女性の弁理士について【割合・働きやすさ・年収】
転職は誰にとっても一大イベントですが、なかでも女性は結婚・妊娠出産・育児などのライフイベントによる影響を受けやすいもの。
「やりたい仕事ができるか」「自分らしく働けるか」以外に「働きやすい環境か」も大きなポイントになるでしょう。
そこで今回は、女性弁理士の人数や働きやすさ、年収などを解説します。
弁理士の男女比は?
弁理士の男女比は、2022年4月時点で、84:16(男性84%、女性16%)です(男性:9,736人、女性:1,898人)。
また2013年度末の時点では、弁理士の男女比は、男性86%、女性14%でした(男性:8,743人、女性:1,428人)。
したがって、弁理士の男女比については、ここ数年で、女性の割合が少し増えているということがいえます。
他士業の男女比は?
一方で、各士業の男女比については、以下のようになっています。
士業 | 男女比 | 女性の割合 |
---|---|---|
弁護士(2020年3月) | 81:19 | 19% |
公認会計士(2021年) | 85:15 | 15% |
司法書士(2022年度末) | 82:18 | 18% |
ちなみに人数の内訳はこちら。
- 弁護士…男性:34,147人、女性:8,017人
- 公認会計士…男性:33,213人、女性:4,891人
- 司法書士…男性:18,673人、女性:4,234人
したがって、これらの士業の男女比と、弁理士の男女比との間に、大きな違いはないということがいえます。
男性・女性による業務内容の違いはある?
結論から言うと、特許事務所・企業知財部のいずれの場合も、男性弁理士・女性弁理士による業務内容自体の違いはありません。
特許事務所の場合、弁理士の業務は、出願書類の作成と、拒絶理由に対応する書類の作成が中心となります。また企業知財部で働く弁理士の業務は、これらの書類作成に加えて、特許事務所で作成した書類のチェック、出願や拒絶理由対応をする際の技術部門との打ち合わせが中心となります。
これらの業務は、担当者の技術・法律・語学スキルをもとに割り当てられることが大半であり、振り分けに際して、男性・女性であることはまず考慮されないです。
ただし、育児などの都合で残業ができない、などの理由を踏まえて仕事量などが決まることはあります。
女性弁理士の年収
一般的に女性弁理士の年収は、男性弁理士の年収よりも、100万円程低いと言われています。年収に男女差がある理由は、体力面での差や、家事・育児の負担という点で、男性弁理士の方が長い勤務時間になる傾向があるからです。
弁理士の年収は、30代で約800万円、40代で約900万円、50代で約1,000万円が相場です。ただし、特許事務所を経営している弁理士の場合、2000万円以上の年収を得ている方もおり、年収における上下の幅はかなり大きいです。
関連記事
職場は女性が働きやすい環境か
女性が働きやすい環境であるか否か、ということについては、特許事務所と企業知財部で多少異なる点があります。
特許事務所の場合
特許事務所の業務は個人で完結する内容が多く、職場でのコミュニケーションが非常に少ない、という特徴があります。つまり、同僚との人間関係がほとんどない、という事務所も多いです。
このような事務所の場合、例えば「育児で残業ができない」「急な休みを取ることがある」という状況を同僚に理解してもらうのは難しくなります。その分、上司が理解しているかどうか、が非常に重要です。
なお昇進や評価については、男性・女性による違いはなく、売上などの結果で判断されます。
知財部の場合
一方で、企業知財部の場合、職場でのコミュニケーションは、特許事務所よりも多いため、残業ができない、急な休みを取る、ということを同僚に理解してもらえる可能性は、特許事務所よりもあると思われます。
その一方で、昇進や評価については、必ずしも男女平等といえない会社もあるかもしれません。
結婚後や出産後のキャリア・働き方
結婚後や出産後のキャリア・働き方は、女性にとって重要なテーマの一つです。
とはいえ女性弁理士は、特許法といった知的財産法の専門知識を既に身に着けています。技術のスキル、英語を中心とした語学のスキルを身につけることにより、自分の描いたキャリア・働き方を実現しやすい、という傾向があります。
産休・育休は取りやすい?
産休・育休の取りやすさは、勤務先の人数(規模)によって変わります。
企業知財部や、大人数の特許事務所では、産休・育休中の代替が効くため、産休・育休は比較的取りやすい、という傾向があります。
その一方で、少人数(例えば、所員数10人程度)の特許事務所では、弁理士が1人少なくなるという事態に対して、弁理士を採用して対応せざるをえなくなることもあり、産休・育休をとることが難しい、という傾向があります。
仕事と子育ての両立
仕事と子育てを両立するなら、勤務時間の短縮や子供の体調不良により仕事を休む、ということが考えられます。
特許事務所の場合、テレワークや勤務時間の短縮など、フレキシブルに対応してくれるところも多いです。また、法定期限のある案件を他の弁理士よりも減らすといった対応をする特許事務所もあります。
企業知財部の場合は、他の部署と同様の扱いになるため、社内規定に基づいて、勤務時間の短縮などの対応をするところが多いです。
関連記事
転職・独立はできるのか
生活スタイルの変わる出産のタイミングで、転職を考えることもあるでしょう。将来独立して、ママさん弁理士として活躍したい人もいるはずです。
弁理士という仕事は、産休・育休を挟んでも比較的容易に転職・独立できます。
なぜなら知的財産権を扱う業務は、法律・技術・語学のスキルが必要となる専門性の高い業務であり、実務能力のある弁理士は貴重な人材であるからです。
私の知人でも、出産前は特許事務所に勤務し、産休・育休を経て企業知財部に転職した女性弁理士がいます。
女性の弁理士試験 受けるタイミングはいつ?
女性は出産という一大ライフイベントを迎える可能性がありますから、いつ弁理士試験を受けるか、悩むことがあるかもしれません。
女性の弁理士試験に関しては、私の知っている範囲では、以下のタイミングで受けていることが多いです。
- 大学生
- 30歳前後
- 産休中
いずれの年代の方も、出産後の仕事と家庭の両立や、出産後のキャリアを気にしながら、弁理士試験の勉強をしていました。
特に、30歳前後の女性受験生は、結婚と出産の時期があるため、弁理士試験にかけられる年数はあまりない、という意識で、必死に試験勉強をしていました。
私の知人にも、産休中に弁理士試験を受験して合格した方もいますが、この方は約1年という短期間の勉強期間で弁理士試験に合格しています。これは少々特殊なケースかもしれませんが、時間という制約を意識し勉強している人は多いです。
参考
女性会計士活躍促進協議会の取組について | 日本公認会計士協会
知財専門の求人サイト「知財HR」
知財業界はいわゆるニッチ業界。そこで転職時に重要になってくるのが「どれだけリアルな情報を集められるか」です。
知財HRではそんなお悩みにこたえるべく、求人票にインタビューを掲載中!(※求人によります)
担当案件の分野はもちろん、職場の雰囲気、求人募集の背景など…。たくさんのリアルな情報を知ったうえで求人へ応募することができます!求人検索は下のボタンから↓↓↓
特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。