特許庁への就職 審査官になるには

特許庁とは、特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願、商標登録出願の審査・権利付与を行う省庁です。

特許庁では、特許、意匠、商標の審査をする審査官と、制度の企画・立案や海外政府との交渉・協力、中小・ベンチャー企業等に対する支援などをする事務職員が働いています。

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審査官とは

審査官とは、特許庁へ出願される特許、意匠、商標の審査を行う国家公務員です。

審査官はさらに、特許担当、意匠担当、商標担当で分かれており、令和4年度時点で、特許担当が1,662人、意匠担当が50人、商標担当が175人在籍しています。

審査官としての業務

審査官としての主な業務は、特許、意匠、商標の審査です。

特許では、出願されたアイデアを権利として認めるに足るか、新規性、進歩性、先後願、記載要件等について審査を行います。

新規性、進歩性では、先行技術文献の調査を自ら行う場合もあります。先行技術文献の調査は国内のみならず外国も行うため、英語の読解力も要求されます。

また意匠でも特許と同様、先行意匠と同一又は類似、容易創作性、先後願、記載要件等について審査を行います。

商標は特許・意匠とは違った点、識別性や先願先登録商標と同一又は類似であるかについて審査を行います。

審判業務について  

審判業務については、審判官が行います。審判官になるためには、審査官として一定の経験を積む必要があります。

審査・審判以外の業務

審査・審判以外の業務としては、

  • 外国の特許庁との意見交換
  • 外国から来た特許庁職員の教育(途上国支援)
  • 法改正における説明会の講師(知的財産行政に関する業務)

等があります。

外国から来た特許庁職員の教育に関しては、近年、東南アジアの国の審査官が日本で研修を受ける、ということが行われています。

また法改正における説明会は全国各地で行われること、特許、意匠、商標等の法改正はおおよそ2~3年毎に行われることから、かなりの負担になります。

審査官になるには?

審査官になるための試験は、特許担当、意匠担当、商標担当で、それぞれ異なっています。これらの担当のうち、特許担当と商標担当の場合には、国家公務員試験に合格していることが必須となります。

※なお、今回の記事では、特許庁の入庁に関連する事項を中心に書いているため、国家公務員試験については触れていません。

採用情報 | 経済産業省 特許庁

特許担当の場合

特許担当の場合、国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験・院卒者試験)の技術系区分に合格していることが条件となります。

この技術系区分とは、

  • 総合職試験(大卒程度試験)…「政治・国際」「法律」「経済」「人間科学」「教養」以外の区分
  • 総合職試験(院卒者試験)…「行政」「人間科学」「法務」以外の区分

をいいます。

この試験に合格し、その後の面接試験にパスした人が審査官として採用されます。

なお採用人数については、2018年以降で毎年34人から42人(内、女性11から16人)採用しています。

意匠

意匠担当の場合、特許庁で行う「特許庁意匠審査職員採用試験」(試験区分:意匠学)を受験し、合格する必要があります。この採用試験は、2021年度から、以下の内容で実施されています。

  • 第1次試験(専門試験、多肢選択式40題):デザイン概論、工芸概論、材料学、色彩学、美学・美術史、図学、立体把握
  • 第2次試験(専門試験、記述式6題):デザイン概論、工芸概論、材料学、色彩学、美学・美術史、立体把握
  • 第3次試験(人物試験):専門性及び適応力についてのグループ討議、個別面接

この採用試験は、国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)に相当する試験です。また、採用人数については、2018年以降で毎年1、2人ですが、採用の無い年もあります。

商標

商標担当の場合、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)の行政区分に合格していることが条件となります。

採用人数ですが、2018年以降で毎年4人から12人(内、女性2人から6人)採用されています。

最初は「審査官補」として採用される

無事に特許庁に採用された場合、最初は審査官補しての任用になります。審査官補から審査官になるための条件や年数は、特許担当、意匠担当、商標担当でそれぞれ異なります。

特許担当の場合、審査官補として4年間の実務経験を経ることにより、審査官への受験資格を得ることができます。

また意匠担当の場合、学業等の経験に応じて、入庁から2~4年間の実務経験を経た後、審査官に昇任することができます。

さらに商標担当の場合、原則として入庁から4年間の実務経験を経た後、審査官に昇任することができます。

特許庁の採用にまつわる疑問

次に、特許庁の採用にまつわる疑問として、学歴、年収、仕事のハードさ、について、お伝えします。

学歴は関係あるのか?

採用と学歴の関係ですが、特許担当、商標担当は、国家公務員試験に合格していることが条件となるため、これらの担当と学歴との関係はないと思われます。

ただし特許担当の場合、特許が機械、電気、IT、化学といったふうに技術分野が分かれているため、専攻学部によっては採用予定の枠とマッチせず採用されにくくなる、ということはあると思われます。

また意匠担当の場合、採用試験の科目が専門性に特化しているため、出身大学もある程度限定される傾向があります。

年収はいくら?

審査官の年収は、平均で600~700万円と言われています。また初任給は法律で定められており、総合職の大卒で227,640円、院卒で259,200円です。

俸給表(人事院)

※審査官は専門行政職の俸給表に順ずる

国家公務員なら仕事がキツイ?「やめとけ」は本当か

審査官の仕事は、出願書類の審査がメインとなりますが、その中でも負荷の高い業務の一つとして、先行技術の調査と、調査した先行技術に基づく新規性・進歩性の検討があります。

ただし最近は、先行技術の調査については外部機関に委託するものが大半で、審査官は新規性・進歩性の認定を中心に行うという形式がとられています。

また審査官の作成した拒絶理由通知書等の書類は、公開されて誰でも閲覧することができるため、仮に審査の内容が不十分であった場合には、その不十分な箇所が公開される、という心理的ストレスもあります。

こちらのインタビューでは、実際に特許審査官として働かれている方に「働きやすさ」や「仕事のキツさ」について取材しているので、審査官を目指している方はぜひご覧ください!

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