弁理士へのキャリアチェンジは難しい?知財業界の仕事事情

弁理士、知財業界へのキャリアチェンジを考えている方も少なくないかもしれません。知財業界へのキャリアチェンジに関して、知財業界20年弱の経験を有する著者の目線で紹介します。

知財業界(弁理士)へのキャリアチェンジ事情

まず実情としては、最初から(例えば、新卒で)知財業界に入る、というケースのほうが少ないです。

つまり別の業界、他の職種から知財業界に入ってくる、というケースのほうがむしろ一般的です。ですから知財業界(弁理士)へのキャリアチェンジはハードルが高いものでは決してありません。

【基本知識】知財業界での仕事内容

まず挙げられるメイン業務は、権利化業務です。

特許、実用新案、意匠、商標を守るために特許庁に申請(出願)を行い、権利として成立させる業務がメインの仕事となります。

これは、特許事務所でも企業の知財部でも同じです。特許事務所と企業の知財部とでは分担する部分が異なるだけで、最終的に権利化を図る、という点では、共通して主業務であると言えます。

権利化業務(出願業務)以外には、以下のような仕事があります。

  • 権利の維持・保護(年金管理など)
  • 権利活用(権利行使、ライセンス契約、など)
  • 係争(無効審判、侵害訴訟、など)

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転職するならいつ?タイミングについて

転職を考えるタイミングは人によって違うもの。

そうはいっても知財業界について全くの未経験の場合、やはり多いのは、30歳半ばくらいまでのようです。

もしも特許事務所や企業の知財部での勤務経験があったうえで転職を考える場合には、40代後半〜50代などの人材も多く見受けられます。

弁理士は専門性も高いことから、40代以降でも求人が見つかり長く働ける職業と言えますが、転職業界では、やはり若いほうが有利であることは間違いありません。

特に、全くの未経験の場合は、採用側としてはその人材の伸びしろ・可能性に投資できるかどうか、に重きを置きます。

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転職で失敗しないコツ

著者は特許事務所に勤務しており、これまでも多くの人材を受け入れてきましたが、数か月~数年で他に移る人もいれば、欠かせない人材に成長していく人もいます。

早々に去っていく人から最も聞くのが、「業務についていけない」「スキル不足を痛感する」といったような理由です。

やはり、どの業界でも楽な仕事というのはありません。弁理士業界も例外ではありません。日々の勉強、自己研鑽を積まなければ、すぐにおいていかれます。

転職して「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、「日々成長するぞ」という意欲や甘えに負けない覚悟などが重要です。

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未経験や弁理士資格なしでも転職できるのか

知財業界では、未経験であっても、弁理士資格がなくても、転職は十分に可能です。経験や資格よりも、例えば「技術が良く分かる」といったほうが強みになります。

弁理士の指揮監督のもと出願書類を作成する「特許技術者」という職種もあります。この職種は資格がなくても就ける職業ですので、特許技術者として働きながら、弁理士資格の取得を目指す道もあります。

特許技術者についてはこちらの記事で詳しく解説中です。求人検索もTOPページからできるので、ぜひ活用してくださいね。

弁理士にキャリアチェンジするメリット

弁理士にキャリアチェンジするメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。

キャリアプランが広がる

弁理士資格は国家資格ですので、登録を抹消しないかぎり生涯活用できます。

そのためキャリアの選択肢も多くなり、より理想的な働き方を目指しやすくなります。

資格があることで、特許事務所や企業の知財部で働くほかに自身で開業する、という選択肢も生まれます。自身で開業すれば定年もありません。

そして様々な選択肢・可能性があるというのは、意外と安心感につながるものです。「いざとなればなんとでもなる」というか。

キャリアプランや選択肢が広がる、というメリットは将来への安心感にも繋がります。

裁量の幅が広がる(自由度が高い)

知財業界、とりわけ特許事務所業界では、自身の裁量で働ける風潮があります。

どういうことかと言いますと、業務量をある程度は自身でコントロールできたり、納期に支障がなければ休暇も気兼ねなく取りやすかったりするようです。

これは実績で評価する特許事務所が多い、という背景事情があるためです。実績をしっかりと上げられるのならば勤務形態に関しては自由度が高くなったりします。在宅勤務、テレワークなどに関しても柔軟である特許事務所は多いようです。

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弁理士にキャリアチェンジするデメリット

次に、弁理士になるデメリットについて解説します。

競争が厳しい

日本だけに目を向ければ、国内における特許出願件数は先細りです。つまり、弁理士1人あたりが担当できる日本国内出願の件数も減少しています。その点では競争は年々厳しくなっていると言えます。

安定して生き残っていくためには相応の戦略が必要でしょう。

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引き際(引退)が難しい

特に自身で開業している場合には、いつ引退するか、というのが非常に悩ましいところです。

例えば特許の権利期間は出願から20年です。このように、権利というのは長年にわたって存在することになります。その間、特許庁に年金を納付するなどの管理が必要になります。

後継者がいれば問題ありませんが、そうでない場合、権利の維持管理を他者に引き継がなければいけません。

このような問題は、実は特許事務所の業界でも大きな問題となっています。

特許事務所勤務の弁理士は、自身の引き際という点で上記のような問題はないかもしれませんが、代表(所長)の交代・引き継ぎ、というのは一般所員にもそれなりに影響があるでしょう。

知財業界の働きやすさは?

さて、知財業界での働きやすさは気になるところです。実際のところを紹介します。

転勤、異動は?

転勤、異動はほぼ無いと言ってよいでしょう。

まず特許事務所の場合、一部の大手特許事務所でない限り、日本各地、世界各地に支店がある、といったことは少ないです。支店がある特許事務所でも、転勤といったことはあまり聞かないです。

次に企業に関してですが、知財部は通常、本部や研究開発部門といった、特定の部門の一角として集約されます。知財部に籍を置くかぎり、転勤はないでしょう。

ただし知財部から研究開発部門への異動、といったケースはよく耳にします。知財部門と研究開発部門とは親和性が良いため、両者の間の異動はそこそこあるようです。

知財HRには開発部門から知財部へ異動した、という人のインタビューもあります。ぜひこちらもチェックしてください。

◆未経験で知財部に異動!開発職出身だから見えた、知財部のアレコレ【転職成功談】

休日、休暇のとりやすさは?

特許事務所の場合は比較的休みをとりやすいと言えます。先に紹介しましたとおり、実績主義で評価する特許事務所が多く、業務については本人の裁量に委ねられる、といった風潮があるからです。

企業の場合は、その企業内の規則や雰囲気によります。裁量という点では特許事務所には劣るかもしれませんが、福利厚生は企業のほうがしっかりしています。

気になる!弁理士の年収

弁理士の平均年収は700万円程度と言われています。

とはいえ知財業界、具体的には特許事務所においては、年収にそこそこ幅があると思います。実績主義の面が強いため、実績をあげる人とそうでない人とでの差は大きくなりやすいのです。

また、弁理士と非弁理士とでも大きく異なります。

著者の個人的な印象では、しっかりと実績を上げることができるのであれば、大手一般企業の同年代の年収は下回らない、という印象です。

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まとめ

知財業界(弁理士)へのキャリアチェンジは決して難しいものではありません。

また、実績主義の風潮があるという点で、チャレンジしがいのある業界とも言えるでしょう。

未経験、未資格者でもキャリアチェンジは可能ですので、ぜひ検討してみては如何でしょうか。

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