弁理士登録の方法や費用について
今回は、弁理士として業務を開始するための方法について詳しく紹介します。
弁理士試験に合格しても、すぐに弁理士として活動できるわけではなく、今回説明するように、登録のための申請、また、費用も必要です。
登録してはじめて弁理士になれる
弁理士試験に合格したら晴れて弁理士だ!というのは誤解で、試験合格後、弁理士としての登録申請を行い、かつその申請が認められてはじめて弁理士になれます。
弁理士の登録申請は、日本弁理士会に対して行います(弁理士法第18条)。弁理士試験は特許庁の管轄で行われるのですが、弁理士登録は、特許庁ではなく、日本弁理士会の管轄なのです。
弁理士登録をしないとどうなる?
弁理士登録を行わない場合、当然「弁理士」を名乗ることはできず、弁理士としての業務も行えません。
なお弁理士試験に合格し所定の要件を満たせば、いつでも弁理士として登録できます。つまり登録申請に期限はありません。
実際、弁理士試験に合格しても、弁理士として業務を行う予定がない場合には弁理士の登録申請をあえて行わない、という人も一定数存在します。
弁理士として業務を行う予定がたったときなど、必要なタイミングで登録申請を行えば良いのですね。
試験を受けても、弁理士登録をしない人がいる理由
試験に合格しても弁理士登録をしない人がいる理由としては、月会費の発生を回避したい(弁理士としての業務を行う予定がない)、というのが主な理由です。
弁理士登録を行うと、日本弁理士会に自動的に所属することになります。そして、日本弁理士会に所属すると、月会費が発生します。金額は15,000円で、弁理士としての業務を行うか否かに関わらず、納付義務が発生します。
弁理士としての業務を行うのであれば必要経費と捉えることができますが、弁理士としての業務を行わない場合には、どうしても、無駄な出費とも感じられてしまいますね。
弁理士登録までの流れ
では、弁理士登録までの流れについて見ていきましょう。
弁理士試験に合格する
まず何よりも、弁理士試験に合格する必要があります。弁理士試験については、以下でも詳細に説明していますので、よければ見てみてください。
【弁理士解説!】受験生必見の弁理士試験を攻略するコツ シリーズ一覧
- 目安の勉強時間は?弁理士試験攻略のコツ
- 弁理士試験に独学で合格できる?
- 弁理士試験の難易度は?攻略のポイント
- 弁理士試験対策のおすすめ参考書9選+選び方のコツ
- 弁理士試験の短答試験に合格するためには?
- 【弁理士試験】論文式試験の有効な対策法は?勉強方法を紹介
- 【弁理士解説】弁理士試験の最終関門「口述試験」を突破するポイント
- 弁理士になるための最終関門 実務修習について
弁理士試験の合格率は令和3年度で6.1%と、なかなかに難易度の高い試験となっています。また、最終合格者の平均受験回数は3.7回ということですので、平均で3~4年ほどは勉強している計算になりますね。合格までに必要な勉強時間は約3,000時間と言われています。
実務修習を修了する
晴れて弁理士試験に合格しても、登録申請までにはさらに次のステップがあり、実務修習を修了する必要があります。
これは知的財産に関する専門家としての質を担保するための措置で、平成20(2008)年施行の改正弁理士法により、弁理士登録するための必須条件になりました。
実務修習の期間は約4ヶ月です。費用は無料ではなく、約12万円かかります。
費用が高いと思われるかもしれないですが、実は決してそんなことはありません。著者は一時期、この実務修習の運営委員に携わっていたことがありますが、会場費や講師の費用などを考えると、ぎりぎりのラインです。
もちろん利益は取りませんし、むしろ実務経験が無い人にとって、12万円でひととおりの実務のノウハウが得られるのであれば、安い金額だと言えます。
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弁理士会に登録申請を行う
実務修習を修了したら、ようやく弁理士としての登録申請を行えます。先に記載しましたように、弁理士登録については、日本弁理士会が管理しています。
日本弁理士会に対し、必要書類を提出して、登録申請を行いましょう。
登録申請の方法&費用
弁理士登録をするときは、どんな方法でいくら支払えば良いのでしょうか。
申請書類を用意する
申請に必要な書類は次のとおりです。
- 弁理士登録申請書
- 登録免許税領収証書の原本
- 住民票
- 弁理士となる資格を有することを証する書面(1)※試験の合格証など
- 弁理士となる資格を有することを証する書面(2)※実務修習を修了したことを証する書面
- 勤務証明書(事務所経営者は不要)
- 誓約書
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 履歴書
- 登録後の会費納付方法について
- 銀行振込等の写し(現金で支払う場合は不要)
なかなか多岐に渡りますね。実際の登録申請に際しては、日本弁理士会のHPをよくよく参照して行ってください。
費用について
次に、登録申請に必要な費用について詳しく紹介します。
必要な費用、項目は次のとおり。ざっと11万円程度の費用が必要になります。なお住民票の取得費用など、細かい雑費は除きます。
- 登録免許税 60,000円
- 登録料 35,800円
- 月会費 15,000円
月会費は毎月、日本弁理士会に納付することが求められる費用です。登録時に登録月分を支払い、翌月から選択した納付方法にて納めます。
さきほどの実務修習の費用約12万円と合わせると、最終的には約23万円が必要となる計算ですね。
すでに特許事務所に勤務している場合は、事務所が負担してくれるケースが多いでしょうが、自己負担となると、登録のハードルは高くなってしまいます。
弁理士試験をクリアした人は、試験合格までに予備校や通信講座、問題集や参考書等の書籍、模試など、相当の出費を強いられているはずです。それも考えると、先に高くないとは書いたものの、個人で支払うには、なかなかの費用でしょう。
登録後に必要なこと
登録申請が認められた後も、登録を維持するために必要な事項がありますので、詳しく説明します。
弁理士会費の支払い
まずは毎月の弁理士会費の支払い、月額15,000円です。余談ですが、実は数年前までの会費は20,000円でした。会員の負担を軽減するため、日本弁理士会での経費削減の対策などをとり、5,000円値下げされた経緯があります。
それでも、弁理士登録を行うと毎月納付する義務が発生しますので、特に弁理士としての業務を行う予定がない人にとっては、弁理士業は行わないが会費は必要、ということで負担がのしかかります。
試験に合格しても登録を行わない人が一定数存在するのは、そういった事情もあります。
継続研修の受講
現在、弁理士は継続的に研修を受講することが義務付けられています。
実務修習と同じく、これも知的財産の専門家としての質を担保するための措置です。この義務に違反した場合、重いと除名処分など、厳しい処罰が課されます。
このような対応により、弁理士の高いサービス品質が維持されています。
弁理士の登録抹消、再登録も可能
弁理士登録は、任意で抹消することも可能です。また弁理士登録を抹消しても、再度申請をすれば登録が可能です。
例えば、弁理士業を引退する、といった場合のほか
- 病気療養などで一定期間休む
- 結婚、出産などで一定期間実務を離れる
といったケースでも弁理士登録をいったん抹消する人がいるようです。
なお弁理士の登録番号は申請順に付与されますので、再登録する場合、過去の登録番号は使えず、新たな登録番号が付与されます。
まとめ
以上、弁理士としての登録方法、費用について詳しくみてきました。
さらなる詳細については、日本弁理士会のHPにも詳しく掲載されていますので、適宜ご参照ください。
登録に必要な費用についてはあまり意識されないことも多いようですが、ここで紹介しましたとおり、それなりの費用になりますので、計画的に対応を進めましょう。
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エンジニア出身です。某一部上場企業にて半導体製造装置の設計開発業務に数年携わり、その後、特許業界に転職しました。
知財の実務経験は15年以上です。特許、実用新案、意匠、商標、に加えて、不正競争防止法、著作権法、など幅広く携わっています。
諸外国の実務、外国法にも長けています。