特許事務所の仕事内容は?現役弁理士が解説します!
特許事務所というと、
”特許を出す仕事”ということはわかるけど、どんな仕事内容なの?
働いている人は弁理士だけ?
弁理士じゃなくても転職できるの…?
など様々な疑問があると思います。
特許事務所の仕事はあまりインターネットでも情報が無いので、知る機会も少ないのでは無いでしょうか。
本記事では現役弁理士が、特許事務所はどのような職場なのかということを簡単に説明いたします。
転職を考えている人は是非参考にしてみてください。
特許事務所の仕事内容を職種ごとに解説!
特許事務所とは、弁理士を中心にして、特許、実用新案、意匠、商標などに関連する業務を行う職場です。
特許事務所の仕事内容を職種ごとに分類すると、弁理士、技術者、翻訳者、事務スタッフに分けることができます。
弁理士
弁理士は、特許、実用新案、意匠、商標に関する独占業務を有しています。
クライアントからの依頼を受けて、主として、特許、実用新案、意匠、商標の出願手続きや中間処理手続きなどの権利化業務を行います。
このため、特許事務所では、弁理士が業務の中心的役割を担っており、クライアントの窓口になることも多いです。
弁理士以外のスタッフは、弁理士の指示を受けて、書類作成補助などの独占業務に当たらない業務を進めます。
どんな能力が求められる?
弁理士には、コミュニケーション能力、書類作成能力、英語力が求められます。
弁理士の業務では、クライアントからの依頼や悩みを引き出して理解することが必要なため、高いコミュニケーション能力が求められます。
特許明細書などの書類を作成するのも主な業務にあたるため、高い書類作成能力も必要になります。
また、外国出願を行う機会や外国のクライアントからの依頼を受ける機会があるため、英語力も重要となります。
技術者
技術者は、弁理士の指示を受けて、特許明細書などの書類の作成補助業務を行います。
つまり、技術者は、弁理士資格は持たないものの弁理士とほぼ同じ業務を行います。
どんな能力が求められる?
技術者にも、弁理士と同様、コミュニケーション能力、書類作成能力、英語力が求められます。
翻訳者
翻訳者は、弁理士の指示を受けて、特許明細書などの書類の和訳や外国語訳業務を行います。
どんな能力が求められる?
翻訳者には、語学力や技術的知識が求められます。
翻訳者の業務では、出願人の意図を損なわないように翻訳する必要があるため、書類を正確に、かつ忠実に訳す語学力が求められます。
特許明細書のような技術文書を訳す業務もあるため、技術的知識を有することが求められます。
事務スタッフ
事務スタッフは、弁理士の指示を受けて、クライアントや特許庁との連絡書類などの作成補助や期限管理業務を行います。
どんな能力が求められる?
事務スタッフには、事務処理能力、法律知識、語学力が求められます。
事務スタッフの業務では、一般事務スタッフと同様、高い事務処理能力が求められます。
事務作業にあたり、特許法などに規定されている期限や取扱いを考慮する必要があるため、法律知識が求められます。
また、外国のクライアントや代理人などへの連絡業務があるため、語学力も必要となります。
【規模別】特許事務所はどんな職場か
特許事務所は、大小さまざまな規模の事務所があり、規模に応じて職場環境も少し違いがあります。
大規模事務所
大規模事務所(所員100人以上)では、弁理士や技術者に加えて、翻訳者や事務スタッフなどがおり、業務が細かく分業されています。
大規模事務所では、組織が細分化されており、業務フローが概ね決まっているため、一般企業と同じような職場であることが多いです。
中規模事務所
中規模事務所(所員20から100人程度)では、大規模事務所に比べて、業務の分業の程度が小さいです。
中規模事務所では、組織が大規模事務所ほど細分化されておらず、業務の進め方がある程度所員の裁量に任されているため、フレックス・時短・在宅勤務など働き方に融通が利くことが多い職場です。
小規模事務所
小規模事務所(所員20人以下)では、所員数が少ないため、所長の色が事務所の雰囲気に反映されていることが多いです。
小規模事務所では、各所員一人一人が業務全般をこなすことがほとんどであるため、中規模事務所よりも所員の裁量に任される部分が多い職場です。
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特許事務所の主な取引先は?
特許事務所の主な取引先は、国内外の企業や個人発明家などの特許、実用新案、意匠、商標の出願・権利化を目指している法人や個人です。
特許・実用新案、意匠、商標の権利関係について争いごと(審判や訴訟)を有する法人や個人が取引先となることもあります。
特許事務所では、業務量を安定的に確保するために、特許、実用新案の出願・権利化業務を中堅メーカーや大手メーカーから請け負っていることが多いです。
特許事務所勤務にはどんな人が向いている?
特許事務所で働くのに向いている人の特徴を4つ紹介します。
- 好奇心がある人や新しい技術に興味のある人
- 調べもの、入力作業をすることや一人で業務が完結する業務が好きな人
- 期限にあわせてコツコツと作業するのが得意な人
- 英語力がある人
特徴その1:好奇心がある人や新しい技術に興味のある人
一つ目の特徴は、好奇心がある人や新しい技術に興味のある人です。
特許事務所では、特許や実用新案のような新技術に触れることになるため、そのような新技術に触れることに喜びを感じることができる人は、特許事務所に向いています。
特徴その2:調べもの、入力作業、一人で完結する業務が好きな人
二つ目の特徴は、調べもの、入力作業、一人で完結する業務が好きな人です。
特許事務所では、特許、実用新案、意匠、商標の出願書類や庁応答書類などを作成することが主な業務となるため、そのような業務が好きな人は、特許事務所に向いています。
特徴その3:期限にあわせてコツコツと作業するのが得意な人
三つ目の特徴は、期限にあわせてコツコツと作業するのが得意な人です。
特許事務所では、作成した出願書類や庁応答書類を、クライアントの希望期限や庁提出期限までに提出しなければなりません。
設定された期限に向かってコツコツ確実に作業を進められる人は、特許事務所に向いています。
特徴その4:英語力がある人
四つ目の特徴は、英語力がある人です。
特許事務所では、外国出願をしたり外国企業からの業務を請け負った際に英文を読んだり英語でメールや電話のやりとりが必要となる場合が多くなります。
そのため、英語力のある人は、特許事務所に向いています。
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特許事務所には未経験でも転職できる?
次の3つの特徴のいずれかを満たす人は、未経験でも転職できる可能性があります。
- エンジニアや研究開発経験のある人
- 事務経験のある人
- 英語力がある人
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特徴その1:エンジニアや研究開発経験のある人
一つ目の特徴は、エンジニアや研究開発の経験のある人です。
特許事務所では、特許・実用新案の出願・権利化を主な業務としていることが多いため、エンジニアや研究開発の経験のある人は、発明や考案の内容を理解する能力が高く、出願書類を作成する潜在的能力がある場合が多く、未経験でも転職できる可能性があります。
特徴その2:事務経験のある人
二つ目の特徴は、事務経験のある人です。
特許事務所では、設定された期限までに出願書類や応答書類を提出する業務が多いため、事務処理能力が高い人は、未経験でも転職できる可能性があります。
特徴その3:英語力がある人
三つ目の特徴は、英語力がある人です。
特許事務所では、外国出願をしたり外国企業からの業務を請け負う際に英文を読んだり英語でメールや電話のやりとりが必要となる場合が多いです。
そのため、英語力がある人は、未経験でも転職できる可能性があります。
特許事務所へ転職を考えている人へ、現役弁理士からメッセージ!
私は、メーカーのエンジニアとしてキャリアを積んだ後に特許事務所に転職し、技術者として業務をこなしながら数年かけて弁理士試験に合格し、現在に至っています。
私と同様の流れで技術者として特許事務所に転職を考えている人は、まず、自分が本当に弁理士になりたいのかどうかと自分が弁理士になって活躍する姿を想像できるかどうかが大切だと思います。
なぜなら、弁理士試験は難関試験であり、複数年受験をしなければならない可能性があるからです。
このため、私と同様の流れで特許事務所に転職を考えている人は、まずは、弁理士になりたいという決意と弁理士として活躍するというビジョンがあるかどうかを、自分で確認することが大切です。
一方、転職前から弁理士資格をお持ちの人は、弁理士資格を持たずに転職を考えている人とは異なり、弁理士として活躍するというビジョンがはっきりしていますので、事務所選びが重要になります。
事務所選びに際しては、労働環境の良し悪しがポイントになります。
具体的には、所長や事務所の雰囲気と合うかどうか、長時間労働が日常化していないかどうか、事務所経営が安定しているかどうか、業務量に見合った給料が得られるかどうか、などがあげられます。
このような要素を考慮して、自分にあった特許事務所を選ぶことが大切です。
また、翻訳者や事務スタッフとして特許事務所に転職を考えている人も、労働環境の良し悪しがポイントになります。
そして、特許事務所への転職を決意した人は、面接などで自分の特徴を精一杯アピールして、転職活動を成功させてください。
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特許事務所にて約20年勤務。
国内外の特許出願や中間処理を中心に、約2000件の案件を経験してきました。