特許事務所への転職で失敗・後悔しないためのポイントまとめ

特許事務所への転職は後悔する?やめておいたほうがいい?

特許事務所への転職についてウェブ等で情報収集されている方もおられることでしょう。

調べていると、仕事がきつい、ブラック、後悔した、失敗した、やめておけ、といったネガティブなコメントもあります。

実際どうなの?ということについて、現役の特許事務所勤務の弁理士目線で紹介します。

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知財業界への転職は難しい?

知財業界は、どんな業界?

特許事務所に関して言えば、やや堅苦しい業界かもしれません。行政機関に近いと言えば分かりやすいでしょうか。

特許事務所の業務は、特許法などの法律に沿って知的財産権の権利化を図ることがメインとなります。そして権利化に際しては、行政機関(特許庁)に対して手続きを行います。

なので、どうしても行政機関寄りな雰囲気になってしまうのですね。

業務の内容的に、一般企業やベンチャー企業などとは雰囲気が全く異なる業界と言えるでしょう。

お堅めの業界だが、職場の自由度は高い

そうはいっても、比較的自由度が高かったり、服装などはカジュアルでも問題なかったり、柔らかい雰囲気もあります。

意外かもしれませんが、テレワークも行いやすい職種です。聞いたところでは、出勤するか在宅勤務するか、完全自由の特許事務所もあるようです。

>>特許事務所でテレワークは可能?

仕事はきつい?

ほとんどの業務に関して、法律的に定められた法定期限という締切が伴うため、期限に追われます。その点ではきついと言えます。

それ以外の部分、たとえば仕事の進め方やスケジュール感は個々人の裁量に委ねられ自由度が高い、といったケースも多いようですので、人によってはノーストレスで仕事を進められるでしょう。

ハイレベルの知識・自己研鑽はマスト

弁理士としては、また、特許事務所においてメインの業務を担う者としては、技術等に関する理系分野の知識法律等に関する文系分野の知識、の両方が高いレベルで求められます。

スキルの維持・向上のため、日々の精進は欠かせません。業務時間外でも勉強を怠らない姿勢は重要です。

自己研鑚や自己成長の意識が低い人は、業務についていけなくなり、つらくなるかもしれません。

また、発明者等と議論して発明の本質を追求していくことが求められますので、コミュニケーション能力も必須です。

人間関係は?

特許事務所における人間関係は、一般的にいって、良い意味でドライだと思います。

たいていの特許事務所には職人気質の雰囲気があり、「良い仕事をしたい」という思いの人が多く、人間関係についてはさっぱりしている人が多い傾向にあるようです。

納得いく仕事をするために意見がぶつかることはもちろんありますが、それは建設的な意見交換であって、人間関係のいざこざに発展するようなことはまずありません。

著者自身、現在の特許事務所に転職した初期に意外に感じたこととして、飲み会などで、他人の文句や事務所の文句などを誰からも一切聞かなかったことがあります(転職前の会社では、愚痴・文句ばかり聞かされていました(笑))。

「なんていい業界なんだ!」と思いました。今も思っています。

知財業界は個性的な人が多い

職人気質という点では、個性的な人材が多いとも言えます。自身の固定観念が強く他人の価値観に否定的になりがちな人は、人間関係でトラブルになる可能性もあるため、注意が必要です。

あるあるな後悔&転職で失敗しないためのポイント

特許事務所に転職した人にありがちな後悔は大きく3つあります。

  • 華やかなイメージに反して、日々の業務が地味
  • 下請け的な役割にやる気がダウン
  • 地味で孤独な業務が嫌になった

イメージと違った→広い視野を持とう

「大きな仕事をしたい!」「専門家として活躍したい!」と思って業界に飛び込むものの、全然イメージと違ってた、ということはあるあるです。

知財にまつわる世間のトピック的なニュースに目を向ければ、数千万、数億、数十億、といったような規模での損害賠償額、ライセンス料などが取り沙汰されるような大きな特許紛争のニュースが飛び込んできたりしますね。

一見すると、なにかかっこいい世界のようにも思えます。

しかし特許事務所での日々の業務というのは、実に地味であると言えます。

論文や文献の読み込み、書類作成、対行政機関(特許庁)への手続きといった事務作業、など、です。

日々の目の前の業務に追われていると、いつしか、「こんな地味な作業ばかりなんて、、、こんなはずじゃなかった」なんて思えてくるようです。こんな後悔はしたくないですね。

しかし、忘れてはいけません。素晴らしい発明(権利)、偉大な発明(権利)というのは、日々の精進が積み重なって生まれるものです。

常に、発明が世の中に出たときのことを想像し、広い視野を持てば、日々の地道とも思える業務も、わくわくする業務に変わり、やりがいを持てるでしょう。

下請けは嫌だ→責任感、当事者意識を持とう

特許事務所の業務は、どうしても下請け的な面がぬぐえません。この点でやる気を失ってしまう人も少なからずいるようです。

特許事務所の業務は、発明の創作ではありません。発明発掘のお手伝いはしますが、「発明」を生み出すのは依頼者たる発明者です。そして依頼者の依頼を受けて、権利化のための業務を行います。

この点で「依頼待ち」的な面、「下請け」的な面がどうしてもあると言えます。実際のところはそうなのです。

ただ、知的財産権は事業の生命線です。知的財産権を取得することは、発明を創作することと並んで、あるいはそれ以上に重要なことです。

発明者の立場になって、事業者に立場になって、しっかりと権利化を図っていく、という強い責任感と当事者意識を忘れないことが大事になってきます。

日々の業務が地味・孤独→誇りを持とう

特許事務所の日々の業務は地味です。決して華やかとは言えません。

朝から晩までデスクに向かい、文献の読み込み、書類の作成、、、今日もほとんど誰ともしゃべらなかった、、、そんな日々を過ごして愕然として辞めていった人も少なくありません。

しかしながら、先のとおり、知的財産権は事業の生命線です。

その点では、依頼主とともに事業を維持させている、といっても過言ではありません。

目の前の業務にだけ目を向けるのではなく、自身が担当している企業、その企業の業界、などに広く目を向け、その業界に貢献しているんだ、社会に貢献しているんだ、という誇りを持ちましょう。

特許事務所に勤務するメリット

勤務の自由度が高い

勤務の自由度は高いでしょう。次のような点で、働きやすいという声を聞きます。

  • 勤務時間をシフトできる(フレックスタイム制の採用)
  • 完全週休2日制(土日祝が休み)
  • 定時で帰りやすい
  • 休暇をとりやすい
  • リモートワークができる

もちろん特許事務所によりますが、一般的には自由度は高いようです。

成果主義でモチベーションアップ

実績主義・成果主義で給与を決定する特許事務所は多いというか、むしろこの業界では一般的です。

結果を出した分だけしっかり給与に跳ね返ってくる、というのは、やはりモチベーションアップにつながります。

人間関係に悩まない

先にも触れましたとおり、人間関係については良い意味でドライな人が多い業界です。

かといって他人に興味が無いとか他人を見捨てる、とかいったこともなく、情に厚い人も沢山いる印象です。

人間的に温厚で心が広い人が多いのではないでしょうか。

特許事務所に勤務するデメリット

言ってみれば下請け業務

先のとおり、依頼者からの依頼、指示のもと出願書類の作成に着手しますので、依頼者からの指示は絶対です。

依頼者が大手企業の場合には、料金も大手企業の提示額に合わせざるを得ない、といったこともあります。

この点では、特許事務所は下請けなのです。

資格が無いと立場が弱い

権利化業務は弁理士の独占業務です。弁理士の資格を持たない人は、あくまで弁理士の業務をサポートする、という立場となり、補助業務しかできません。

ですので特許事務所勤務において、弁理士の資格を持っていないと業務の範囲も限られます

より広い範囲の業務を行ってキャリアアップをしていこうとする場合、弁理士の資格がないと制限されてしまいかねません。

知財部必見!?特許に関する資格をまとめて解説!

福利厚生は一般企業のほうが勝る

一部の大手特許事務所を除き、たいていの特許事務所は規模が大きくないです。

福利厚生面の待遇は決して良いとは言えないでしょう。社宅や社内託児をはじめとする福利厚生面でのメリットを得たいならば、一般的な大手企業に転職するほうが断然おすすめです。

知財HRでは特許事務所の求人はもちろん、企業知財部の求人も検索可能。ぜひ活用してください。

まとめ

以上、特許事務所への転職をテーマに、ポイントを紹介しました。後悔しないためには、やはり、時間を惜しまず情報収集を行うことが良いでしょう。

特許事務所といっても、事務所ごとに経営方針も雰囲気も全く異なります。事務所ごとのホームページの情報などがおおいに参考になります。

またブログで情報発信している弁理士も多いため、ブログなどを検索してみましょう。

ただ最終的には、「知財業界で頑張るんだ!」「弁理士として成功するんだ!」といった強い気持ち、覚悟があれば、どのような特許事務所に入っても成功できるのではないでしょうか。

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