企業の知財部への転職理由や志望動機は?
企業の知財部への転職理由を整理しよう
商品・サービスを提供する企業は、特許・意匠・商標をはじめとした知的財産権を保有しています。
企業の中で、これらの知財権を管理しているのが知財部です。
知財部の仕事は専門的でありながら、様々なバックグラウンドを持った人が集まっており、転職者が少なくありません。
本記事では、知財部の仕事の概要や企業の知財部への転職理由・志望動機、転職活動のコツをまとめました。
転職理由を整理する際の参考にしてみてください。
【パターン別】企業知財部への志望動機を分析
知財権に関わる仕事は専門性が高く、就職の難易度は決して低くありません。
特に企業の知財部は特許事務所よりも求人数が少なく、難易度が高い傾向にあります。
そんな企業の知財部に転職する人は
- 特許事務所員(弁理士)
- 研究開発職
- その他の未経験者
と様々です。
それぞれどのような理由で転職しているのかを、志望動機例とあわせてご紹介します。
特許事務所員(弁理士)
弁理士資格を持った特許事務所員は、企業においては即戦力として求められています。
特許事務所員が企業の知財部へ転職する理由は、主に3つ。
- 発明の発掘に関われる
- 経営戦略などの知財権以外の仕事に携われる
- 年収が上がる
特許事務所と違い、企業の知財部員は研究開発部門が取得した生データに触れられるため、発明のタネの発見に貢献できます。
また経営やマーケティングといった、幅広い部門の仕事に関われるのも、知財部ならではの特徴です。
企業に就職すれば、特許事務所より高い年収を期待することも可能です。一般的に特許事務所の弁理士は年収1,000万円程度が上限ですが、企業の知財部で管理職となれば年収1,000万円以上を稼げる傾向があります。
【弁理士の志望動機例】
私が貴社の知財部を志望した理由は、△△分野における発明の発掘と密に関われるためです。
私はこれまで、主に□□に関する特許出願業務を行ってきました。明細書作成や企業との打ち合わせを繰り返す中で、発明のタネとなったデータに直接触れたいと感じるようになりました。
貴社が注力している✕✕事業は、私が担当していた出願業務と高い関係性があります。入社後は△△分野の基礎知識を活かし、発明の発掘とその権利化に貢献できると考えています。
また各企業の出願方針に触れてきた経験を活かし、経営戦略などの業務にも携わることを希望します。
研究開発職
実験データを見慣れている研究開発職は、知財部員としても重宝されるでしょう。
研究開発職が知財部に転職を希望する理由は
- 幅広い分野・テーマのデータに触れたい
- 事業・経営に近いポジションで働きたい
- 現場でのデータ取得よりもデータ分析・明細書作成に向いていると感じる
などです。
知財部員は、その企業の事業分野・領域における幅広いデータに触れます。一つのテーマを掘り下げる研究開発職よりも、多くのテーマ・事業に関われるでしょう。
志望動機を作るときも、この点に触れるとよいでしょう。
【研究職の志望動機例】
私が貴社の知財部を志望した理由は、幅広い範囲で〇〇分野の発明に関われるためです。
貴社は〇〇分野において、年間1,000件以上の特許出願を行っており、それらに関する製品を多数販売しています。私の現在の研究テーマである△△は、貴社の製品との関連が深いため、入社後に円滑に業務に着手できると考えています。
また、研究職の業務の中で、特許出願にも携わりました。発明者として行った特許出願は□件です。貴社に入社後は、研究者の目線で実験データから発明のタネを発見し、貴社製品に関する特許出願の促進に貢献することを希望します。
なお研究開発職の人は、別会社への転職ではなく、社内の知財部への異動という選択肢もあります。
転職ではなく異動をするメリットは、研究・製品テーマや事業の詳細を理解した状態で知財部の仕事に着手できること。
研究開発職から知財部への異動、自社から他社への転職の両方を考慮しながらキャリアを検討されるとよいかもしれません。
その他の未経験者
営業職といった、知財権との関係性が薄い職種から企業の知財部へ転職する例もあります。
このような場合、
- 年齢が若い
- 理系出身である
- 語学や資格などのアピールできるスキルがある
などの条件を満たしていると転職に有利です。
ここでは、理系出身の営業職を想定した志望動機例をご紹介します。
【理系出身の営業職の志望動機例】
私が貴社の知財部を志望した理由は、営業職の経験を通し自社技術の保護の重要さを学び、それに関わる専門職に就きたいと考えたためです。
弊社の製品群は、複数の知財権により保護されています。〇〇業界では、知財権に関する訴訟も少なくなく、それらに対応できなければ営業という仕事が続けられないリスクがあることを体感してきました。
現職においては、常にデータを根拠としながらお客様対応をしてきました。各社製品のスペックの違いを数値から分析した経験を活かし、貴社の知財部に就職後は、発明の発掘に貢献したいと考えています。
また語学の勉強を継続しており、英語の文献を読むことに慣れています。競合他社に海外メーカーが多い〇〇業界では、英語力を活かしやすいと考えています。
知財業界が未経験なら、特許事務所で技術者として働くといったキャリアも検討してみましょう。
特許技術者は、専門職でありながら未経験者でもなれる職種の一つです。
特許技術者として勤めながら弁理士資格を取得し、企業に転職される人も少なくありません。長い目で見て、知財業界でどのように働くかを検討してみてはいかがでしょうか。
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イメージを明確にする!知財部の働き方【基礎知識】
現職で身につけた知識・経験をどのように企業の知財部にて活かせるのかは、転職を検討する際のポイントの一つです。
ここでは、知財部の仕事の概要や具体的なやりがい、年収、残業についてご紹介します。
実際に働くイメージを明確にし、志望動機をブラッシュアップできないか検討してみましょう。
もし余裕があれば、飲料メーカーの知財部がメインのドラマ「それってパクリじゃないですか?」も見てみてください。こちらから5分ダイジェスト付の各話解説が読めます。
知財部はいらない?知財部が必要とされる理由
そもそも、知財部は必要なのでしょうか。
一見、管理部門の一つであり、わざわざ知財部として部署を設けなくてもよいというイメージがあるかもしれません。
しかし「知財部は必要である」と断言できます。
知財部が扱う知財権は、企業の保護・経営の促進などのために不可欠です。
知財権を適切に管理できていないと
- 第三者に自身が販売している商品を真似されてしまう
- 第三者の権利を侵害し、自社の商品の販売を停止しなければならなくなる
などのリスクがあります。
これらのリスクを抑える専門職が、企業の知財部員です。
知財部員のやりがいは?
知財部員のやりがいとして大きく2つ挙げられます。
- 常に新しい物事に触れられる
- 研究開発や経営企画など、関われる業務の幅が広い
特許出願の内容は、業界において知られていない技術です。そしてその技術の元になる、各研究開発テーマにおいて取得したデータが、知財部に集まります。
知財権に関する専門知識に加え、各テーマの基礎となる知識を学ぶのは楽ではありませんが、常に最新の技術に触れながら仕事ができるのは、大きな魅力の一つと言えます。
また知財部は、専門的な仕事ながら、研究開発や経営企画など多くの社内の部署と連携します。
自身の仕事が部署・企業・社会に対しどのように貢献しているかを実感できることは、日常的なやりがいになります。
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年収・残業は?
知財部員の年収のイメージは、下表のとおりです。
年次 | 年収 |
---|---|
新卒~5年目 | ~500万円 |
5~10年目 | 500~1,000万円 |
課長職 | 1,000~1,200万円 |
部長職 | 1,200万円~ |
年次が上がるほど、また昇進するほど年収の上がる傾向があります。
残業は企業や担当業務により異なるため、ばらつきが大きいです。
新規事業に着手する際や複数の製品を同時に販売開始する際などは、特許出願・調査の業務量が多くなりますので、残業時間が増えることもあるでしょう。
とはいえ年収や残業は、企業の文化・水準に影響を受けますので、転職前に確認しておくのがおすすめです。
転職市場を攻略するコツは?
知財権に関する仕事は専門性が高いため、転職の際に情報が集めにくいかもしれません。
ここでは、知財権に関わる業界の転職市場の概要、おすすめの情報収集の方法、応募時に身につけていると望ましいスキル・知識をまとめました。
転職市場に関する情報の量と質が、転職の成功率を左右することも少なくありません。
知財業界の転職市場は拡大傾向
弁理士の転職市場は、拡大傾向にあります。
特に、コロナウイルス感染拡大前の2018年までは、およそ4年間で約3倍ほど拡大しました。
感染拡大後、一度転職市場は収縮しましたが、2022年現在、市場は再拡大し感染拡大前に戻りつつあります。
少しでも転職を検討されている人は、市場が拡大しているこのタイミングで、求人を確認してみてもよいかもしれません。
知財専門の転職サイトを活用しよう
知財に関する職種は専門性が高いため、各企業の情報を入手する際は知財専門の転職サイト・転職エージェントの活用をおすすめします。
マイナビ、リクナビといった総合転職サイトより、取り扱っている求人が多いため、効率的に情報を収集可能です。
また知財に特化した転職サイトには、知財部の仕事内容といった業界事情、転職体験談などの転職お役立ち情報も掲載されています。これらの業界情報は、転職の際に大いに役立つでしょう。
求められるスキル・知識を確認しよう
企業の知財部の求人で求められるスキル知識として
- 知財権に関する専門知識
- 語学力
が挙げられます。
専門知識については、弁理士といった資格を保有していると転職に有利です。
語学に関しては、ほとんどの企業で英語力が求められており、主にTOEICが語学力の指標とされています。
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企業の知財部員に求められるスキルとは?レベル別に解説します!
まとめ
企業の知財部で働くには、知的財産権に関する業務のベースとなる知識と、各分野の技術に関する基礎知識の両方が必要です。
常に学び続けなければならない、決して楽ではない仕事ですが、様々なやりがいを感じられます。
本記事が、みなさまが企業の知財部への転職理由・志望動機を検討する際の参考となればうれしいです。
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企業の研究開発部門と知財部門での業務を経験。
知財部門では、主に特許出願・権利化業務を担当してきました。