企業の知財部員の年収を上げるには?
仕事をする上でやはり気になることと言えば、年収ですよね。
企業の知財部員の年収は新卒からどのように上がるのか、転職し特許事務所といった別の場所で働く場合の年収はどのくらいか、など知財に関わる仕事の年収について、気になる点は少なくないでしょう。
今回はそれぞれの職種・役職・年次における年収や、年収を上げるために必要な知識・スキルをまとめました。
企業の知財部で働かれている方にとって、今度のキャリアプラン検討時の参考になればうれしいです。
企業の知財部員、平均年収はいくら?
企業の知的財産部に所属した場合の年収は、実務担当者(一般社員)か管理職かによって差があります。
実務担当者(一般社員)の年収
企業知財部における実務担当者の年収は、以下のように年次によって変わる傾向があります。基本的には、年次が上がるほど年収も高くなります。
年次 | 年収 |
---|---|
新卒~5年目 | ~500万円 |
5~10年目 | 500~1,000万円 |
一般的な社会人の平均年収は、20代で320万円程度、30代で420万円程度ですので、平均を上回る額と言えます。
管理職の年収
企業知財部における管理職の年収は、以下の通りです。
役職 | 年収 |
---|---|
課長職 | 1,000~1,200万円 |
部長職 | 1,200万円~ |
管理職に昇進すると、実務担当者に比べ大きく年収が上がります。
同じ企業内で年収UPを目指す際、管理職は目標の一つとなり得ます。
ただし各役職の年収が企業ごとの水準に影響を受ける点は、知財部も例外ではありません。ですので今の会社での年収アップを目指すなら、自社の給与体系を確認しておくと良いでしょう。
年収を上げるために必要な知識・スキルは?
経験を積むごとに年収は上がりますが、それだけでは限界があるでしょう。
そこで、さらなる年収UPを目指すために実務担当者および管理職にそれぞれ必要な知識・スキルをご紹介します。
実務担当者に必要な知識・スキルは?
実務担当者には
- 特許法をはじめとした産業財産権に関する知識
- 語学力
などが求められます。
これらを客観的に評価できる指標として「弁理士資格」「TOEIC」があげられます。
弁理士資格
年収の観点からは、弁理士資格の取得が望ましいです。
資格を取得できるほどの知識があれば、仕事をさらにスムーズに進めることができ、社内評価が上がることを期待できます。社内評価が高くなれば管理職への昇進もしやすくなりますね。
また、キャリアを歩む上で資格の有無が年収に大きく影響する場合があるのです。
たとえば、企業の知財部から特許事務所に転職した際の年収は
- 弁理士として勤めると400〜1,000万円
- 弁理士資格を持たない特許技術者として勤めると300〜700万円
と差があります。
資格取得までに短くても1年の期間、スクールに通う場合50万円程度の費用を要しますが、転職時の年収の上がり幅を考慮すると取得する価値が十分にあるでしょう。
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TOEIC
英語力の指標として主に扱われるのがTOEICです。転職時に内資系企業であれば730点以上、グローバル企業であれば800点以上を求められる傾向があります。
知財業界の転職市場は比較的活発で、転職者が少なくありません。転職予定がなくても一定のTOEICの点数を取得しておくと、知財部内における自身の評価を保持しやすいでしょう。
英語以外に習得をしておくことが好ましい外国語として、中国語があげられます。
募集要項において、英語ほどではありませんが中国語に関する記載が見られます。
管理職に必要な知識・スキルは?
管理職には
- 部内・部外において円滑にコミュニケーションを取れる力
- 部・課の考えをまとめ上に伝える提案力
などが求められます。
管理職と実務担当者は、立場・役目が大きく異なります。
実務担当者の頃に、管理職の立場を考え部下として仕事を進めることが、管理職に必要なスキルを身につける近道かもしれません。
上記に加え「事業戦略」「マーケティング」「財務」に関する知識の習得も管理職としてキャリアを歩む際に必要です。
年収UPのため、スキマ時間での勉強が欠かせません。
【企業内弁理士解説】知財のお仕事ドラマ「それってパクリじゃないですか?」
日テレで放送されたドラマ「それってパクリじゃないですか?」は知財部員も納得するくらいリアリティある作品。管理者(作中では熊井部長)の仕事を、このドラマで見てみるもの面白いかもしれないですね。各記事には5分ダイジェスト動画も載せているので、まだ作品を見ていない人でも楽しんでお読みいただけます。
>>1話の解説記事はこちら >>熊井部長が活躍する回はこちら(5話、9話)
年収アップのために転職するときの注意点
年収アップをするための方法として、転職も挙げられます。
しかし知財に関する仕事は、営業職などに比べ求人数が少ない点に注意しなくてはいけません。望むポストが空くタイミングと自身が転職したいタイミングが一致しない場合も少なくないのです。
ですからキャリアアップのために、常に転職可能な状態の維持をおすすめします。
転職予定がなくても転職サイトにて
- 自社の年収が他社に比べ高いのか
- 高い給与が提示されている募集ではどのようなスキルを求められているのか
などを確認しておくのもひとつの方法です。
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企業の知財部以外での年収&働き方
知財の知識が活かせる職場は企業の知的財産部以外にも、以下のような場所があります。
- 特許事務所
- 特許庁
- 独立
どの組織においても、経験を積んだ実務担当者の年収は1,000万円程度です。とはいえ職場や役職によって、給料事情も働き方も変わってきます。
もしも転職して企業知財部以外の職場に行くことを検討している人は、あらかじめ各職場の特徴を知っておきましょう。
特許事務所の給与&働き方
特許事務所で働く方の年収は、弁理士の場合は400〜1,000万円、特許技術者の場合は300〜700万円が目安です。企業の実務担当者とほぼ同等の年収と言えます。
- 事務所の規模
- 専門とする分野
- インセンティブ制度
なども月給の多さ少なさに影響しますので、転職時には詳細をよくチェックしましょう。
特許事務所で年収UPを目指すなら、弁理士資格の取得が必須です。
また、共同経営者に昇進すると年収が上がります。
共同経営者は事務所長に次ぐ役職ですので、企業の管理職より高い収入を得られることもめずらしくありません。ただし、ポスト数が企業の管理職よりも明らかに少ないため、共同経営者を目指す難易度は高いです。
働き方に関して言うと、服装や時間の融通が効いて個人の裁量で働ける場合が多いという特徴が挙げられます。
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特許庁の年収&働き方
特許庁で働く方の年収は、600〜700万円程度です。
役職により年収は異なり、任期付き審査官として働くと700〜1,000万円程度、審査官補助として働くと500〜600万円程度です。
なお特許庁に入庁し審査官・審査事務に7年以上従事すると、実務修習を経て弁理士資格を取得できます。
知財業界での長いキャリアを想定するなら、特許庁からスタートする経歴は、年収以外のメリットも大きいのです。
そして特許庁といえば、ホワイト企業としても有名です。退職者が選ぶ「辞めたけど良い会社ランキング2022」、周囲にすすめたい転職先企業ランキングをはじめ、いろいろな良い会社ランキング・ホワイト企業ランキングに入っています。
- 仕事柄リモートワークが取り入れやすい
- 縦割り組織の部分はあれど、裁量が大きく風通しがいい
- やりがいを持って仕事ができる
独立すると年収は増える?
企業の知財部からキャリアをスタートし、最終的に独立する方も少なくありません。
独立するなら「特許事務所の設立」「知財コンサルタント」といった働き方が一般的。
いずれもハイリスク・ハイリターンの働き方で、数千万円稼げる人もいれば、新卒以下の収入になる可能性もあります。
特許事務所長の年収は?
特許事務所の所長の年収は、数百万円〜数千万円です。
安定した年収を得られるまでに期間を要し、事務所を設立したては年収が新卒と同程度となる場合もあります。
独立直後は以下のような、苦しい状況からスタートせざるを得ません。
- 事務所の規模が小さい
- 雇用する弁理士が少ない
- 知名度が低い
- クライアントが少ない
独立前には十分なスキル・資格、見込まれるクライアント数などに加え、資金の準備が欠かせないでしょう。
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知財コンサルタントの年収は?
知財コンサルタントの年収は、特許事務所長と同じく数百万円〜数千万円です。
コンサルタントを行う企業を設立するのか、フリーランスとして個人で働くのかにより、年収は異なります。また自身が行う業務の種類も年収に影響します。
【知財コンサルタントが担う業務の例】
- 企業の研究開発のデータに基づく発明の発掘
- 取得した特許権の評価
- 市場や企業の動向調査
- 知財戦略の策定 など
近年では、企業・特許事務所内のコンサルティング業務を行う部署が増えています。
独立後に円滑に業務を進めるため、企業・特許事務所内で経験を積むのが望ましいでしょう。
まとめ
今回は、企業の知財部をはじめとした知財に関する仕事の年収とその上がり方や、年収UPのために必要な知識・スキルをまとめました。
近年、知財に関する仕事の種類・幅が広がっています。
それに伴い、各職種・個人が任される仕事の内容が多様になり、それぞれの年収差は広がるでしょう。
今後キャリアを歩む中で、本記事が年収の目標を検討する際の参考となればうれしいです。
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企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。