弁理士試験の短答試験に合格するためには?

短答試験の概要

弁理士試験では、短答試験、論文試験、口述試験という3つの試験があります。短答試験は例年5月後半、論文試験は必須科目が7月頭、選択科目が7月後半、口述試験は10月後半に行われます。

短答試験は五肢択一のマークシートで行われます。問題数は60問で、試験時間は3時間30分です。

試験科目

短答試験の試験科目は、次のようになっています。

  1. 特許法・実用新案法20問
  2. 意匠法10問
  3. 商標法10問
  4. 条約10問
  5. 著作権法・不正競争防止法10問

なお条約では、パリ条約、PCT、TRIPS協定、マドプロが主に出題されます。

合格の基準

合格基準は、特許庁のホームページにおいて、以下のように掲載されています。

総合得点の満点に対して65%の得点を基準として、論文式筆記試験及び口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、科目別の合格基準を下回る科目が一つもないこと。なお、科目別合格基準は各科目の満点の40%を原則とする。

引用:弁理士試験の案内 | 経済産業省 特許庁

従って、原則として、短答試験に合格するためには、次の1.2の両方を満たす必要があります。

  1. 60問の合計で39点以上得点する。
  2. 特許法・実用新案法では8点以上得点する。さらに意匠法、商標法、条約、著作権法・不正競争防止法でそれぞれ4点以上得点する。

目標とする点数

短答試験の合格基準は原則39点ですが、短答試験を確実に合格するためには、この合格基準プラスαの点数を目標にして試験勉強を行います。

受験機関等では、特許法・実用新案法、意匠法、商標法で8割、条約と著作権・不正競争防止法で6割、合計で44点、ということが言われています。

ここで「特実、意、商の4法で8割」というのは、これらの法域は論文試験と短答試験で重複しているため、論文試験対策にもなるからです。一方で「条、著・不で6割」というのは、これらの法域が論文試験で問われることがほとんどないため、四法よりもウエイトを減らした勉強をするほうが効率的、という事情があるためです。

短答試験の免除

短答試験の免除は、次の者に認められます。

①短答試験合格者

短答試験に合格すると、翌年とその次の年の2年間、短答試験が免除されます。

②工業所有権に関する科目の単位を取得し大学院を終了した方で、工業所有権審議会の認定を受けた方

この認定を受けた方は、大学院の課程を終了した日から2年を経過するまでの短答試験において、著作権・不正競争防止法を除く科目の試験が免除されます。

③特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した方

この③に該当する方は、著作権・不正競争防止法を除く科目の試験が免除されます。

なお、これらの免除を受けるためには、一定の手続きが必要となります。詳細は、特許庁のホームページを参照ください。

短答試験の対策方法 ポイントまとめ  

短答試験の対策ですが

  • 受験勉強の期間が半年未満であるか、1年以上であるか
  • 過去問を実際に解いてみて、30点以上取れるか

という状況によって、スケジュールや勉強内容が変わります。以下に、これらのスケジュールや勉強内容について説明します。

ただし、初めて短答試験を受験する方の場合、独学で対策を講じることは非常に困難です。

弁理士試験では、短答、論文、口述のいずれの試験においても、合格する方の勉強内容はほぼ一緒であり、これらの合格者の勉強内容と異なる勉強(自己流の独学勉強)をすることは、試験に合格するという点では不利になるからです。

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短答試験対策で大切なこと

短答試験対策で大切なことはいくつかあるのですが、筆者の経験では、概ね次のような点が大切であると感じています。

  • 試験で良く聞かれる場所を重点的に勉強する。例えばパリ条約では、ほとんどの問題が1~11条の範囲内で出される。
  • 審判など、一定の時系列に沿って様々な手続きが必要となる制度については、フローチャート等で流れを理解する。
  • 答練や過去問は全問できる必要はない。正答率が50%以上の問題を漏れなく正解することが、合格するためには重要である。
  • 条文の勉強では様々な観点から勉強する必要がある。例えば、立法趣旨や、特実意商での準用・不準用、条文でなぜこの文言が使われているか、などを考えたり、調べたりしながら勉強する。

全体のスケジュール感

勉強のスケジュールは、短答試験を初めて受験する方と、2回目以降の方とで異なります。

短答試験を初めて受験する方は、1月から過去問を解きながら、理解できていないところを勉強する必要があります。

このとき暗記に頼らず、「理解する」ことが重要です。例えば、発明の単一性違反は無効理由でない、という点で間違えた場合には、審査の効率化という立法趣旨をテキストや逐条解説・審査基準などを読んで理解することで、既に審査されたものを無効にするのは適切でない、という結論を導くことが可能になります。

一方で2回目以降の方の場合は、前回の短答試験の出来具合によって短答試験対策のスケジュールが変わります。

前回35~36点であった場合には、3月ぐらいから短答対策をする方が多いです。しかし前回32~33点以下であった場合には、1月から短答対策をする必要があります。

また1回目の受験、2回目以降の受験に関わらず、ゴールデンウィーク前後からは、どうしても理解できない事項を暗記し、5月後半の本番に備える必要があります。

【初めて受験する or 前回の短答試験が32~33点以下の人】

  • 1月~ 過去問に挑戦。理解できていないところを勉強
  • 5月初旬~ どうしても理解できない事項を暗記
  • 5月下旬 本番

【前回の短答試験が35~36点だった人】

  • 3月ごろ~ 短答対策
  • 5月初旬~ どうしても理解できない事項を暗記
  • 5月下旬 本番

勉強開始時

勉強開始時は、過去問を見てもよくわからない、ということが多いと思います。

もしも受験機関の入門講座を受講していれば、入門講座を繰り返し勉強することでより効率的に学習ができます。その一方で、入門講座は受講料が高く、講座によっては30万円以上必要で費用面での負担が大きくなります。

ですがこの段階での独学は、何を勉強すればいいかも分かっていない状態での学習となるため、おすすめはしません。

過去問の使い方

過去問については、10年分くらいを何回か繰り返し解くことがよく行われています。過去問が重要な理由としては、以下のものがあります。

  • 各試験科目の中で、試験に出やすい箇所と出にくい箇所を知れる
  • 問題文の微妙な言い回しに慣れることができる

もし過去問の解説で逐条解説や審査基準、判例を引用している場合には、これらも読んで、理解を深めるようにしましょう。

答練・模試

短答答練は、勉強のペースがつかめないという方に特に有効です。

短答答練の試験範囲は、特許前半、特許後半、条約、など法域が決められているため、この法域に合わせて過去問なども進めていくことにより、ゴールデンウィークを迎える前に短答試験の範囲を一通り終えられます。

また模試では、3時間30分の試験時間に慣れることが重要です。短答試験では、1問3分で解いて60問を3時間で解く、というのが大まかなスケジュールとなりますが、特許法29条の2等のような長文問題では、1問に5分程度かけることもあります。

なお筆者は、前半の30問を1時間30分で解き、10分トイレ休憩し、後半の30問を1時間30分で解く、ということを模試で試し、本番でのペース配分を練習していました。

復習で気を付けること

答練や模試の復習をするとき、間違ったところを全て復習する必要はありません

短答試験は、正答率が50%以上の問題を漏れなく正答することで、合格点にたどり着くことが可能です。そのため答練や模試でも、正答率50%以上の問題を確実に正答する、正答率が25%以下の問題は余裕がある場合に限り復習する、などのメリハリが重要です。

まとめ

短答試験は、勉強方法が確立している試験であるため、この勉強方法を実践することが重要です。そして、過去問や答練、模試を使いこなしながら、必要な勉強時間を確保することで、合格に近づくことができます。皆様が合格できることを期待しています。

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