どこに通うべき?弁理士の通信講座について【6校比較】

弁理士試験に合格するために。通信講座の上手な使い方

前提として、弁理士試験に合格するためのポイントは3つあります。

  • 試験でよく聞かれる事項を、漏れなく理解して、解答することができるようにする
  • 暗記が必須の事項については、しっかり暗記する
  • 短答、論文、口述試験とあるが、それぞれの試験において固有のテクニックがある

これらのポイントは、予備校を上手に使うことでカバーでき、効率よく習得することができます。

今回は、予備校を使いたいが通学が難しい、という方でも受講することのできる通信講座の使いかたと、どのような予備校があるかについて、説明します。

インプットの講座について

通信講座におけるインプットの講座としては、概ね次のような講座があります。

  • 初学者を対象とした入門講座
    …特許・実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法について講義。講座の期間は半年~1年のものが多い。
  • 短答試験用の講座
    …扱う法律は入門講座と同じ。ただし内容は、入門講座で扱わなかった、より条文の細かいところに踏み込んだものとなる。期間は一般的に3か月~半年。
  • 論文試験用の講座
    …特許・実用新案法、意匠法、商標法を扱う。論文試験で何を聞かれるか、何を答えるか、を重視した内容になる。講座の期間としては3か月~半年ほど。

もしも弁理士試験を初めて受験する場合には、入門講座だけを受講し、この入門講座を何度も聞くという勉強法をおすすめします。なぜなら初学者は、他の講座を受けるよりも入門講座を繰り返したほうが、より知識を定着させられるからです。

これらの講座を通信で受講する場合ですが、多くの合格者がしていることとして、繰り返し聞く、隙間時間を活用する、高速再生(例えば1.2倍速での再生)、があります。

講座の内容は1回聞いただけでは理解が不十分であり、繰り返し聞くことで理解が深まります。

またスキマ時間の活用は、電車の中や徒歩での移動中に、耳で聞く、という方法があります。なかでも定義、趣旨などの暗記事項はこの方法が有効です。

答練(答案練習)について

まず答練は短答答練、論文答練の2種類があります。

これらの答練を通信で受講する際には、解答のペースを身につけるために、解答時間の計測が必要です。

また論文答練では、自分の解答を添削してもらうことになりますが、添削コメントを参考に復習をすることが重要になります。

模試はなるべく通学で

短答試験・論文試験ともに、試験1か月前くらいになると模試が行われます。この模試は、遠距離であっても、なるべく通学で受講することをおすすめします。

なぜなら当日のためにも、休憩や疲労なども勘案したペース配分を作る必要があるからです。

短答試験は60問を3時間30分で回答するのですが、この3時間30分をどう配分するのか考えなくてはいけません。

ちなみに筆者の場合は、この模試で時間配分をいくつか試し、20問で1時間、長文問題で1問5分、短文問題で1問2分、30問解答したら10分トイレ休憩、という時間配分を作りました。

また論文模試は特許・実用新案2時間、意匠90分、商標90分の1日がかりなので、休憩時間に食べるものを自分の疲労感と調整しながら試す必要があります。

具体的には、特許・実用新案後の昼休みでどれくらい昼ごはんを食べるかと、意匠後の休み時間におやつを食べるか、です。

なお筆者は昼ご飯は腹5分目、おやつはバナナとしていました。

予備校に通えない場合にすべきこと

予備校に通うことができない場合、試験までのスケジュールを組むことが特に重要です。

予備校の講座は試験までのスケジュールに沿って組まれているため、講座を受講することで試験に沿ったスケジュールに対応することが可能です。

もしも予備校に通えない場合には、このスケジュールを自分で組み、参考書を自分で選ぶ必要があります。しかし、このスケジュール決めや、参考書の選択を誤ると、効率のよい試験勉強ができず、合格が難しくなります。

効率の悪い勉強について知る

弁理士試験では、短答、論文、口述のいずれにおいても、試験に問われる可能性の高い箇所と、そうでない箇所があります。そのため弁理士試験では、試験に問われる可能性の高い箇所を重点的に勉強することが重要になります。

なお試験で問われる法律のうち、特許法、実用新案法、意匠法、商標法は、手続きについて多く規定されている法律です。

手続きの勉強は、予備校の出版している書籍を参考書として使うことをおすすめします。大学の先生などが書いた、いわゆる専門書での勉強は効率的ではありません。

他の受験生の知識レベルを知る

弁理士試験で合格するためには、「合格のボーダーライン付近にいる受験生であれば、たいていの方が答えられる」という問題にもれなく答えられることが、重要になります。

逆にいえば、「合格のボーダーライン付近にいる受験生でもあまり答えられないことは、知らなくてよい」のです。

これらの情報は、通学であれば比較的容易に知れるのですが、予備校に通えない場合であっても、以下のようにして情報を入手できます。

【例1】短答試験の場合

  • 過去問や模試で正答率が50%以上の問題→全問、正確に回答することが重要
  • 過去問や模試で正答率が40%以下の問題→捨て問とし、ここに時間をかけない

【例2】論文試験の場合

  • 合格のためには多くの受験生が書いている内容をもれなく書くことが大切
  • 特定の論点を深く書いても、答案全体のバランスや時間配分を崩し、より必要な事項を書き漏らす原因になる

つまり論文試験では、他の受験生が何を書いているか、を知ることが重要になります。 

弁理士の通信講座 おすすめはどこ?【主要6スクール比較】

次に弁理士の通信講座として、主要な予備校の講座を紹介します。なお今回比較対象にするのは「通信講座」のみで、通学するスタイルの講座については比較に含めていません。

※受講期間および費用は、入門講座のものを紹介しています。また情報は記事公開当時のものです。最新の受講期間・費用はリンク先をご確認ください。

LEC

LECは多くの資格試験を扱う予備校であり、弁理士試験における最大手の予備校です。通学、通信いずれの講座も多数用意されています。

入門講座は5人の先生の中から、講師を選択できます。そのため、自分に合う講師を選んで受講することが可能です。また、いずれの講師も筆者が弁理士試験の受験生時代(2008年前後)から講師をされている方であり、経験豊富です。

筆者が受験生時代に受講した感覚では、講師の数と質については、LECが他の予備校よりも優れていると感じています。

また受講方法もスマートフォンやDVDなど多彩で、自分の生活スタイルに合った方法を選択でき便利です。

その一方で、費用面については、他の予備校よりも割高となっています。

講座内容

入門講座としては、約半年間受講する講座と、約1年間受講する講座が用意されています。入門講座では、インプットの講座がメインになりますが、答練とセットになっている講座もあります。

短答試験用の講座としては、約半年受講する講座が用意されています。この講座も、インプットの講座がメインになりますが、答練とセットになっている講座もあります。

論文試験用の講座としては、約半年間受講する講座と、9か月程度受講する講座が用意されています。また、講座としては、インプットと答練をバランスよく受講する講座と、答練中心の講座が用意されています。

受講期間と費用

LECの場合、講座によって受講期間と費用がかなり違います。

講座の種類受講期間金額
入門講座半年/1年20~60万円
短答試験用の講座半年20~30万円
論文試験用の講座半年/9か月30~40万円

弁理士|LEC東京リーガルマインド (lec-jp.com)

TAC

TACも多くの資格試験を扱う予備校であり、弁理士試験において実績のある予備校です。通学、通信いずれの講座も複数用意されています。

TACの通信講座は、いずれも小松先生と斎藤先生が担当します。小松先生は講師歴20年以上、斎藤先生も講師歴10年以上の経験豊富な方です。

スマートフォンでの受講や、DVDでの受講などを選択可能です。

費用については、全体的にLECよりも安めの設定となっています。

講座内容

入門講座としては、約8か月受講する講座と、約1年半受講する講座が用意されています。入門講座では、インプットの講座をメインとして、答練も受講する形式になっています。

短答試験用の講座としては、約9か月受講する講座が用意されています。短答用試験の講座では、最初の半年ほどでインプットを集中的に行い、その後答練を受講する形式になっています。

論文試験用の講座としては、約半年間受講する講座と約9か月受講する講座が用意されています。講座としては、インプットの講座と答練をバランスよく受講する講座と、インプットの講座もするが、答練が多めとなっている講座が用意されています。

受講期間と費用

講座の種類受講期間金額
入門講座8か月/1年半30万円/40万円
短答試験用の講座9か月30~35万円
論文試験用の講座半年/9か月20~35万円

初学者対象コースまとめ | 弁理士|資格の学校TAC[タック] (tac-school.co.jp)

資格スクエア

資格スクエアは複数の資格試験を扱う予備校であり、通信講座に特化した予備校です。

資格スクエアでは答練や模試の数が少ないため、答練や模試を受講する際には、他の予備校を使うことをおすすめします。

講師は林先生と菊池先生の2名です。林先生は、筆者が弁理士試験に合格した後から講師をされていますが、複数の講座を受け持っています。また、菊池先生は、筆者が弁理士試験の受験生時代から講師をされており、経験豊富な講師です。

講座内容

入門講座に相当する講座として、基礎・短答・論文パックが用意されています。こちらのパックは、約1年受講する講座であり、インプット中心の講座となっています。

短答試験用の講座としては、約200時間受講する短答対策パックが用意されています。講座としては、インプット中心の講座となります。

論文試験用の講座としては、約170時間受講する論文対策パックが用意されています。講座としては、インプット中心の講座となります。

受講期間と費用

講座の種類受講期間金額
入門講座1年30万円
短答試験用の講座200時間16万円
論文試験用の講座170時間18万円

資格スクエア弁理士講座 | 資格スクエア (shikaku-square.com)

スタンディング

スタンディングは複数の資格試験を扱う予備校であり、通信講座に特化した予備校です。

最大の特徴は、費用が安いという点です。

ただし答練や模試が用意されていないため、答練や模試を受講する際には、他の予備校を使う必要があります。

スタンディングでは、伊藤先生が講座を担当しています。伊藤先生は、筆者が弁理士試験の受験生時代(2008年ごろ)から講師をされており、経験豊富な講師です。

弁理士講座 – スマホで学べる通信講座で資格を取得 【スタディング】 (studying.jp)

講座内容

入門講座に相当する講座として、弁理士 基礎・短答・論文 総合コースが用意されています。こちらのコースはインプットが中心ですが、論文については答練も行うコースとなっています。

短答試験の講座としては、弁理士 基礎・短答 コースが用意されています。こちらのコースはインプットが中心となっています。

論文試験用の講座としては、弁理士 論文対策コースが用意されています。こちらのコースは、インプットと答練をバランスよく行うコースとなっています。

受講期間と費用

講座の種類金額
入門講座7万円
短答試験用の講座6万円
論文試験用の講座4万円

アガルート

アガルートも複数の資格試験を扱う予備校であり、通信講座に特化した予備校です。

こちらも費用が安い点が特徴として挙げられます。

答練や模試は用意されていないため、答練や模試を受講する際には、他の予備校を使いましょう。

担当する講師は、丸野先生と、石井先生です。両先生ともに筆者が弁理士試験に合格した後に講師をされていることもあり、講師の特徴について把握できておりません。

弁理士試験の通信講座・予備校/専門学校|アガルートアカデミー (agaroot.jp)

講座内容

入門講座に相当する講座として、総合カリキュラムが用意されています。講義時間は約230時間であり、インプット中心の講座になります。

短答試験用の講座としては、短答知識完成講座と、短答過去問解説講座が用意されています。講義時間は、いずれも40~50時間程度です。

論文試験用の講座としては、論文答案の「書き方」と、論文過去問解説講座が用意されています。講義時間は、いずれも20~25時間程度です。

受講期間と費用

講座の種類受講期間金額
入門講座230時間20万円
短答試験用の講座40~50時間4~7万円
論文試験用の講座20~25時間3~6万円

代々木塾

代々木塾は弁理士試験専門の予備校です。通学、通信の両方が用意されています。

弁理士専攻代々木塾【試験対策講座・ゼミの開講(通学・通信)】 (yoyogijuku.jp)

代々木塾の講座は、いずれも堤先生が担当します。堤先生は、長年にわたって弁理士試験の講師をされており、経験豊富な講師です。

費用については、アガルート、スタンディングよりも少し割高となる傾向があります。

 講座内容

入門講座としては、論文短答入門コースが用意されています。講座は約6か月行われますが、インプットと答練をバランスよく行う講座となっています。

短答試験用の講座としては、短答条文解析講座が用意されています。インプット中心の講座であり、講座は約6か月行われます。

論文試験用の講座としては、論文講義基礎講座が用意されています。インプット中心の講座であり、講座は約6か月行われます。

受講期間と費用

講座の種類受講期間金額
入門講座6か月25万円
短答試験用の講座6か月8万円
論文試験用の講座6か月8万円

おすすめの予備校・通信講座はどこ?

筆者としては、これから弁理士試験の受験を始めるという方であれば、通信講座の予備校はLECかTACの受講をおすすめします。

その理由として、マンパワーの関係で、講義で使用するテキストや講座のカリキュラムなどの完成度が高いこと、講師のあたり外れが少ないことが挙げられます。

その一方で、弁理士試験を経験している方であれば、それ以外の予備校についても検討してよいと思います。

【弁理士解説!】受験生必見の弁理士試験を攻略するコツ シリーズ一覧

知財専門の求人サイト「知財HR」

知財業界はいわゆるニッチ業界。そこで転職時に重要になってくるのが「どれだけリアルな情報を集められるか」です。

知財HRではそんなお悩みにこたえるべく、求人票にインタビューを掲載中!(※求人によります)

一歩踏み込んだ仕事内容、職場の雰囲気、求人募集の背景など…。たくさんのリアルな情報を知ったうえで求人へ応募できるんです。求人検索は下のボタンから↓↓↓