弁理士試験:論文試験(選択科目)について解説

弁理士試験の論文試験には、必須科目と選択科目があります。必須科目については受験機関などで十分対策を立てることができるけど、選択科目はどのような対策をすればいいか、よくわからない、という方もいると思います。そこで、今回は論文試験の選択科目について解説します。
選択科目の種類
選択科目は、以下の技術又は法律に関する科目から、選択問題1つを選択します。
| 選択科目 | 選択問題 |
| 理工Ⅰ(機械・応用力学) | 材料力学、流体力学、熱力学、土質工学 |
| 理工Ⅱ(数学・物理) | 基礎物理学、電磁気学、回路理論 |
| 理工Ⅲ(化学) | 物理化学、有機化学、無機化学 |
| 理工Ⅳ(生物) | 生物学一般、生物化学 |
| 理工Ⅴ(情報) | 情報理論、計算機工学 |
| 法律(弁理士の業務に関する法律) | 民法(総則、物権、債権) |
▶特許庁:弁理士試験情報
選択科目の傾向としては、選択試験を受験する方の半数近くが法律を選択している、というデータがあります。
その一方で、特に理工科目では、大学時代の専攻に近い課目を選ぶ方も多いです。
どの選択科目を選ぶかについては、特許庁に過去問が掲載されていますので、参考にするのも有効です。
▶特許庁:過去の試験問題
試験の日時と試験時間
選択科目の試験は、例年7月後半の日曜日(2025年は7月27日(日))に行われます。選択科目の試験は、論文必須科目の試験から3~4週間後に行われます。試験時間は1.5時間です。試験会場は、東京又は大阪になります。
また、受験者数全員に対する選択科目の受験者数は、次のようになっています。
令和7年度 3501人 1924人
令和6年度 3502人 1884人
従って、受験者数の約55%が、選択科目の受験を申請しています。
選択科目の選択時期
選択科目と選択問題は、願書に記載して提出します。そのため、願書の提出後に選択科目や選択問題を変更することはできません。また、選択科目として法律を選択した場合には、法文が貸与されます。
選択科目の勉強スケジュール
選択科目の勉強スケジュールですが、やはり論文必須科目の試験終了後の3~4週間がメインとなります。選択科目に法律を選択した場合には、受験機関の講座もペースメーカーとして使えると思います。その一方で、選択科目に理系科目を選んだ場合には、受験機関の講座がほとんどないため、大学で使用した教科書などを使って各自勉強することがメインとなります。
しかし、この3~4週間では勉強時間が足りない、という方もいると思います。そこで、選択科目を受験する場合には、受験する年の前年度(2025年の弁理士試験を受ける場合には、2024年の後半)に、論文筆記試験や短答試験の勉強と並行して行う、ということも検討してみましょう。
選択科目試験の免除
選択科目試験は、次の条件を満たすことで免除されます。
・選択科目試験の合格
選択科目試験の合格点は60点です。そして、選択科目試験に1回合格すると、翌年以降の選択科目試験は免除されます。
・修士や博士の学位に基づく免除
修士や博士の学位を有する方は、論文式筆記試験選択科目の免除資格を得ることができます。この免除資格の認定は、工業所有権審議会に、成績証明書や指導教授の証明書などを提出し、審査を受ける必要があります。詳細は、特許庁ホームページ内からご確認ください
▶修士・博士等の学位に基づく論文式筆記試験(選択科目)の免除について
・他の公的資格に基づく選択科目免除
他の公的資格を有する方は、願書提出時に必要書類を併せて提出することで、選択科目が免除されます。他の公的資格としては、薬剤師、行政書士の他、情報処理技術者試験の合格があります。この公的資格についても特許庁ホームページ内で確認することができます
▶公的資格による選択科目免除一覧(pdf)
選択科目試験を受験するか?
選択科目試験を受験するか、それとも他の公的資格に基づく選択科目免除を狙うのか、という点については、個々の事情もあるかと思います。ですが、筆者としては、選択科目の中で得意な科目がない場合には、他の公的資格を取得するほうが良いと思います。その理由としては、まず、論文必須科目が合格していても選択科目で合格できなかった場合には、口述試験に進めない、というリスクが挙げられます。
また、公的資格の試験が9月から12月にあるのであれば、短答式試験や論文式必須試験の勉強が本格化する前に、選択科目免除を取得することができるというメリットもあります。
公的資格の取得については、筆者は応用情報技術者の資格をおすすめします。その理由として、例年10月に試験が行われるため、必須科目の追い込み時期からはずれていることと、合格までに必要な勉強時間が200~500時間と言われており、比較的少ない時間で合格することができる、という点が挙げられます。
まとめ
弁理士試験の選択科目は、必須科目の追い込み時期に勉強をすることが困難なため、洗濯科目免除を狙うか、それとも選択試験を受けるか、という点も含めて、悩む点の一つとなります。また、理系科目を選択科目として選択する場合には、同じ選択科目を受験する方が少ないため、試験に関する情報を得ることが難しいという点もあります。そのため、選択科目については、選択免除を受けるかどうか、という点も含めて検討することがよいと思います。
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特許事務所に勤務している弁理士です。中小企業のクライアントを多く扱っています。特許業務が主ですが、意匠・商標も扱います。
