特許事務の仕事内容は?特許事務所職員が解説します!
知財業界について調べたり、事務職の方が転職先を探したりすると「特許事務」という職業を見つけることでしょう。
特許事務の仕事内容は?
年収や残業事情はどんな感じ?
必要な資格やスキルはあるのか
そんな疑問に特許事務所勤務の筆者が解説します。
特許事務とは?どんな仕事内容の職業か
特許事務とは、特許事務所または企業知財部での事務仕事全般を担当する職業です。仕事内容は「一般的な事務仕事」と「特許事務ならではの事務作業」の2つに分かれます。
また特許事務は以下の3つに分けられますが、今回は国内事務について述べていきます。
- 国内事務…国内クライアントが日本特許庁に出願する際の事務担当
- 外国事務(内外事務)…国内クライアントが外国特許庁に出願する際の事務担当
- 外国事務(外内事務)…外国クライアントが日本特許庁に出願する際の事務担当
特許事務ならではの事務作業
「特許事務」という言葉があるように、一般的な事務仕事(電話や接客など)に加えて、特許等の一般的な事務仕事にはない特殊な仕事があります!
特許庁へ書類提出の業務
特許事務のメイン業務が、特許庁との書類やり取りです。弁理士が作成した知的財産の出願書類等を特許庁に提出します。
逆に、特許庁から送付された書類を受領するのも特許事務の仕事です。
期限管理
特許庁へ提出する書類またはお金を納付する期限を管理する業務です。
特許出願をする際には
- 意見書の提出期間
- 出願審査請求
- 年金納付
など、様々な期限が設定されています。日本の特許庁は期限に厳しいため、基本的に1日でも期限を過ぎてしまうと、権利化できるものもできなくなります。特許事務の仕事のなかで非常に責任のある業務の1つです。
また期限が近づくと、クライアントに手続きのリマインダーを送るのも特許事務の仕事です。通常は期日の1ヶ月前、1週間前等、複数回に分けてリマインダーを送ります。
出願書類等のチェック業務
特許庁へ提出する書類等の内容のチェック業務があります。
特許庁へ提出する書類は公的なものであるため、特許庁に提出する前に慎重に確認する必要があります。弁理士が作成した書類を最終チェックすることで未然にミスを防ぎます。
特許事務の仕事のやりがい
特許事務の仕事をしていて良かった!とやりがいを感じる瞬間を紹介します。
クライアントから感謝される
特許事務所における特許事務は、クライアントにとってその特許事務所のいわば窓口になります。その分、クライアントとも接する機会が増え、感謝されることも多いです。
権利化の一助となる
特許などの権利化をする上で、特許事務の仕事は欠かせません。特許権は、出願する側にとっての財産の一部になります。特許権のなかには億単位の価値があるものも存在します。特許事務は、そのような特許についても権利化の一助になります。
ミスを未然に防ぐ
特許明細書等は主に弁理士が作成しますが、特許庁に提出する前の最終的なチェックは特許事務が行います。そこで弁理士による記載ミスを見つけた場合、同じ事務所内でも感謝されることも多いです。
このように周りからの信頼を積み上げることで、自信がついたりスキルアップに繋げたりすることができます。特許事務の仕事を通して弁理士のサポートをするうちに、自然と特許出願に関する専門的な知識も身に付きます。
特許事務としての働き方【年収・残業・テレワーク】
給料事情
特許事務の年収は200万円〜500万円程度が目安となります。
もちろん経験や勤務地などの要因で左右されるのですが、外国語のスキルが高かったりすると高収入も狙えます。
特許事務所・知財部専門の求人サイトである「知財HR」では、特許事務の求人も多数掲載中!実際、特許事務として働く場合はいくらもらえるのか、チェックして見てください!
残業、在宅勤務といった働きやすさは?
特許事務はあまり残業が発生しない仕事です。とはいえ依頼が殺到したり、かけこみ出願の依頼が発生したりすると事務職も残業することになるでしょう。
とくに依頼人(企業)の決算期の月末は忙しくなりやすいです。
そして在宅勤務が可能かは事務所によります。ただしテレワーク可の事務所でも、転職直後はOJTなどの都合から出社がマストになっている場合も少なくありません。
ちなみに知財HRの場合、フルリモート可能という特許事務所が複数あるので、働きやすさを重視されている方はぜひ求人票を見てみましょう!
特許事務の仕事はきつい?忙しさは?
特許事務の仕事は一般的な仕事と比較して専門性が高いので、最初はしんどいかもしれません。しかし一度慣れてしまえば、格別難しいというものでもありません。ただ、閑散期と年度末の繁忙期とではだいぶ忙しさに差が出てきます。
未経験でも特許事務に転職できるか
特許事務の求人のうち半分以上が未経験の人です。未経験の人でもどんどんチャレンジできます。
特許事務の経験がなくても、一般的な事務作業からスタートし、徐々に知的財産に関する知識を身に付けることで、特許事務という専門事務を扱う人材にステップアップできます。
未経験の方は、そのような教育がしっかりとしている特許事務所にいくことをオススメします。
特許事務に必要なスキル・知識
特許事務の仕事は一般的な事務仕事とは異なる点があるため、必要な知識やスキルも少し異なってきます。ここでは以下の3つの点に絞って、詳しく解説していきます。
- 処理能力
- コミュニケーション能力
- 最低限の法律知識
処理能力
特許事務の仕事は忙しく、次々と多様な仕事が降ってくるため、即座に仕事をこなしていく必要があります。仕事の優先順位と量を見ながら、手早く処理する能力が求められます。
またベテランの人でも見たことがないような、初めて出てくる問題についても処理しなければなりません。特許事務の人は、問題解決能力も含めた処理能力が必要となってくるのです。その分、解決できたときは達成感を得られます。
コミュニケーション能力
とりわけ特許事務所においては、特許事務と弁理士とが二人三脚になって操業しています。弁理士およびクライアントと連携をうまく取っていく上で、コミュニケーション能力は欠かせません。
特許業界では、複雑かつ責任の大きい案件も多いので、細かに「ホウレンソウ」を心掛ける必要があります。また特許事務所は中小規模が多いことから、苦手な人やコミュニケーションが取りづらい人がいても回避しづらい傾向にあります。
仕事をうまく回すには、コミュニケーション能力がある人が向いています。
最低限の法律の知識
知的財産に関する法律として「特許法」「意匠法」「商標法」があります。これらには、権利を取得するうえでの手続きが記載されています。
もちろん弁理士がこれらの法律を網羅していますが、特許事務の人も最低限の権利化までの流れを知っておいたほうが、仕事がスムーズに行えたり未然にミスを防げたりしますし、事務所側(会社側)からしても重宝されるでしょう。
英語力はないとダメ?
冒頭でもご紹介したように、特許事務は更に「国内事務」と「外国事務」に分けることができます。
このうち外国事務を担当する場合は、外国語(主に英語)を使ったメールなどが発生するため英語力が必要です。特に業務で使うのは「リーディング」「ライティング」の力です。
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特許事務の仕事に向いている人
特許事務の仕事をする上で特に資格等は必要ありません。とはいえ人によって特許事務の仕事に向いているかは違いますので、ここでは特許事務に向いている人物像について解説します。
几帳面な人
特許庁に提出する書類を多く扱うため、内容、提出期限について細かなところまで気を使い、正確に仕事をする必要があります。また扱う書類の量も多いため、しっかりと机上やデスクトップを整理でき、書類や期限を管理できる几帳面な人に向いています。
マメな人
例えば、クライアントにリマイドする頻度であったり、期限管理されている案件の進捗状況を弁理士に確認したり、特許庁への提出書類の誤字脱字や記入漏れによく気付けたり等、マメな人は、ミスが少なく仕事に有利に働くと思われます。
マルチタスクが得意な人
特許事務の仕事は先ほども述べたように、仕事の種類が多岐に渡ります。したがって1日の中で同時進行でする仕事も多くなります。スピードと正確性が求められる仕事なので、集中力と細かさ、臨機応変さが重要視され、頭の切り替えが上手でマルチタスクが得意な人は、特許事務の仕事に向いています。
勉強の意欲がある人
法律は時代と共に変化しますので、常に新しい情報をキャッチアップし続けなければなりません。
これらの勉強も苦に感じず、向上心の高い人は、特許事務の仕事に向いているといえます。
特許事務の求人情報の探し方
特許事務の求人は大きく「公開求人」「非公開求人」の2パターンに分かれますが、特許事務の求人は公開求人が主流です。
特許事務の公開求人
特許事務の公開求人は求人サイト、ハローワーク、特許事務所のHP、SNSなどに掲載されています。
特に最近はTwitterをメインとした、SNSで積極的に募集側が情報発信をしています。求人を探している場合、気になる事務所のアカウントや求人情報を公開しているアカウントをフォローし、チェックしておきましょう。
求人は募集期間が設けられているものがほとんどです。
自分に合いそうな事務所を根気よくさがしましょう!
特許事務の非公開求人
非公開求人は、弁理士や特許技術者の募集が中心ですが、特許事務でも募集しているケースがあります。
非公開求人に応募するには、エージェントサービスに登録しておく必要があるので、自分に合いそうなエージェントをいくつか登録しておきましょう。
志望動機を上手に書くコツ
興味の惹かれる求人を見つけたら、応募するために志望動機を書いていくことになります。
志望動機を書く際は、これらの点を、ポジティブな表現・アピールに繋がる表現で書きましょう。
- 前職を辞めた・辞めたい理由
- 前職で得た知識やスキル
- ここの事務所を選んだ理由
- 知財業界について興味をもった理由
より具体的な書き方のコツはこちらの記事で解説しています。
特許事務所に就職するための志望動機は?特許事務職員が徹底解説します!
面接対策としてやるべきこと
面接対策としてやることは大きく4つ。ひとつめは質問への準備です。
志望動機、長所短所、失敗の経験、のような一般的な面接問題はきちんと答えられるようにしておきましょう。
ふたつ目の面接対策として、最低限の知財の知識を入れてください。知財について一切知らない状態で面接に臨むのは心象を悪くします。
特許事務の仕事はコミュニケーション能力も必須。的確な回答や相槌などが苦手な人は、事前に練習しておくとよいですね。
そして知財の仕事は「時間(締切)厳守」です。当たり前のことですが、遅刻は厳禁と肝に銘じておきましょう。
特許事務所に就職するための志望動機は?特許事務職員が徹底解説します!
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知財業界はいわゆるニッチ業界。そこで転職時に重要になってくるのが「どれだけリアルな情報を集められるか」です。特許事務所で働くなら「事務所の色」「所長の色」に合うかどうかも大切になってきます。
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理系大学院を卒業後、特許事務所にて働きながら社会人大学院に通って法学研究科を卒業。2021年にビジネス著作権検定上級に合格し、現在も特許事務所にて特許権等の権利化業務を行なっています。