弁理士試験に独学で合格できる?
弁理士は「理系の弁護士」とも言われるほど、試験の難易度は高いことで知られています。そんな弁理士試験に独学で合格できるか?とチャレンジ精神に溢れる方も少なくないと思います。ここでは、独学での合格の可能性について紹介します。
弁理士試験の難易度はどれくらい?
さて実際のところ、弁理士試験の難易度はどの程度なのでしょうか。データを踏まえて見てみましょう。
合格率
弁理士試験の合格率は例年10%を切っています。特にここ数年は、合格者数を増やさない傾向にあり、難易度はより高まっています。
令和3年度の統計データは次のとおりです(特許庁、工業所有権審議会公表データ)。
- 受験者数:3,248人
- 合格者数:199人
- 合格率:6.1%
平均受験回数
平均受験回数についても特許庁、工業所有権審議会から統計データが出ています。令和3年度のデータによれば、平均受験回数は3.7回となっています。弁理士試験は年に1回なので、合格まで平均して3~4年はかかっている計算になりますね。
独学で弁理士試験に合格できる?
さて本題です。難易度が高い弁理士試験ですが、独学でも合格可能なのでしょうか。
結論から言えば、もちろん決して簡単ではないものの、可能と言えます。
独学合格には何年必要か
弁理士試験合格に必要な勉強時間は3000時間程度と言われています。ただし、これはあくまで平均的な数字です。
独学の場合は、自身で勉強スケジュールやペースを設定する必要があり、効率よく勉強できない可能性が伴います。このため、より長い勉強時間が必要になることでしょう。
1日に2時間程度勉強するとして、3000時間に到達するには約4年かかります。独学の場合、勉強効率のロスなどを考えると、5~6年はかかることも見込まれます。独学するならば、スキマ時間の活用がよりポイントとなります。
反対に予備校に通って講座を受講する場合は、カリキュラムやテキストがよくまとめられており効率良く勉強することができますので、勉強期間を短縮できるかもしれません。
独学に向いている人
弁理士試験は難易度が高いため、予備校の講座などを受講するのが無難ではありますが、独学でも問題無い場合もあります。次のような人は、独学に向いています。
基礎知識がある人
大学などで基本的な法律の知識を学んでいたり、すでに参考書や基本書などで基礎的な学習は終えていたりと、基礎知識がある人は、独学でも問題ないと言えます。
主に民法、民事訴訟法、行政法、行政事件訴訟法、などの理解があれば、特許法を理解することは難しくありません。
特に大学などで上記の科目について履修していれば、前提となる法律知識が備わっているので、特許法も理解しやすいはずです。
そのような人は、独学でも対処できる要素があります。
実務に携わっている人
知財関係の実務に携わっている人も、独学に向いています。
特許法の理解は実務に直結しており、逆に言えば、実務に携わっていれば特許法についての理解も早いです。また分からないところがあれば同僚に確認する、といったことも実務に携わっていればできますね。
弁理士試験へ合格するためには、実務を行っていることが圧倒的に有利です。
とりわけ特許事務所に勤務している場合は、出願から権利化まで、まさに知的財産法の全体像が見えやすいです。
他の難関資格の合格経験がある人
すでに他の難関資格の合格経験がある人は、どうやったら合格できるか、というノウハウを持っていると言えます。合格に向けた押さえどころを分かっているはずです。
例えば勉強スケジュールの立て方、モチベーション維持の方法、効率よく勉強する方法、など、自分に合った勉強法を確立できていることも多いはずですね。弁理士試験についても、同様に自身に合ったやり方で勉強を進めると良いでしょう。
独学に向いていない人
上記では独学でも問題無い人について紹介しました。ここでは、独学は避けたほうが良い人について紹介します。
全くの初学者
特許法の構造や用語は難解です。前提となる知識や学習経験が全くなく、これからゼロベースで勉強をはじめようという場合には、独学はおすすめできません。
予備校の講座の受講を強くおすすめします。
仮に独学で勉強しようとすると、相当の苦労を強いられるでしょう。挫折してしまうかもしれません。
関連実務を行っていない人
実務に携わっていない人についても、独学はおすすめできません。法文集やテキストのみで知的財産法の全体、細部を理解することは決して容易ではありません。
実務に携わってようやく理解が及ぶ部分もあります。
独学するメリット
難しい独学ですが、メリットもありますね。ここでは、メリットについて紹介します。
コストを抑えられる
費用を圧倒的に抑えられるのはやはり一番のメリットです。独学であれば、法文集やテキストのみで、せいぜい数万程度の出費で済みます。
一方、予備校の講座を受講しようとすると、30~50万程度はどうしても必要です。通信講座の場合は若干は低額になりますが、やはり同程度の費用が必要となります。
時間に縛られない
時間に縛られず勉強をすることができる点も、独学するメリットでしょう。
予備校に通う場合、カリキュラムが決まっていますので、特定の時間や期限までに、講義を受講する必要があります。
予備校のようにカリキュラムがきっちりと決まっていることは、場合によってはデメリットになるかもしれないのです。
独学するデメリット
独学には良い面もありつつ、やはりデメリットもあります。
勉強ペースをつかみにくい
いつまでにどの程度勉強したらいいのか、というのは、独学ではなかなか掴めません。ですので、勉強ペースや勉強の進め方が大丈夫かどうか、不安になるでしょう。
そしてそのペースや進め方が正しいか、判断する術がありません。もしかしたら間違った方法かもしれません。間違った方法で勉強を進めても合格は難しいです。
勉強しながら、その方法が正しいかどうか検証する、ということを意識して行うことが大事です。
モチベーション維持が難しい
独学は孤独です。分からない点があっても、周りの人に聞く、ということもできませんから行き詰ってしまいがちです。行き詰ると、モチベーションも下がってしまいます。
独学で合格するためのコツは、いかにモチベーションを維持するか、という点にあるとも言えます。
独学vs予備校。おすすめはどっち?
著者の個人的な見解としてはずばり、予備校の講座をおすすめします。時間もお金と同じくらい貴重なリソースです。合格までの時間を考えると、やはり、実績のある講座の受講が無難です。
予備校の講座であれば、スケジュール、勉強のペース、勉強の範囲、も最適化されています。指導にしたがってひたすら勉強すれば良いだけですので、時間的な負担はもちろん精神的な負荷も圧倒的に小さいでしょう。
また予備校の場合、平日は夜、土日は日中または夜、の講義が中心となり、もちろん働きながらでも通うことが可能です。講義に出席できない場合でも、最近では、WebやDVDにて復習できるようサポートも充実していますので、おすすめです。
まとめ
弁理士試験は難易度の高い試験です。合格までに数年はかかることが見込まれます。
今回の記事の内容も参考に、ぜひ、ご自身に合った勉強法、勉強スタイルで、合格を目指してください。
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エンジニア出身です。某一部上場企業にて半導体製造装置の設計開発業務に数年携わり、その後、特許業界に転職しました。
知財の実務経験は15年以上です。特許、実用新案、意匠、商標、に加えて、不正競争防止法、著作権法、など幅広く携わっています。
諸外国の実務、外国法にも長けています。