「知財部がいらない」は本当!?知財部経験者がお答えします!

会社の知財部って何をしているの?
知財部はなくても良いんじゃないの?

そんな風に知財部のことを思っている方もいらっしゃるようです。

では本当に知財部は必要ないのでしょうか?

知財部経験者がその疑問にお答えします!

知財部は必要ない?

知財部はいらないと言われることがあります。

本当にそうでしょうか?

結論、企業にとって知財部は非常に重要です。

なぜならビジネスにおいて知財(知的財産権)が非常に重要だからです。

  • 事業や商品の中核を担うような、独自の技術は特許
  • ブランディングで重要な会社名・商品名・ロゴは商標
  • 書籍や音楽・キャラクターなどの創作物(コンテンツ)は著作権

守ることができます。

これらの知的財産の保護を疎かにしてしまうと、模倣され市場での競争力を失ってしまします。

現代のビジネスではどのように知財を管理し活用していくか考えること(知財戦略)は必須であると言われています。

知財戦略の根本を担う、知的財産権を権利化するのが知財部の役割なのです。

知財部って何をするところ?

知財部での主な業務は以下のようなものです。

どの業務もとても重要です!

知財部の業務内容について詳細は別記事で解説していますが、ここでは、知財部の業務をざっくり解説します。

◆知的財産に関する業務とは?知財部の仕事内容

飲料メーカーの知的財産部が舞台のドラマ「それってパクリじゃないですか?」も、知財部がどんなところか?が分かるのでおすすめです。 >5分ダイジェスト付解説記事を読む

発明発掘

知財部の業務として重要な発明発掘。

開発者が気づいていない技術研究・開発などの毎日の業務の中で生まれるアイデアを、見落とすことなく知財部は発掘していきます。

知財部が発掘しなければ、素晴らしい発明は埋もれたままになってしまうかもしれません。

出願・権利化

知財部では、開発者から発明内容を詳しく聞き取り、出願できる形に持っていくという業務があります。

また、出願した後にも、特許庁から類似の発明がある等の指摘を受けることが多く、これを解決して権利化していく業務もあります。

出願するのも権利化するのも、ただ文章を書けばよいというわけではなく、法律的知識、技術的知識、そして業務経験など、知財部は特別なスキルを必要とします。

調査

​​調査には、いろいろなタイミングで行う調査があります。

開発前、出願前、審査請求前には、先行技術の調査をおこないます。

また、開発中の技術や製品、販売している製品が他社権利を侵害していないかを調べる調査も行います。

他には、事業の障害となったり、障害になる可能性のある特許を無効化するための調査や、他社の技術や開発の動向を調べるための調査などがあります。

それぞれの調査は、調査の目的やテクニックが異なり、長年の経験と知識が必要とされる業務です。

知財部の業務は非常に重要!

知財部の業務はこれまでご紹介したように、とても重要なものとなっています。

知財部がいなくては、開発者が発明した素晴らしい技術を特許化するのはとても難しいのです。

そして、特許化できなければ、自社技術を守ることもできませんし、経営戦略に活用することもできません。

大手企業はこぞって知財部に力を入れている!

多くの大手企業は、経営戦略として、知的財産権の取得に力を入れています。

経営戦略に活かすためには、強い権利を取得しなければいけません。つまり、知財部の活躍が事業利益に大きく関わってくるのです。

以下に、知財部門に力を入れている企業をご紹介します!

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セイコーエプソン株式会社

セイコーエプソン株式会社においては、持続的な成長の継続のために、独自の高度なコア技術を最も重要な資産の一つとしています。

このコア技術を守るために、

  • 経営戦略
  • 事業戦略
  • 知財戦略

の三位一体の戦略をとっています。

また、特許を事業の高収益化に貢献するものとし、クロスライセンスでの他社実施許諾を認めたり、許諾をせず市場独占を図るものとに分けるなどの戦略も立てられています。

旭化成株式会社

旭化成では、知財戦略を外部に毎年報告するなどして、企業全体での知財活動を推進しています。

また、知財部門内に知財戦略機能を持っており、IPランドスケープをはじめとした経営層への事業判断材料として情報を提供しています。

知財部が作成するIPランドスケープは、知財部門の解析結果の精度を上げるために、知財部門だけではなく、事業部との情報交換が密になされています。

知財部がいらないと誤解される理由

知財部は、開発部門や営業部門のように商品がヒットした!売上が上がった!など目に見える実績を評価される部門ではありません

他にも知財部がいらないと誤解される理由はいくつか考えられます。

著者が企業の知財部にいた頃に耳にしたのは、

  • 知財部はコストがものすごくかかる
  • 知財部はどんな仕事をしているか分からない
  • 知財部の人はちょっと寄り付きにくい

など、残念ながらあまり良いとは言えない内容です。

この様なことが、知財部が誤解される理由となっているのかもしれません。

コストがかかる部署

知財部は開発部門のように、直接的に会社の売上や利益に繋げることが難しい部門です。

特許を出願するためには特許庁へ支払う出願費用の他、特許事務所に支払う手数料がかかります。

また、出願時だけではなく、権利化するまでの手続き、権利化した後の維持費など、1件の特許にかかる金額はとても大きいものになります。

沢山の費用をかけて権利化しても、ライセンス収入でプラスになっている企業はおそらくほとんどありません。

コストがかかる部門。利益を上げない部門。

そういうところから、知財部への必要性を低く感じるのかも知れません。

知財部の仕事内容が分からない

知財部門では、開発者からの提案や、発明を発掘して出願を行います。

一生懸命開発者が考えてくれた発明を出願し、そして権利化を目指します。

しかし、知財部では、出願してしまった後は知財部のみで対応を行うことが多く、開発者へのフィードバックはなかなかできないのが現実だと思います。

そうすると、開発者としては、

  • この前、出願した発明はどうなった?
  • 出願されたのか?出願できなかったのか?
  • 特許になったのか?
  • 他社からライセンス料はとれたのか?

など、疑問に思うことが多々出てきます。

実際、著者の勤務していた会社でもそういう問い合わせはよくありました。

苦労して考えた発明。

知財部へ提出したけど、どうなっているかわからない。

知財部は何をしている?

そういった、知財部の業務に対する疑問から、知財部はなにをやっている部署かよくわからないと言われることもあると思います。

開発者とのコミュニケーション不足

知財部は開発部門とは日ごろからコミュニケーションを取っておく必要があります。

普段のコミュニケーションの中から新しい発見があるかもしれませんから!

知財部の業務では、自社の開発技術について開発者へヒアリングしに行ったり、打ち合わせをすることがあると思います。

発明に興味のある開発者や、何度も出願をしている開発者であればスムーズに打ち合わせも進むと思いますが、そうでない開発者もいます。

忙しい開発業務の中、時間をとって知財部と打ち合わせをしたら、開発のことについて質問攻めにされて苦痛な時間になってしまったという開発者もいるかもしれません。

知財部の人たちと仕事をするのはちょっと嫌だなという、マイナスのイメージがついてしまうこともあります。

まとめ

知財部は必要ないのでは?と、思われることもあるようですが、これまで述べてきましたように、とても重要な業務を行なっています。

なんとなくの重要性を感じつつも、はっきりと実態がわからなかった知財部について、少しご理解いただけたのではないでしょうか?

知財部は、開発者が考えた新しい発明を、経営戦略にも活用できる価値のある特許にしていくために、日々業務に取り組んでいます!

企業において、ビジネスに勝ち抜くために、知財部はなくてはならない部門となっています。

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