未経験から特許翻訳者になるには?【スキル・年収・将来性】

特許翻訳とは?

特許翻訳とは、特許や商標などの知的財産権に関する様々な書類を翻訳する業務を指しています。

主に日本語の書類を英語に翻訳する(和文英訳)業務と、英語の書類を日本語に翻訳する業務(英文和訳)があります。

文学作品を訳す場合などと違い、特許翻訳では意訳をする場面が非常に少ないです。なぜなら意訳をすると、

  • 原文と翻訳文で技術内容が相違するリスク
  • 各国の特許法や商標法などにおいて、拒絶理由になるリスク

を負うことがあるからです。そのため特許翻訳は基本的に直訳になり、翻訳した文章が読みにくくなることもある、という特徴を持っています。

翻訳する書類

特許翻訳で翻訳する主な書類としては、以下の3つがあります。

  • 出願書類
  • 拒絶理由通知書・補正書・意見書
  • 現地代理人のレター

特許の出願書類は願書、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書で構成されていて、このうち明細書、特許請求の範囲、要約書を翻訳をするケースが多いです。なお特許の出願書類は50ページ以上になるものもあるため、非常にボリュームのある翻訳になります。

拒絶理由通知書は、出願した書類が各国特許庁で審査され、登録の基準を満たしていない場合に通知される書類です。そして補正書・意見書は、この拒絶理由通知書に対応する際に作ります。補正書は出願書類を補正する書類、意見書は拒絶理由通知書に対する応答の説明をする書類です。

最近、拒絶理由通知や補正書・意見書については、各国特許庁などで機械翻訳を提供しているため、英文和訳の翻訳依頼は以前より減少しています。

現地代理人のレターは、外国の特許事務所との間で、出願や拒絶理由の対応など様々なやりとりをするレターです。翻訳のボリュームとしては1~2ページのものが大半です。

特許翻訳者の将来性は?仕事がなくなるか

近年機械翻訳の精度が向上していることもあり、将来的に特許翻訳の仕事は減少すると思われます。

そのため、これから特許翻訳の仕事を目指すならば、翻訳スキルの他に、技術分野の知識や、特許法・条約などの知識を生かすことも必要になるでしょう。その一方で、これらの知識を持っている特許翻訳者については、仕事がなくなることはないと思われます。

特許翻訳者のなり方【資格・就職先・年収】

特許翻訳者になるための必須資格というものはありません。特許翻訳者になるためには、一定レベルの技術理解力と英語力を身につけて、就職先のトライアルに合格する必要があります。

資格なしでも可

特許翻訳者になるための資格は特に不要です。しかし知的財産翻訳検定試験、技術英語能力検定(旧工業英検)などのスコアや資格は、特許翻訳者としてのスキルを一定値証明できるため、就職で有利に働きます。

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就職先の候補

就職先としては翻訳会社が中心となりますが、大手の特許事務所でも翻訳者を採用することがあります。また、実務経験を積んだ後には、フリーランスとして働くという選択肢もあります。

翻訳会社・特許事務所のどちらも、出願書類、拒絶理由通知書・補正書・意見書、現地代理人のレターの翻訳が大半になるため、業務内容に大きな違いはありません

また、いずれの就職先においても採用段階で翻訳のトライアルをすることが多く、このトライアルで翻訳の正確さとスピードをチェックされます。

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年収の目安

特許翻訳者の年収は、実務未経験者ですと400万円前後となるのが一般的です。

ただし特許翻訳者の年収は、案件の難易度や仕事量によって大きく変動するため、数年間の実務経験で600万円前後となることもあります。

また特許翻訳者として独立した場合には、案件の難易度や仕事量次第ですが、年収1000万円を超えることもあります。

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特許翻訳に必要なスキル

さきほど解説したように、特許翻訳者になるためには資格よりも実際のスキルが大切です。特許翻訳に必要なスキルとして特に重要なのが、以下の3つです。

  • 技術内容の理解
  • 英語の学習
  • 特許明細書の理解

後ほど説明しますが、技術内容の理解は翻訳をする際に非常に重要な役割を担っており、特許翻訳に転職する際に十分に勉強をしておく必要があります。

技術内容の理解

特許出願の場合、技術分野が機械・電気・化学と分かれているため、特許翻訳者として取り扱う=理解するべき技術分野も機械・電気・化学と分かれることが多いです。

機械・電気であれば物理を、化学であれば化学を、高校~高専レベルで理解できるようにする必要があります。

技術内容に対する知識が不足していると、日本語で書かれた出願書類などの内容を理解できず、ひいては翻訳が困難となります。

英語の学習

翻訳という仕事の性格上、英語スキルは必須です。ただし特許翻訳は独特な点が多いので、以下のような学習方法を取り入れて「特許翻訳に必要な英語スキル」を磨くと良いでしょう。

  • 書籍による自習
  • 翻訳講座の使用
  • 特許明細書の検討

書籍による自習

特許翻訳の学習でおすすめの書籍をご紹介します。なお値段は全て2023年1月時点の税込価格です。

こちらは多くの特許翻訳者が参考書として使用している書籍で、たくさんの例文と詳細な解説がかかれています。かなりボリュームのある本ですが、非常に勉強になる書籍です。

この書籍は、明細書や特許請求の範囲を翻訳する際の注意点について詳しく書かれています。また、日本語特有の英訳しにくい表現についても説明されています。

注意点としては、意訳をする点について踏み込んだ内容となっているため、この点を取り入れるか否かについては、勤務先やクライアントの意向を確認する必要があります。

この書籍は、日本語の特許請求の範囲を英語に翻訳する際の注意点について、詳しく書かれています。さらに、米国における特許法上の取り扱いを考慮した翻訳についても学べる、お得な一冊です。

翻訳講座

翻訳講座として、以下の3つを紹介します。

サン・フレアアカデミーでは、初級者用の講座から上級者用の講座まで幅広く用意されています。また通学、通信の2タイプがあるので生活スタイルに合わせた受講が可能です。

レバレッジ特許翻訳講座では、物理や化学の基礎知識や、日本語の特許明細書を勉強する機会が用意されているため、技術の知識に不安がある方におすすめです。

特許翻訳バベルでは、Zoomやeラーニングを用いた講座を受講し課題を提出するという講座になっています。そのため、通学での受講が難しい方でも、受講することが可能です。

検定・試験

特許翻訳との親和性の高い検定・試験としては、知的財産翻訳検定試験と、技術英語能力検定(旧工業英検)があります。

知的財産翻訳検定試験は、特許翻訳者の能力を測定するための資格として位置づけられていて、1~3級に分かれています。2級3級では技術分野に関わらず共通の試験ですが、1級は法務、電気・電子、機械、化学、バイオテクノロジーと分野ごとに分かれています。

もうひとつの技術英語能力検定は、英語文書作成力を技術英語の3C(Correct, Clear, Concise)の視点で評価する検定です。内容としては、英語論文を執筆するレベルから研究者をめざす学生のレベルまで、5つのクラスに分かれています。

特許明細書の理解

特許翻訳者になるためには、日本語と英語の両方で書かれている特許明細書を数多く読みこみ、技術内容や文章表現に慣れる必要があります。

そもそも特許明細書は、特許法上の枠組みの中で権利範囲を考慮して技術を説明する書類ですから、必ずしも読みやすい文章とは限りません。しかし特許翻訳では、このような文章の意味を理解したうえでの翻訳が求められるのです。

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まとめ

特許翻訳者になるためには、技術内容と、特許法や条約の知識を身につけ、翻訳の質と量を高めることが要求されます。したがって高い専門性を要求される職種であり、特許翻訳者となった後も常に勉強する必要のある職種です。

しかし身につけた高い専門性を使うことができるという点で、やりがいのある仕事であるともいえます。

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