4. 研修合格率80% (弊社でのサポート体制があります)
  5. 研修費用24.9万円は弊社で負担致します
  6. 面接応募~研修受講~入社までの期間は最短で3~4ヶ月となります

ステップ2.INPIT研修受講

次のステップは「調査業務実施者研修に参加」です。

INPIT研修を修了し、最後に行われる試験に合格する必要があります。

研修にかかる期間はおよそ2ヶ月受講費は22万円ほどかかります。なお費用については、調査会社が負担するケースがほとんどです。

この期間中に、専門知識や検索システムへの理解などを深めていくことになります。

ステップ3.INPIT試験

研修が終わったら、いよいよ試験です。試験は2回の筆記試験と技術面接があります。

市販のテキストや過去問がないので、研修中に配布されるテキストをよく読み込まないといけません。

試験の難易度は高いのでは?と、つい身構えてしまいますが、意外にも本試験の合格率は75%と比較的高いです。

これは研修の受講前に、特許調査会社からの事前補講や予備面接などの指導フォローがあるのが大きいかもしれません。

ステップ4.特許調査員(サーチャー)登録

試験に合格すると、正式に「特許調査員」として登録されます。

これでようやく、特許調査会社で調査員として業務に従事できることになります。

しかし専門性の高い業務になるので、一人前になるまでには1年〜3年ほどの期間が必要になるといわれています。

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特許調査員のおもな仕事の流れ

次に気になるのは「特許調査員としての仕事の進め方」ではないでしょうか。

特許調査会社での仕事内容を以下の流れ沿って紹介していきます。

  1. 調査の担当を割当
  2. 特許内容を調査
  3. 調査結果を報告

1.調査の担当を割当

正式に特許調査員になった後は、特許庁もしくは企業から案件を請け負っていくことになります。

月にどれくらいの案件を請け負うかは、上司(会社)と相談して決めていきます。

歩合制を採用している場合、この件数次第では多くの収入を稼ぐことが可能です。ですが、慣れないうちは月4〜5件ほどのペースで業務に慣れていくことをおすすめします。

2.特許内容を調査

この特許内容の調査こそが、サーチャーの腕の見せどころです。

まずは調査対象の技術内容を、特許公開情報などの文献から理解しなくてはいけません。得意な業種などがあると理解が早いかもしれませんね。

そして専用のシステムやサイトを使い、類似の特許がないかを検索・スクリーニングしていきます。膨大な数の特許から特定の情報を引き出し、精査していくのは根気や正確性が求められます。

3.調査結果を報告

調査結果が精査できたら、その結果を報告書にまとめます。

最後にWeb会議ツールなどを用いて、特許庁の審査官に報告書の内容を説明して完了となります。

育成期間中の数ヶ月間は、特許調査会社の上司も会議に同席することが多いので、まずは落ち着いて対応することが大事です。

シニアもOK!?気になる特許調査員の求人情報

特許調査員は50代60代のシニアの方も活躍中です。

求人情報を覗いてみても、応募資格に年齢の記述が無いものがほとんどです。その中には、「定年が69歳の3月末まで。以降は1年毎の請負契約が可能」という求人案件もありました。

フレックスタイム制や在宅ワークができるケースもあり、働きやすい環境が整っている職場が多い印象を感じます。

長年、研究開発に従事していた方なら専門知識や実務経験も豊富です。特許調査員なら、その知識や経験を定年後でも十分に活かせるでしょう。

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まとめ

特許調査員になるためのステップや仕事内容について解説しました。

専門性の高い仕事なので、シニア技術者を積極的に採用する調査会社も少なくありません。エンジニアのセカンドキャリアとしても、魅力的な内容になっているのではないでしょうか。

「これまで培ってきた専門知識を活かしたい」、「特許文献を見るのが好き」、という方は特許調査員の求人情報を覗いてみてください。

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