エクセルで特許管理はできる?

特許業務における重要な仕事の一つとして、管理業務があります。

管理業務の内容は主に、請求書の発行や入出金等の金銭管理と、各作業の期限管理です。

しかし特許の期限管理には以下の特徴があるため、独特の難しさがあります。

  • 期限管理をする案件の数が、多いと数百件にもなる
  • 管理する法定期限が、1ヶ月~数年までと多岐に亘る
  • 法定期限が多岐に亘るため、後から入ってきた業務を先に処理する等、案件処理の順番を変更することが多くなる

今回は、このような特徴のある特許管理がエクセルで可能なのか、解説します。

特許管理の重要性

結論から言うと、特許管理を適切にしないとクライアントが不利益を被るリスクが高まります。

特許管理で注意すべき点としては、特に以下の2点が挙げられます。

  • 管理している期限は法律に定められている(法定期限)なので、期限の延長が難しい。また期限の延長ができる場合でも、所定の法的手続や費用が必要となることが多い
  • 法定期限を徒過した場合、徒過した手続によっては特許を取得できなくなる

法定期限を徒過した場合、特許の取得が出来なくなる等の損失をクライアントに与える可能性があります。また法定期限の延長をした場合でも、費用負担の増大という不利益が生じます。

ですから特許管理では期限の徒過を防ぐための漏れの無い期限管理が重要です。

エクセルによる管理のメリット&デメリット

一般的に特許管理は、データベース(エクセル又は専用の特許管理システム)を用いて行います。

エクセルによる管理のメリットは、費用を抑えられる点にあります。

専用のデータベースを使用する場合には、導入する際の購入費用+メンテナンス等の費用が生じるのに対し、エクセルではこれらの費用はほとんど発生しません。そのため、特に2~3人の職員で経営している特許事務所等では、エクセルによる管理は大きなメリットとなります。

一方でエクセルによる管理は、自分でデータベースを作りこむ必要があり、データベース作成のための工数がかかる点がデメリットです。

筆者の経験では、件数が100件を超えるとエクセルで管理することが負担となりました。

また審査請求期間、拒絶理由通知に対する応答期間など、期間の異なる案件が多くなると、エクセル上で使用する関数が増え、データベース作成の工数が増大しました。

さらに法改正などにより法定期限に変更があった場合には、都度自分でデータベースを修正する点も負担になる点です。

エクセルにおける、期限管理の注意点

管理業務において注意するべき期限はいくつかあります。

法定期限、書類作成期限、現地代理人期限のそれぞれで意識しておきたいことを紹介します。

法定期限の管理について

特許管理業務において、法定期限の管理は非常に重要な仕事です。

しかし以下のように主な法定期間に限っても、期間は30日から3年と幅広く、さらに期限の起算日もバラバラです。

  • 審査請求期限(出願から3年以内)
  • 国内優先権、パリ優先権の優先期間(出願から1年以内)
  • 拒絶理由通知に対する応答期間(原則として、拒絶理由通知の発行日から60日)
  • PCT出願の国内移行期間(優先日から2年6ヶ月以内)
  • 1~3年目の特許料納付期間(特許査定から30日以内)

期間も起算日も異なる案件をエクセルで管理するなら、いくつか工夫をする必要があります。

  • シートごとに管理内容を分ける
  • 関数を利用し、例えば出願日を入力すると自動的に審査請求期限日が表示されるようにする
  • 条件付き書式を利用し、アラーム機能を付ける

さらに外国出願をする場合には、各国によって審査請求期間や拒絶理由通知に対する応答期間等の期間が異なるため、この点についても管理の際に注意する必要があります。

書類作成期限

書類作成期限で注意する点は、プレスリリース等での発表により出願内容が公知となる日や、外国出願の際の翻訳作業期間の管理です。

原則として特許出願はその内容が公知になる前に書類提出する必要があるため、公知となる日が決まると出願期限の日も決まります。

また出願書類の翻訳には通常1ヶ月程度を要するため、パリ優先権の優先期間よりも2ヶ月程前には翻訳に着手する想定で明細書の締切を決める必要があります。

現地代理人期限

外国出願をする場合、現地代理人は、審査請求の期限や拒絶理由通知に対する応答期限等の期限よりも前(法定期限の1か月前程度)に、現地代理人への依頼期限を設定することが多いです。

そのため外国出願をする際には、現地代理人への依頼期限を含めて、エクセルのシートに反映させる必要があります。

特許管理システムの使用によるコスト

特許管理システムを使用した場合、エクセルの使用よりも少ない工数で特許管理を導入することが可能ですが、費用面でその分高額となる傾向にあります。

例えば、筆者の周りで比較的使用されているCyberPatent Topamは、基本セットの料金が1アカウントあたり月額25,000円です。

ほかにはKEMPOSも、筆者の周りでは比較的使用されています。KEMPOSを使用した場合、国内特許出願管理80万円、外国特許出願管理80万円、年間サポート基本料金10万円の費用が生じます。

特許管理システムを導入する場合には、費用とシステム化による業務効率化を考慮する必要があります。

関連記事

特許管理システムを徹底解説!利用メリットから各システムの比較まで

知財専門の求人サイト「知財HR」

知財業界はいわゆるニッチ業界。そこで転職時に重要になってくるのが「どれだけリアルな情報を集められるか」です。

知財HRではそんなお悩みにこたえるべく、求人票にインタビューを掲載中!(※求人によります)

一歩踏み込んだ仕事内容、職場の雰囲気、求人募集の背景など…。たくさんのリアルな情報を知ったうえで求人へ応募できるんです。求人検索は下のボタンから↓↓↓