企業開発職と知財部の違いとは?転職検討時のポイントを解説

企業の開発職と知財部を比較してみよう

企業の開発職から、どのようなキャリアチェンジができるでしょうか。

他社の研究職・開発職はもちろんのこと、知財部も転職先の候補の一つと言えます。

開発職と知財部は性質が異なり転職が難しい、とイメージされている人も少なくないでしょう。

本記事では、ヘルスケア品・医薬部外品の開発業務と知財業務を経験した筆者が

  • 企業開発職と知財部の業務の違い
  • 知財部で活かせる開発職のスキル
  • 知財部に向いている人

についてまとめました。

メーカーの開発職からの転職を検討されている人は、ぜひ参考にしてみてください。

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主な業務内容は?

知財部に比べ開発職のほうが、業務内容が多岐にわたります

開発部の業務内容は様々です。

  • 製品企画
  • 製品仕様検討
  • 生産管理
  • 品質管理 など

製品企画では、製品コンセプトに関するアイデアを出し、0から1を生み出します。

その後は、消費者・自社の両方にとって有益な製品仕様に近づけるため、機能と品質を高めます。

その際、これまでにない新たな課題・解決手段を見つけたのなら、特許出願などを行います。

知財部が携わる業務は、製品開発において知的財産権が関わるプロセスのみです。

一人が担当する業務範囲・量は?

製品開発時に関わるプロセスが少ない一方、知財部のほうが開発職より担当する事業範囲が広い傾向にあります。

開発部の担当者は、部署に割り当てられた事業・領域における製品を複数担当します。

医薬部外品の開発部署で、ドリンク2製品とタブレットサプリ1製品を一人が担当するといったイメージです。

社内外から緊急度の高い問い合わせが頻繁にあるので、業務量・残業は常に多くなりがちです。

一方、知財部の担当者は、事業・領域をまたいだ幅広い業務を担います。医薬部外品・ヘルスケア品の両方の案件に携わるといったイメージです。

知財部の業務量は製品開発状況に依存するため、波があります。

他社・異業界で通用する専門性は?

知財部の方が開発職に比べ、業務の専門性が高いと言えます。

理由は主に以下の2つです。

  1. 製品開発における知的財産権に関わるプロセスのみ担当する
  2. 特許権をはじめとした法律に基づき業務を行う

開発職では、自社の規格やノウハウに基づき業務を進める傾向があるため、必ずしも他社でも通用するとは言えません。

一方、知財部では法律という共通のルールのもと働くため、転職後に即戦力となれるのが特徴です。

また、担当業務が製品開発の一部のプロセスに限定されるため、専門性を高めるための知識・経験を積みやすいです。

開発職として働く中で、専門性を高めたいと感じた場合は、知財部に関わらず、各プロセスの担当部署への転職・異動を検討されるとよいかもしれません。

知財部と開発職 違いのまとめ

ここまでご説明した、ヘルスケア品・医薬部外品に関する、開発職と知財部の比較は下表の通りです。

開発職知財部
製品との主な関わり方0から1を生み出す1の価値を高める
業務内容・範囲製品企画、製品仕様検討、生産管理、品質管理など多岐にわたる左記業務における、知財権に関わるプロセスに限られる
業務量常に多い波がある
1案件に関わる人・部署多い少ない
緊急(納期が短い)案件多い少ない
関わる業務範囲所属部署の担当製品のみ複数の事業にまたがる
他社で通用する専門性高くない場合がある高い

ぜひ、今後のキャリアを検討される際の参考としてみてください。

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開発職と知財部は、業務内容・範囲が異なります。

しかし、必要なスキルまで異なるわけではありません。

開発職の業務を通し身につけられるスキルのうち、

  1. データを分析・考察する力
  2. 物事を並行して進める力
  3. 周囲を巻き込む力

などは、知財部においても求められます。

1.データを分析・考察する力

データを分析・考察する力は企業知財部には不可欠です。

どんなに特許出願の明細書の作成が得意であったとしても、その基となる情報がなければ業務を進められません。

また知財部では、研究開発担当者が行った製品の評価結果から、発明のタネを発掘します。

この際、どれほどデータの分析・考察方法を知っているかで、発見できるタネの数が変わるのです。

2.物事を並行して進める力

開発の仕事は、1つの製品は企画段階で別の製品は試作段階、といったように異なるプロセスの業務を並行して進めるのがほとんどです。

ここで身につけられる物事を並行して進める力は、知財部でも重宝します。

なぜなら知財部も、複数の案件を並行してさばくスタイルの業務が多いから。

知財部では、3ヶ月以内に5件の特許出願を行う、というような働き方をしがちです。各案件の納期は長いのですが、それらを一度にこなすイメージですね。

このような働き方になる原因は、一度特許庁に提出した出願書類は大きな修正を行えないためです。

ですから、短期間で1件対応するのを繰り返すのではなく、数件を長期間かけて何回も見直しながら進めるのが好ましいのです。

3.周囲を巻き込む力

開発職の業務では、社内・社外に関わらず様々な人と連携して仕事をしてきます。

ここで身につけられる周囲を巻き込む力は、知財部で活かされます。

特許出願業務と聞くと、デスクで出願のための細かい書類作成を行うイメージの人も少なくないでしょう。

ところが実際は、関連部署とのこまめな関わりが欠かせません。

出願書類を作成するためのデータを入手してくれる研究開発職とのパイプの太さが、業務の質に大きく影響するのです。

知財部への転職が向いている人とは?

開発職と知財部では業務内容が異なるため、それぞれ向き不向きがあります。

知財部に向いている人の特徴として

  • 細かい作業を丁寧に行える
  • 想像力を発揮できる
  • 新しい物事の勉強を続けられる

などが挙げられます。

細かい作業を丁寧に行える

知財部では開発職以上に細かい作業を丁寧に行わなければなりません。

特許出願を行う際に作成する明細書は、一単語・一文にまで細心の注意を払う必要があります。

なぜなら読点の位置が異なるだけで、書類に記載した発明に含まれる技術範囲が変わってしまうこともあるのです。

作成した明細書を何度も読み返し、念入りなチェックをできる人が向いていると言えます。

想像力を発揮できる

書類の一単語・一文にも気を遣う必要がある一方で、単に正確なだけでは特許出願の業務は務まりません。

出願書類の作成時には、想像力も必要となります。担当者の数だけ、研究開発職から得られたデータの解釈・表現の仕方が異なるといっても過言ではないのです。

【想像力が役立つシーン例】

研究者が製品Xを、A→B→Cの順に製造する方法を発明したとしましょう。

シンプルに「製品XをA→B→Cの順に製造する方法」について出願しても、自社製品Xを特許権により保護できます。

ここで、上記に加え

  • 順番の入れ替え :A→C→Bの工程を含む
  • Bの省略 :A→Cの工程のみでも発明が成立する
  • Bのパターンを増やす :A→b(Bと類似)→Cの工程を含む

などの技術についても出願できるのではないか、と担当者が考えた場合、権利化できる技術範囲が広くなることがあります。

権利範囲が広くなれば、他人が製品Xの模倣をしにくくなります。

このように、基となるデータが同じであったとしても、担当者によって出願・権利化できる発明の技術範囲が異なる場合があるのです。

新しい物事の勉強を続けられる

知財部の仕事には、新しい物事への好奇心の強い人が向いています。

  • 国内・外国の法律
  • 製品・事業に関する技術情報

を常にアップデートしないと、仕事ができないからです。

また特許出願業務では、これまで世の中に知られていなかった発明を書類にまとめます。

そのため、ベースとなる技術を理解していなければ、作成するのが難しいでしょう。

間違いなく、引退まで勉強をし続けなければならない職種の一つです。

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まとめ

企業知財部と聞くと、気難しい法律の専門家集団だとイメージされる人も少なくありません。

実際のところ、知財部には開発職・研究職などのバックグラウンドを持つ、多彩な人材が集まっています。

開発職や知財部は、企業の将来の業績向上・経営継続のために不可欠な部署です。

本記事をご覧いただき、知財部に興味を持たれた人がいましたら、一度キャリアチェンジを検討してみてはいかがでしょうか。

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