【弁理士試験】論文式試験の有効な対策法は?勉強方法を紹介

弁理士試験の論文式試験は、最大の山場であり、最大の関門です。記述式の試験であり、試験官による採点のため、だましが一切ききません。あやふやな理解はすぐに見抜かれます。

ですので、最大のエネルギーをかけて対策する必要があります。

論文式試験はどんな試験?

弁理士試験は短答式試験、論文式試験、口述試験の3つの試験から構成されます。

論文式試験は中間(2番目)に行われ、必須科目と選択科目とがあります。

いつ行われる?

例年、論文試験は7月中に行われることが多いです。令和4年度は、7月上旬に必須科目の試験、7月下旬に選択科目の試験が行われました。

ここで押さえておきたいのが、1番目の短答式試験、最後の口述試験との関係です。

まず短答式試験は例年、5月中~下旬に行われます。世間は5月というとGWですが、受験生にとってGWはおあずけになります(笑)。

短答式試験から論文式試験までは、約1ヶ月超の期間があることになりますが、論文式試験の難易度からすると、準備期間としては短いです。要注意です。

そして最後の口述試験は、通常ですと10月下旬に試験があります。論文式試験から口述試験までの期間は3ヶ月ほどになるため、論文式試験後、口述試験まで集中力を切らさないことが重要です。

3ヶ月という空白期間はとても長いですが、しょうがない事情があります。

論文式試験の採点はコンピュータではなく人である試験官が行ううえ、他の試験官による二重、三重チェックも行われるため、とても時間がかかるのです。

どんな試験か

先に述べましたように、論文式試験は記述タイプの試験です。この点は、選択式のマークシート方式である短答式試験と大きく異なります。

また論文式試験には、工業所有権に関する法令についての知識を問う必須科目と、専門技術や法律に関する知識を問う選択科目(ただし、選択科目には免除制度有り)、2科目があります。

【必須科目】

  • 特許・実用新案に関する法令
  • 意匠に関する法令
  • 商標に関する法令

【選択科目】※いずれか1つを選択

  • 理工I(機械・応用力学)
  • 理工II(数学・物理)
  • 理工III(化学)
  • 理工IV(生物)
  • 理工V(情報)
  • 法律(弁理士の業務に関する法律)

足切りもある?論文式試験の難易度

合格基準・合格点

論文式試験の合格基準(合格点)は、次のとおり定められています。

【必須科目】

標準偏差による調整後の各科目の得点の平均(配点比率を勘案して計算)が、54点を基準として口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、47点未満の得点の科目が一つもないこと。

【選択科目】

科目の得点(素点)が満点の60%以上であること。

合格率

論文式試験の合格率は、おおよそ25%前後で推移しています。

これは言ってみれば、合格率がおおよそ25%程度になるように合格者数がコントロールされているということでもあります。

必須科目に「口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。」という基準が設けられているように、合格ラインは、ある程度調整されて上下します。

つまり、論文試験も相対的な試験と言えますので、対策してもし過ぎることはありません。

選択科目の免除制度

論文式試験の選択科目には、免除制度が用意されています。

以下のいずれかに該当する場合、選択科目の受験が永久に免除されます。

  • 平成20年度以降の論文式筆記試験選択科目に合格した者
  • 修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除資格認定を受けた者
  • 特許庁が指定する他の公的資格を有する者

論文式試験の対策方法【現役弁理士解説】

論文式試験の有効な対策方法について、現役弁理士が解説します。

必須科目の勉強法、対策法

必須科目の範囲は、特許・実用新案法、意匠法、商標法です。短答式試験で勉強した知識が活かせますが、マークシート式の短答式試験に対して論文式試験は記述式です。

自分の言葉で文章化することは意外に難しいものです。キーは、インプットに偏らないでとにかくアウトプットの練習をすることです。アウトプット8~9:インプット1~2、くらいの感覚でも良いくらいです。

アウトプットはエネルギーを使い、なかなか大変な作業です。アウトプットと比較すれば、インプットの作業のほうが楽に感じてしまうので、意識していないと、インプット作業に逃げてしまうんですね。

ですので、意識してアウトプットの時間を確保していくことが、試験攻略の鍵です。

選択科目の勉強法、対策法

選択科目については、その分野の専門書を購入して勉強しましょう。

たいていの方は専門学校、大学、大学院で学んだ専門分野の科目を選択すると思います。ですので、学生時代に用いたテキストや参考書などがとってあればラッキーです。それらをしっかりと勉強(復習)しましょう。

選択科目は、専門知識を問う高度な問題が多い傾向があります。選択科目についても、必須科目と同等のエネルギーを割いて気を引き締めて勉強することが、試験攻略の鍵です。

おすすめのテキスト3冊

具体的におすすめな本を3冊ご紹介します。

注:値段は全て記事公開当時の税込価格情報です。

工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(経済産業省 特許庁)

いわゆる「青本」と呼ばれるものです。おすすめかつ必須の書籍です。

  • 条文ごとに詳細な解説が記載されている
  • 立法趣旨、立法背景、改正の経緯・趣旨も盛り込まれている

青本に解説されるような立法趣旨や立法背景が問われるような問題も少なくありません。

工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕(特許庁)

弁理士試験論文マニュアル(早稲田経営出版)

論文試験対策としては、比較的更新されている本書が参考になります。ただし、このマニュアルのみに頼るのではなく、論文の過去問集とセットで勉強するのが有効です。

弁理士試験 論文マニュアルI 特許法・実用新案法 第3版(Amazon) 価格:3,850円

弁理士試験 論文マニュアルII 意匠法・商標法 第3版(Amazon) 価格:3,740円

弁理士試験 論文式試験 過去問題集(早稲田経営出版)

過去問集です。実際の問題形式のため、より効率的に勉強できます。論文試験対策としては、過去問集を柱として、マニュアル等は必要に応じて参照するのがおすすめの勉強法です。

弁理士試験 論文式試験過去問題集 2023年度(Amazon) 価格:7,150円

番外編:免除制度を活用するかどうかを決める

選択科目試験が免除される資格には以下のものがあり、場合によっては短期間での合格も狙えます。

  • 第一種/第二種電気主任技術者
  • 電気通信主任技術者
  • 情報処理安全確保支援士
  • 情報処理技術者試験
  • 行政書士

これらの資格を取得して選択科目の免除を受けるという選択肢も、一考の価値有りです。

技術系の資格は、技術的な内容を勉強する点で弁理士の業務(特許出願業務)に役立ちますし、行政書士の試験勉強も、民法や行政法などが弁理士業務の実務で大いに役立ちます。

弁理士試験の勉強と並行して資格の勉強を行うことは大変だと思われるかもしれません。しかし選択科目の試験の難易度がそれなりに高く、選択科目が不合格となり足元をすくわれるリスクも、無きにしもあらずです。

まとめ

以上、弁理士試験の論文式試験について、またその有効な対策法について、現役弁理士が解説しました。

論文式試験における「書く」技術、スキル、というのは、弁理士業務でもダイレクトに活きています。弁理士業務のほとんどが文章を書く業務、書類を作成する業務、となるためです。

弁理士に合格して活躍するイメージを持つと、試験のモチベーションもアップしてくるでしょう。

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